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第224話 違和感


 街に着いてから三日で星の欠片のギルドマスターに挑むことになってしまった。


 あの時に襲って来た白い光魔法を使う男がギルドマスターとは知らなかったんだけど、 まずはその(くだん)の相手に会わないといけない。


 しかしギルドマスターというのは忙しい、そんなに会えるものでも無いはず。ましてや魔王教団、すぐに尻尾を見せる連中じゃないのは分かっている。


 リゼルの時はギルドに居て何か企んでいる感じだったし、スノードロップの街に関しては、ギルドマスタースノードロップの親友が操られてマスターをしていたし……。

 

 ギルドへの潜入を考えてみたんだけど、私たちが花園の冒険者だと分かるとおいだされてしまうだろう。


「ねえ、私は時間ないんだけど?」

「ん、じゃあ……あの聖獣に会いに行こうよ」


 フーリアには2日という制限時間がある。その間に今の新しい剣を使いこなさないといけない。


 そのための強敵との戦いになるはずだったんだけど、この話を持ち掛けたアリス達でさえも詳しい居場所を知らないみたい。

 

 アリスは珍しく自信が無いような表情で応える。

 

「アポカリプスをこの街で見かけたのですが……」

「ちなみに最後に見たのは?」

「私たちがこの街へ来てすぐの頃、妙な赤い女性と話しているのを見ましたよ」

「いつよそれ」

「あなた方がリゼルを倒した後?」

「結構前ね」


 それだと当てにならないので仕方なく、あの聖獣の元へ向かう。

 

 一度行った闘技場の地下、そこへ入るためには王家の人が必要みたいなんだけど、多分なくても行ける。あの転移魔法は闘技場から地下への瞬間移動。

 

 大地の魔力を使った技術で他にあまり見ないから驚いたけど、その魔力を感知できる私なら何とかなる。

 

 私はそれ意外にあの転送魔法陣を知っている気がする。使ったことの無い魔法、知らないものなのになんだか見た事があるような気がしてならない。


 ただおそらく私ならあの道を通れる。


 一応元星の欠片であるアリスたちは置いて、二人で闘技場の地下へ入る。

 

 闘技場は常に開いていて、中で見世物をしている。


 一般人でも気軽に出入りができるけど、入り口でお金を取られてしまう。

 

 お金を払って闘技場に入るとそこら中から大地の魔法の気配を感じる。


 それをうまく使って、あの時のように移動した。


 再び戻ってくるとそこに居た聖獣は驚く素振りも見せず、私の方を見つめる。そしてその横に居るフーリアの持つ剣へ視線を移動させる。

 

 自分の牙だからこそすぐに気づいたみたい、これが神秘剣だと……。


「本当にホワイト家だったか……」

「これでこの剣は頂けるんですよね?」

「あぁ……だが、どうやら使いこなせていないみたいだな?」


 私がここへ来た理由は聖獣なら何か星の欠片について知っているかもしれないということ、そして一番はこの剣をどうやって使いこなすのか。

 

 あわよくばそれだけでも聞くことできれば……いちいちギルドマスターと戦わなくて済むんだけど……。どうやら聖獣はあまり乗り気ではない様に見える。


 もしかしたら知らないのかも……?


「ねえこの剣をもう少し使いこなせる方法は無い?それかアポカリプスの場所とか」

「……知りませぬ」


 なんだか少し考えてからそう応えたみたいだけど……。

 

 いやそれよりもこの聖獣、なんだか前と少し雰囲気が違う……?なんというか――

 

「あれ?話し方、変わった?」

「もはや信じないわけにはいきません……あなたは私が待ち望んでいた方。そしてその隣に居るのはホワイト家。再び会えたことを光栄に思います」


 偉そうな聖獣だと思っていたんだけど、突然従順というか……人が変わったような態度に変化する。だけど肝心の話についてはあまり知らないみたい。


 なんでもこの地下に閉じ込められていて外へ出る機会が無いまま数百年の時を過ごしているとか。

 

 そのせいで地上の様子を知らないからあまり情報を持ち合わせていない。

 さらにこの新たな神秘剣についても――


「そんな剣は見た事がない。が、確かに私の牙からできたものだろう。それ以外は何も分かりません」


 ここまで来て収穫無し……。そう思っていた時だった。

 聖獣は何かを思い出したかのように応える。

 

「……いや、やはりこれは伝えておこう。お主達の探しているギルドマスターのことだ」

「アポカリプス?」

「そうそのアポカリプス殿……彼女はまだ生きているのですか?」

「え……アポカリプスを知っているの?」


 やっぱり何か知っていたみたい……だけどどうして少しだけ隠そうとしていたのだろう。

 

 いや教えてくれるのならいい、それより気がかりなのが、彼女と言っている点とまだ生きているのですか?という言葉の真意だろう。


「彼女は立派な白魔導士だった。ルーク……とも仲が良かった」

「私……じゃなくて、貴方が居た時代のルークだよね?」

「おそらく……しかし、私の知る彼もあなたも似たような気配を感じる」


 そういう世界の摂理が働いているんだろう。

 

 私には直近の前世の記憶があるんだ。生まれ変わりという線は少ない。


「それでそのアポカリプスってどんな子?」

「ええ、それはもう元気でよく太陽の下を走り回っているので褐色肌の活発な女の子でしたよ」

「私の知るアポカリプスは陰気で白い肌の男性でしたよ?」

「……それは別人なのでは?」


 同じ名前を与えられた可能性はあるか。

 

 星の欠片の人達の名前はコードネームみたいなものだと言っていたし。

 

 アリスも結局、アクアドルという名前じゃないけど魔王教団としての仮の名前を名乗っていた。


「分かったわ。教えてくれてありがとう」

「いえ、主のお役に立てるのであれば……後……」

「どうしたの?」

「私は諸事情でこの場を離れられません。なのでフーリア様」


 聖獣はそう言うとフーリアに近づいた。

 

 フーリアはおもむろに聖獣に剣を差し出すと聖獣の身体から大地の魔力が注がれる。

 

 本来剣と魔法は相性が悪いんだけど……。


「これで少しは扱えるようになるかと」

「え……強くなる方法あるじゃない」

「こういうのはあまり教えるべきではありません。しかしアポカリプス殿……と戦うのであれば……仕方ありませんから」

「ありがとう……。あなたはどうしてここを離れられないの?」

「ハーベスト帝国、初代皇帝ルーク=ダリア=ダンディライオン様の願いなので」

「……その名前は聞き飽きたからいいわ。それじゃあありがと……えっと」

「私の名前は……名乗るべきですね」

「当たり前よ」


 なんだろう。名乗りたくなり理由でもあるのだろうか?

 

 すると聖獣は少し恥ずかしそうにしながら応える。


「び、白虎一ノ型サンライザー……です。サンと読んで頂けると助かります」


 あら、他の聖獣とは違ってかっこい――

 

「なんだか聞いたことのあるダサいネーミングセンスね」

「……え?」

 

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