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第217話 二つ目の神秘剣を求めて


 聖獣の牙からできる神秘剣はそれを使いこなすには何故かフーリアのホワイトの血が必要ということらしいが、これで剣を作って扱えなかったら何か罰を受ける。

 

 なんだか最近こういうのばかりだけれど、フーリアならきっと大丈夫だろう。


 そのフーリアは自分よりも十倍以上大きなライオンの聖獣に物怖じせず問いかける。

 

「それで、剣はどうやって作るの?まさかその可愛い肉球でコネコネするの?」

「我をバカにするとはさすがだが、まずは……」


 聖獣は顔を突き出して、私の方へ寄せる。

 

 頬を突き出して口を大きく開ける……うっ……息が凄い臭い!!

 

 嫌がらせか何かと疑っているとその臭い口を大きく開いて残った最後の牙の1つを突き出す。

 臭い口だけど、その牙だけはとてつもなく綺麗だった。

 

「この牙をお前が抜け」


 ニヤリと口角を上げることで牙を見せつけてくる。

 

 こんなの剣を加工して剣に打ち直すとして、そんな技術を持った人がいるのだろうか……。

 

 ただ見ただけで頑丈なのがわかる。これを加工して剣を作ることができるのなら、確かに聖剣クラスのモノが誕生するかもしれない。


 そんなチャンスにフーリアなら遠慮せずその牙を引っこ抜くはず。

 しかし珍しく躊躇っている。

 

「どうした?抜いてみろ」

「いや、口が臭くて……触りたくない……」

「……」


 サンはその言葉を聞いて酷く落ち込んだ表情を浮かべる。

 

 フーリアは若い女の子だから、そんな子に口が臭いと言われてショックを受けない人は居ないだろう。

 聖獣だけど感情はある。

 

「あー、悪いわね」


 サンは少しだけ固まった後、私達から離れる。匂いを嗅がれたくないから離れたのかな。

 

 気にしていないような雰囲気を醸し出しているんだけど、多分相当傷付いているよね。無意識に近づけたはずの口を離したわけだし……。


「ふっ、まあいい。所詮まだ3匹の聖獣しか取り込んでいないわけだからな。どうせ今のお主では無理だろう」

「……はぁ。じゃあその牙を普通にくれません?口を近づかせてほしくないので」

「……」


 ドスンッ――!!

 

 聖獣は最後の牙を落とした。牙が落ちる瞬間、何とも言えない空気が地下神殿に漂う……私のせいじゃないよね。

 

 少し言葉に気を付けるべきだったのかもしれないけれど……。

 

 普通に取れるならそうして欲しかったんだけど、いちいちこんなことをしたのには何か意味があるのかな。

 その疑問に聖獣は素直に応えた。

 

「お前の力を試したかっただけだ」

「えぇ……」

「老人の遊びにくらいは乗ってくれても良いだろう?」


 くだらない理由だった……老人ってこの聖獣は一体何歳だろう。

 サイズは今までの聖獣よりも大きい。


 そんな巨大な聖獣は落とした自分の牙を大きな肉球でつつきながらフーリアを見つめる。

 

「それをホワイトの者に持たせよ」

「え?」

「それで、おそらく契約が始まるはずだ」


 この牙をフーリアに触らせる?

 

 まだ先程の臭いと唾液がこびり付いていて正直気持ちが悪い……こんなの触りたくもない。フーリアならきっとそう言う。

 

 そう思っていたんだけど、フーリアは目の前にあるチャンスを逃すような子じゃないか。


「……分かった。契約するわ」

「ふむ、触ってみるといい」


 フーリアは牙に近づくにつれて顔を歪めているが何とか触れる事が出来た。

 

 すると牙とフーリアが眩い光を放つ――これは……!!

 

 ――


 フーリアが剣と契約しているまさにその瞬間、彼女の生まれたホワイトの街は魔王教団によって完全に占拠されていました。

 

 第一王子が問題を解決したとルーク達に伝えていましたが、いったいどういうことでしょうか。

 

 そんなホワイトの街を占拠した魔王教団の1人がとても美しい女神のような透き通った剣を見つめていました。

 麗しそうに懐かしむような瞳で見つめていると急に明後日の方向を向きます。

 

「ん?」


 何かが出現した……あるいは知っている存在が現れた。そんな異様な気配を感じていました。

 

「どうしましたかフロストさん?」

「神秘剣が震えている」

「神秘剣が?何かあったんですか?」


 突然妙なことを言い出したフロストにある青年が疑問を投げかけます。

 真っ暗な地下(・・)の中、見えない空を見上げるように青年はフロストの顔と剣を交互に見やる。

 

 剣には精霊が宿る。その青年は神秘剣に宿るのがその上位の神霊だと知っていました。


 だからこそその神秘剣が震えたと聞いて驚いています。


「何かが起ろうとしている」

「そうか、だが。何が起ころうとも私たちの歩みを止められるものはない」

「ええ……あなたまた一人称が私になってるわよ」

「おっと、混ざりすぎてもうどっちが本当の僕なのか分からないんだよね」


 フロストと青年がそんな会話をしていると――ガランガランッ――耳を塞ぎたくなるほど、大きな鐘の音が響き渡ります。

 

 フロストはその音を聞いて立ち上がり、神秘剣の震えを力づくで抑え込み鞘へ納めた。


 青年はただ座ったまま。


「来ないの?」

「感傷に浸っているんだ」

「どうしたの急に?」

「これからルエリアを手に入れられると思うと、あの時、この国に冤罪で捕まった時のことを思い出してね」

「……今のあんたはどっち?」

「強いているならダイン。だけどもう私たちは完全に混ざり合った完璧な生命体へ成った」

「完璧?」

「元々この世界の住人は魔法も剣も制限なく扱えていただろう?今の私にはそれができる」


 その制限ができる前の時代、人は今の魔導騎士(エーテルナイト)のような存在だった。


 魔導騎士(エーテルナイト)のように魔法も剣も扱えるのが普通でした。

 

 魔の女神が邪神に落ちる前は……。


 制約を破り女神の干渉しやすい魔法の世界へ1人の青年の魂を呼んだ。そして愚かな女神は剣の女神と喧嘩を繰り広げ、魔法と剣はわかたれてしまいました。

 

「それらを扱える魔導騎士(エーテルナイト)は異世界人だから、使えたがこの世界の元々の住人で使える私の方が強い」


 元々魔法や剣の世界に住む住人はその2つが無い世界から来たものより潜在的な能力を持ち合わせている。

 

 ダインスレイブは長い実験と研究によってようやくその力を手に入れた。


「さぁ迎えに行こう。愚かな女神様を!!」


 ダインスレイブはそう呟いて、地上に居る協力者の元へ向かうのだった。


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