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第223話 アポカリプス


 白魔導士……?


 どこかで聞いたような。いや、会ったような?


 記憶を辿るとある人物が脳裏を過る。

 

 初めて皆で完璧なコンビネーションを披露できて、星の欠片の人達を倒した後、彼らに協力するように現れた白い光の魔法を使う魔王教団の男。

 

 肌が白くて細みで印象は薄いけどとにかく使う魔法が奇怪なものだったのを覚えている。

 

 私が記憶を辿ってその姿を脳裏に浮かべていると――その表情を読み取ったのかアリスは言葉を待つ前に先回りする。

 

「あら?会ったことがあるんですね」

「そ、そうね。相当強かったことは覚えているわ」


 私よりも先にフーリアが応える。

 

 前の事と言っても夏休みの頃だし、半年前だからね。

 

 フーリアは興味が無いと無理やり忘れている可能性を考えたけどその心配は無いみたい。

 

「でしょうね。彼は私達を遥かに凌ぐ魔王教団の男で名前は確かアポカリプス」


 アポカリプス……光の質量を変える魔法でエキナと対等に割り合った。

 

 S級剣士の冒険者エキナとの戦いで一歩も引かない勝負を見せてつけ、私達の介入が無ければ危い戦いになる……それ程の相手。

 

 そう考えるとなるべく相手にしたくない。


「私達は彼を探しているんです」

「どうしてまた……?」

「彼から聞かなくてはいけない事が出来たので」


 何が聞きたいの分からないけどこれは容易に協力できない。

 

 アリスは困った様子を見せることなく、その理由を話してくれる。


「私達は魔王教団の怪しいお薬を少々服用しておりまして」

「え……?」

「勘違いしないでください。他の人格如きに乗っ取られるほど私達は弱くありません」

「それじゃあ……」

「ですが、邪魔なのは確かでして……眠るときなどによく声が聞こえるんです。俺と変われとそんな声が」


 アリスは声色はいつも通り落ち着いていて何の変化も見られないが、その表情は少し曇っているように見える。どうやら予想以上に参っている様子。

 

 2人は星の名前を貰っていたからまさかとは思っていたけれど……。薬を少しだけ服用していたのね。

 

 だけどその量が少なかったのかまだ身体を乗っ取られていないみたい。


「ですがいずれ……。今の状態は徐々に持たないでしょう」

「それで私達にどうしろと?」

「手伝っていただきたいのは白魔導士を探す事と出来れば倒したいんです」

「それ、私達にメリットはないでしょ?」

「そうですね……今の私達に何か提供できるものもありません」


 それなら助ける必要はない……だけど、この子達を見捨てて普通に過ごすことが私にできるだろうか?

 

 彼女達は悪い人じゃない……それはあの戦いで解っていた。


 敵対し妨害する意思はあったみたいだけど、本気で殺すつもりならギルドの証を取り上げる時に背後から襲えばいい。


 それをしなかったのはそこまでするつもりが無かったのか、星の欠片として彼女達もまた生きるために戦ったのか。


 打算的に考えれば助けるべきじゃない……けれど、リゼルの事で罪悪感もある。

 

 ただ1つ気に入らない事があるとすれば、アリスはどこか少し諦めたような物言いと表情をしている。


 助けを求めているのにそれを容認されないと確信しているみたい。

 

 彼女もまた打算的な考えを持つ少女。

 

 年上と言っても17歳……もう少しくらいは打算なんて考えずに甘えても良い歳じゃないだろうか?

 

 こういう考えは20年以上生きた大人や私の様に過去の記憶を持つ私くらいでいい。

 

 それなら私の答えは決まっている。

 

「もしそれを見つけて倒したとして」

「……はい?」

「あなた達は今後どうするの?」

「今後……?そうですね。あなた方と協力関係を結ぶことはできますが……あまり戦いには参加したくありませんというのが本音です」

「そう……」


 私があからさまに残念な声を出すとやはり……と言わんばかりにアリスは諦める。

 

「ダメでしたら別に――」

「別にダメとは言ってない」

「え?」


 アリスは驚いたような間の抜けた声を発する。

 

 想定していなかった解答に驚いているんだろう。そしてそれは意外にもフーリアも同じだった。

 

 私のその言葉に驚きもせず頷く、もしかしたらフーリアにも何か考えがあるのかもしれない。

 

「あなた方が協力する理由は?」


 協力してほしいと持ち掛けておきながらどうしてそんなことを聞かれるのか……。

 

 アリスのその問いに私はあえてフーリアに向けて応える。

 

「ん~色々あるよ?あの白魔導士凄く強かったよね?」

「ええ、アリスが言うように幹部クラスであればネプチューン達と同じという事よね?」

「それくらいの相手じゃないとその剣は成長しないんじゃないかな」


 魔物を圧倒する完璧な剣とフーリアの剣術が合わさって前とは比べ物にならない程強くなっていた。

 

 おそらくだけど、ルミナの力が無い私よりも強い。スイレンの超火力であるユウリには瞬間火力は劣るものの、持久力が違う。

 

 普通に純粋な人としてスイレンのチームで一番強い。


 それにアリス達も協力するんだから白魔導士を相手にどこまで戦えるのかを知っておきたいし、彼女はあまり戦いに積極的じゃないんだけど、これは貸しになる。

 

 いずれ手を借りる日が来るかもしれない。


 そして一番の理由が今までの魔王教団の動向から聖獣を狙っているのは確か。

 

 この街の地下に居る聖獣を見つけたら何をしでかす分からない。その前に私達が倒す!!


 せっかく時間を貰ったんだから有効活用しないと……いつまでも魔王教団の幹部から逃げてちゃダメだ。


「ルークがそう決めたのならいいけど、この剣も多分戦いたいんだと思うし」

「そうなんだ……?」

「うん、ずっと力をくれてるんだよね」

「じゃあ好都合ってわけ?」

「そうね……だからやる!!」


 フーリアはいつでもやる気は充分だ。


 それに私はあの白魔導士を相手に今のショナとユウリでは敵わないと考えている。

 

 今、急成長中のフーリアとこのルミナの力を使えている私が早めに手を打つ。せめて修行が終わるまでは……。


 ちょっと気が引ける所はあるんだけど、こっちの方がいざという時はフーリアだけ守れる。


 私は打算で行動する。きっとアリス達が危険な状況に陥ってもおそらく――助けない。

 

 自分でも冷酷な判断を下す、そんな事を考えているとは思っていないアリスにその白魔導士がどこに居るのか問う。


「居場所?というかあの人は星の欠片の本部のギルドマスターよ」


「「えっ……」」


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