第221話 意外な再会
フーリアが剣を扱えるようになるために私達2人でギルドの依頼を受ける事になった。
一日という時間を剣との契約に使ってしまったので残り2日で新しい剣を使いこなさなくてはいけないらしい。
そんなすぐに剣を使いこなすことができるのだろうか。
剣術だっていつも使っていたアーティファクトや魔剣とは違って、刀になっているから少し型を変えなくちゃいけなくなる。
しかも未だ判明していない剣に宿る力を引き出さないといけなくて、それが結構大変なんだよね。
私も幼いながらに炎帝剣を手に入れた時は最初からあの破壊の炎を扱えた訳じゃない、確かダインスレイブの修行を本格的に習ったくらいに炎帝剣の力を引き出せた。
それからは全然使いこなせずに体だけが大きくなってしまい、剣術の進歩は10歳位で止まっている。
なんだかそれを考えると自分の才能のなさに悲しくなるけどダインスレイブに教えてもらってからできるようになったということは教えは大事だ。
そう、剣をすぐに使いこなすにはそれなりに才能が居る。
だから軽い依頼を受けながら徐々にならして行こうと考えて受けた依頼は北の雪山から下りてきたという魔物を討伐するというもの。
リリィータートルの魔力の影響で魔物が下りてきていたというのは本当みたいね。
もう居ないけれど、リリィータートルの大自然の魔力はまだ少し残っているみたいだから。
神様の使いの力は末恐ろしいが、それだけ無いと悪い女神を倒せないということ。
このルーク=バレンタインという女の子の人生は悪くない。
ナルシストというわけじゃないけど、結構可愛いし、でもそれは女神様が前世の私の理想の女の子を再現したわけだし、こうなるのは必然だよ!!
しかしその女神の復活を防ぐのが私の役目で、その力の一部はこうして人里を混乱に陥れている。
リリィータートルの魔力は魔力を食べて育つ魔物の絶好の好物だからね。そのせいでほんの少しだけど魔物が出現している。
そして私たちはそんな魔物を倒す依頼を受けたわけなんだけど……。
フーリアは新たな剣を完全に使いこなしていた。
既に風の力を使って魔物を圧倒している……神秘剣の性能は斬った所に風の残滓を残して自由自在に操ることができる。
分かりやすく説明すると斬った所に神秘剣と同じ切れ味の風を刃の形通りにその場に残す。そしてそれに触れると斬れるという仕組み。
しかも切れ味は抜群で魔物がグロい肉の塊に……。
というかーー
「え、私必要ないんだけど……」
ついついそんな言葉を漏らす。実際フーリアだけで十分全ての魔物を倒している。
突っ立っている私を格好の餌さと判断した魔物は一直線に向かってきては、フーリアの残した風の刃で真っ二つ。しかも風によって血すらこちらには届かない徹底ぶり。
私の服に血を付けても別に文句は言わないのに、汚れるのを気にしてくれているのだろうか。もしかしてちょっとずつだけど、心を開いてくれているのかな。あるいはこれだけ余裕があると自慢したいだけか。
しかし、フーリアは10体目の魔物を斬ると息を切らしていた。
持久戦は苦手かもしれないけど、私の魔法のようなトドメを差すための高火力を持っている。
私じゃ扱えない程にトリッキーな性能しているけどね。
それを普通に操ってさらにまだ手に入れて間もないのにここまで使いこなしているあたり、天才じゃないかな。
剣士の私より普通に強いんじゃ……。
魔法が絡まずルミナの力が無ければ勝ち目はないかもしれない。
「いいえ、この程度で操れているとは言えないわ」
「ホントに?私からしてみたらすっごく強いけど……」
「ふん、ルークは剣術カスだから分かってない。これじゃあ全然ダメなんだから」
「そう……まあ知ってたけど、具体的に何がダメなの?」
「まず力を引き出せていない……もっとうまく使う方法もあるだろうし、その先だって……。それに剣術と合わせた風の刃を使いこなしてこそ!」
「あれじゃダメなんだ……?」
「ルークの使う炎帝剣と同じでただただ剣を振って、力に頼ってるだけだからね」
「……」
「あなたの剣術は素人に毛が生えたくらいはあるのに、剣の力を使うと炎しか使わないじゃない」
もしかして既にフーリアは新しい剣を私と同じ位使いこなしてる……?なんだか本当に自分には剣の才能がないんだなと改めて考えさせられた。
悔しいけどダインスレイブから習った剣術を合わせた戦い方をできる自信がない。
よし、もう私は魔導士でいよう!
「ルークはもう少しちゃんと使えれば本当に敵無しになると思うんだけど」
「使いたいけど、才能ないって言われ続けてると自信なくすからね?」
魔物を相手にしながらそんな話をしている余裕があるから依頼はすぐに終わる。
魔物をあらかた殲滅し終えるとダリアへ戻るために準備をする。
といっても倒した魔物の回収なんだけどね。このまま安全に帰れる……と思っていたら少し離れた所から魔力を感じる。
それは私たちの方へ向かってきている!!!!!
咄嗟に炎の魔法で襲ってくる魔力を退けようとしたら、その向かってきている魔法が水の魔法だということに気づく。
相性が悪いけれど、今の私なら火力を上げて受け止め切れるはず!!
そこまで魔法を使う時間が長くなかったのと向こうの威力がそこまで強くなかったので炎と水は同時に収まる。
すると炎の魔法と水の魔法がぶつかっていた境界線から黒い物体がドサッと落ちてくる。
水を使って何かを飛ばしてきたのかと思ったんだけど、それは魔物の死骸だった。
先程の魔法の威力は凄まじいものだったんだけど、すぐに威力は衰えて消えてしまう。まるで私たちを狙った訳では無いみたいな。
「あら、申し訳ございません。依頼で魔物を討伐していたのですが、謝って力を入れすぎてしまいーーあ」
「そういうことですか。殺気を感じなかったので何かとーーあ」
ほぼ同時に目が合い、同時に間抜けな声を出す。
それもそのはず、私たちの前の立っていたのは一度争った相手。
あまりいい思い出のないジャスミンの街での騒動、その時に逃がしてしまったアクアドルとカプリコーンだった!!
 




