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第212話 魔法の修行


 全員の模擬試合が一通り終了すると紅蓮はつまらなさそうな瞳を向けたまま心にもない拍手をする。

 

 パチパチ――


 聞いている方が不愉快になるような軽い音が響き渡る。

 

「ある程度は把握できた。全員基礎が出来ているのは上出来だが当然今のままじゃダメだ」


 本当に称賛されているのか疑問だけど……。


 それにダメというのは分かっている、わざわざこんな所まで来て修行を受けているのはそれを改善するため。


 ただ1つ気がかりなのは……私は既にルークと一緒じゃない時点でやる気が少し落ちているということ。ショナにはユウリが居なくて寂しいのか聞いちゃったけど私自身が陥っていた。


 そんなことを考えて居ると紅蓮は突然私の事を見て、とんでもない一言を発する。

 

「しかし1人だけ、この修行に付いて来られない奴が居る。お前だ白い髪の女」


 紅蓮が指を差したのは……私だった。

 

 この修行に付いて来られない……?


 確かに私はサツキに負けたけれど、他の子達を相手にならいい勝負をする。

 周りの人の戦い方だって見たからそれくらいは分かる。

 

 少なくともサツキと勝負するよりは十分に勝算があるはず……なのに!!


 その時、私はなんとなく魔剣アスタロトを見つめる……これが原因じゃないかと考える。


 そこへショナが横から割って入ってくれた。


「待ってください!フーリアが付いて来られないとはどういうことですか!?」

「言葉通りだ」

「ど、どうしてですか!」

「それはそこの女が一番分かっているはずだ。その剣……きちんとした契約をしていないだろ?」


 世界最強の剣士というだけあって見ただけで見抜けるのね。


 この魔剣はルークの師匠であるダインスレイブから奪ったのモノ。

 契約しようとしたんだけど、阻まれて使えなかった所へルミナの力が干渉して私はこの剣を扱う事が出来た。

 

 そしてここまでずっと使って来た相棒とも言える剣……。

 

 でも……なんとなく分かっていた。


 お前はダメだと言われた時に魔剣アスタロトが原因だと……。


「そんな……!!じゃあフーリアはどうすれば……!!」

「せめて魔剣との正式な契約をしてこい。じゃないと教えられん」


 まさかここでそんなことを指摘されるとは思わなかったけれど……確かにどうにかしないといけないとは思っていた。

 

 解決の手があるのかすら分からないけど、講師の人が私には教えられないというのなら立ち去るしかない……。


 ……………………。

 

「分かり……ました」

「ちょっとフーリア!!」

「ごめんショナ、一応ルークにも伝えておいて……どうにか……どうにかしてみるからッ!!」

「あっ……待って――!!」


 ショナが何か後ろで叫んでいるのが聞こえたけど、私はその場に居るのが嫌になってしまって走り去った。

 

 涙が出そうな気持ちを抑えて、私は広場を出て行く。


 どうして私だけ強くなれないの……!!

 

 ――


 一方その頃ルーク達魔導士組の修行は――

 

「……な、なるほど、寝そべるだけというのも悪くないですね」

「だろ~?ここはとても気持ちが良いんだぁ~」


 今、ルーフェの修行を受けている最中なんだけど……とりあえず芝生のベッドに仰向けになっていた。

 

 天然の芝生の上に寝るという最高の修行だ。


 凄く気分が良くて、なんだか凄く穏やかな気分~。

 

 強くなりたいという気持ちはあるけれど、こう修行をサボるわけじゃないけど、その時間を寝て過ごすのは大好きだ!


 他の子達はそうでもないみたいだけど……。


「あのルーフェ様……本当に寝ているだけですか?」

「……それを決めるのはボクじゃない」

「どういう意味ですか?」


 確かに寝そべっているだけだとしたら、何の修行にもならないよね。

 

 本当にこれが寝ているだけならね。

 私はこの天然の芝生に違和感を覚えていた。一見何の変哲もないものだけれど、大自然の魔力を感じる。

 

 これは……リリィータートルと戦った時の火山口に充満していた魔力に似ている。


 この街には聖獣が居るんだっけ……。


 神様の話だと確か地下に居るはず。その地下から溢れる魔力だと考えるとこれほどの大自然の魔力も納得だ。

 

 そんなことを考えて居るとまるで考えて居る事が手に取るように分かっているような口ぶりでルーフェは応える。

 

「ほぅ……君だけはこの芝生の異質さに気づいていたんだね!」

「え……あっはい……」

「なんだいその反応は!誇っていいよ大自然の魔力なんて普通じゃ捉えられない」


 高評価を貰えたのは凄くありがたいんだけど、なんだか引っかかる言い方だ。

 この人が何を考えて居るのか全く予想ができない。


 芝生の魔力について話すとそれが気になったのか他の子達が一斉に寝そべりながら目を閉じた。

 

 というか芝生に耳を当てて何かを聞こうとしている子もいる。音じゃなくて魔力なんだけど……。

 

 そんな様子をあざ笑うわけでもなく、馬鹿にするわけでもなく、そのおかしな光景にお腹を抱えてルーフェは笑っている。

 

「あはは!そんなことをしても大自然の魔力は感じられないよ!」

「じゃあどうすればいいんですか?」

「今日は一日中のんびりしようと考えて居たんだけど……仕方ない。君達には大自然の魔力を感知する能力を身に付けてもらう」


 それが修行内容だったのね。

 

 大自然の魔力を感知することに何か意味があるのか分からないけれど、きっとルーフェの力の源が見えてくるかもしれない。

 

 ただ、そうなると……。

 

「……あの、私は?」

「あ、君は大自然の魔力を捉えるんだったね?魔法は教えられるんだけど、みんな一緒にじゃないと……ボクはシングルタスクだからねっ!」


 一度に沢山の事を教えるのは大変だろう。

 ミスをするかもしれないから……でも私以外は大地の魔力を感知するだけだよね……。

 それなら片手間にできるんじゃ……。

 

 ここで変に食い下がって悪印象を持たれるのは良くない、とりあえず納得したフリをする。

 

「な、なるほど……じゃあ大自然の魔力を捕える方法を教えてくれるんですか?」

「いや?それも自分で見つけるのが最初の修行……三日以内に感知できない子には教えないから頑張れ~」


 何ともめちゃくちゃな人だ。その言葉だけで先ほどまでのんびりしていた生徒も不満で立ち尽くしていた生徒も一斉に動き始める。

 

 他の子達はそれを聞いて必死になって大自然の魔力を捉えるために動き出す。

 その様子を楽しそうに眺めながら見つめているルーフェ……。


 うん、凄く暇がありそうで魔法を教えるくらいできそうなんだけど……?

 

「あの……これなら魔法くらい教えていただけるのでは?」

「ボクはシングルタスクなんだ」

「いや……寝ているだけですよね?」

「……いいから、君は三日後に来てね~」

「えぇ……」


 そんな勝手な事を言われてしまい、私は早々に広場を去った。

 

 三日後……また来るとは言えユウリ達は大丈夫だろうか?そんな一抹の不安を抱いても仕方ない。


 皆を信じて私は三日という長い時間を有効に使おう。

 

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