第214話 帝国の秘密
まさかまさかの待ちに待ったシチュエーション!!
ついにフーリアが私を求めて抱き着いてきた!!……ってテンションでもないんだよね。
再会を喜んでとか、嬉しすぎてとかそんなポジティブな理由なら凄く嬉しんだけど、むしろ彼女にとって辛い理由で泣いていたんだろう。
ここで喜ぶのはダメだよね。
とりあえず落ち着かせるためにギルドの食事スペースで飲み物を頼んだ。暖かいココアと私の尻尾を触らせる事で少しは落ち着いたみたい。
「ふぅ」
「それで、どうしたの?」
「うっ……実は」
落ち着いた所へ事情を聞こうとしたら、また思い出して少し涙目になっているけど、何とか話してくれた。
フーリアから伝えたれたのは魔剣アスタロトとの正式な契約をしていないという理由で一人だけ修行を受けられないかららしい。
まさかそんな理由で断られることがあるなんて想定していなかった。
どうにかしてあげたいけれど剣との契約は本人じゃないとどうにもできないし、確かフーリアが魔剣アスタロトを使える理由はルミナのなんらからの力のおかげ。
それが何なのか未だに解明できていないので解決策も見えてこない。
それならーー
「またルミナの力を使ってみる?出来るか分からないけど、フーリアのためなら頑張るよっ!」
「ダメ!それじゃあ結局ちゃんとした契約できないし」
「それはそうだけど、契約は難しいと思うよ。だってホワイト家は特殊な家系だから扱えるのは宝剣のみでしょ」
「だから悩んでいたんじゃない!!」
突然の響き渡るフーリアの怒号に一瞬ギルドが静まり返る。
しかし私達2人のゴタゴタだと判断したのか、すぐにその賑やかさを取り戻していく。
もう少し気を使って発言するべきだった……。
「……ごめんなさい」
「ルークは私とは違って優秀すぎるから後回しにされたんでしょ!!私の気持ちなんてわかんないよ」
「うぅ……そ、それでも何かいい方法が無いか一緒に探そ?」
そう問いかけたんだけど、フーリアは黙ったまま、もしかして断られるのだろうか?
そんなに私と一緒に探すのは嫌なのかと悲しい気持ちになる。
すると私たちの話し合いの時間に割って入ってくる邪魔者が現れる。
「なかなか複雑な話をしているみたいだね?」
「げっ!どうしてあんた……殿下がここに……」
「レインでいいよ。それに凄い大声だったよ?」
「くっ」
「そんなこと言わないでよ。君の大切な人を連れてきたのは私だから」
なんでフーリアが悔しそうなのかわかんないけど、まさかこの状態から何かいい打開案があるのだろうか。
どうでもいい事だったら王子だろうがぶん殴ってやる。
フーリアの弱った所へ漬け込んで適当なことを言って釣るなんてことをしたら許さないんだから!!
「そ、それでどうしてギルドまで入ってきてまで私達に声を掛けたんですか?」
「ふむ、その前にフーリアさんは何か特別な血を引いているんだよね?」
「ホワイト家です。神秘剣という珍しい剣しか扱えない特殊な家系です」
「神秘剣……まさか……」
心当たりはあるみたいだ。
私とフーリアはレインの話に耳を傾ける。
「確証は無いが、もしかしたらいい方法があるかもしれない」
「ほ、ほんとですか?……どんな方法ですか?」
「それは、タダでは教えられないな」
「……一国の王子様が市民に何か要求するんですか?」
「それとこれとは話が別だからだ」
「だとしても確証がない方法ならこっちが代価を払うにしてはリスクがあるとは思いませんか?」
ここは慎重に交渉していくべき……。
この話を持ちかけたという事は私と交渉したい理由があるはず。何を要求されるか分からない以上まずは聞かないといけない。
考えを放棄しないことは精神的な面で最年長な私の役目だ!!
人と話すのは苦手だけど、こういう時は私が何とかしないといけないよね。
「弱気な子だと思っていたけど、ちゃんとしてるな」
「せめて交渉内容を教えていただけませんか?」
「安心してくれ、その報酬は俺の方法が正しかった場合だけで構わない。もし違えば断ってくれていい」
「そうですか。それで……私達に何を求めているんですか?」
「それは教えられない」
「……私たちが何かしなくちゃいけない以上、出来ない要求をされても困ります」
「それはしないと言っているんだが……どうやら信じてはもらえなさそうだね」
一国の王子とか関係ない、嘘を付く人は平気で付く。自分の利益のために……。
そういうのからみんなを守るのが前世の記憶を持つ私の役目なんだよ……多分きっと!!
だから理由を聞かずに方法を聞く訳には行かなかった。例えそれでフーリアが剣と契約できなくてもね。
「分かった。じゃあヒントをあげる」
「ヒント?」
「ああ、要求するものは君から提供される物だ」
「私ですか」
「それ以外は絶対に無いと約束する……スイレンだったっけ?君のチームを巻き込まない。もちろん無茶なことは絶対に言わない」
そういう理由なら別にいいか。
私だけが何かする事でフーリアが新しい道を切り開けるのなら……しかし果たして全てを信用して良いのだろうか?
王子様だし権力を使って保護にする可能性だってある。
「もし保護にするような事があれば、我が王家に傷が着く」
「嘘を付けばそんな傷ないものになりますよ?」
「……周りを見ても本当に君はそう思うのかい?」
「え?」
「この国とギルドの関係は知っているね」
ジャスミンの街で聞いた話だと確か、花園は国家ギルドという組織だったはず。
「国家と言っても同じ立場なんだ。つまり、この会話を今聞いているギルドの諸君は私が嘘を付いていると言えば家名に傷が付く」
「だから隠せば……」
「隠せないんだよ。それがこの帝国のあるべき姿なんだ」
「どうして……そんな権力者が不利な国家体勢なんですか?」
「不正を行うものには厳しい制裁がある。大昔の王家の先祖様の残した契約があるんだ。なんでもその方は不正行為を行う人間が嫌いだったとか?」
「はぁ……」
「それにただの紙切れに書かれたものじゃない。正真正銘のバツが下る。王家なんて関係なくね」
「それをどう信じろと?」
にわかには信じがたい話だけど……。
嘘を言っているように見えない。それに周りの人達だって先ほどまで賑やかなモノとはだいぶ違う雰囲気を纏っている。
私達の事を全く見ていないのに話を聞かれているような不気味な感覚。
私はそれを信じてみようと考えた。
「それは今から伝える方法と繋がるんだが、そこで知ることが出来るはずだ」
「どこへ向かえばいいんですか……?」
「この街の地下だ」




