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第208話 最強の剣士


 まさかこんな天井も無い広場で行われるのが筆記試験なんて想像もしていなかった。しかも立ちながら。


 魔法でモニターのようなものが表示されてタッチすることで入力ができるという謎にハイテクな技術を使っている。

 

 魔法だから不思議ではないんだけど、映像を魔法で映し出すのは容易じゃない。

 

 ましてやタッチしたら誰でも入力できるとか一体どんな魔法を使っているんだろう。

 

 しかしながら普通に実技で実力を示すだけだと思っていた人たちは多く、突然の筆記試験に不満を漏らす声が多数ある。

 

 そしてよく問題文を読んでみると確かに魔法の事ばかりで剣士には不利に見える。

 

 だけど内容は子供でも分かるような簡単なものだった。


 炎属性魔法の弱点は?とか魔法のランクを順番に書くとか、一番難しいのでも中級の睡眠魔法の効果が発動する時間と効き目の長さは?と言った魔道士なら誰でも、剣士でも数個間違える程度の簡単なものだった。

 

 文句を言っている人達は放っておいて、問題ととっとと解く。

 めちゃくちゃ簡単だったので一瞬で終わった。


 数十分待った頃に青年が筆記の終わりを告げる。

 すると周りの人達は突然の筆記試験を終えて愚痴を吐く。


「ようやく終わった」

「筆記なんてなんの価値がある?俺はルーフェ様から魔法を教わりたいんだ」


 ようやくと言っても30分に満たない短い時間だったけどね。

 

 この筆記は多分その人に教わる権利を得るためのものだと思うんだけど、まあ突然こんなことを言われて、実技のみだと思っていた生徒は嫌がって当然か。

 

 ただ、そんな生徒でも実力のある人はいる。ガタイがよく、聖剣持ちの優秀な生徒。


「俺様に筆記試験の結果は必要ない。実技だけでここにいるヤツら全員ぶっとばしてやる!!」


 それに同調したりする者もいる。

 

 こんなのにも教えるのだったら大陸最強の魔導騎士(エーテルナイト)というのは強さだけを追い求めるだけの人達という事になるが――


「それでは問題を先に解いた上位80名は次の試験へ、それ以外の350人は失格とする」


 その言葉の後に私の目の前に先程の魔法のモニターが表示されて合格の文字が現れる。

 

 そしてそこには順位が書いてあり私は2位という成績。


 気になるのはその魔法のモニターが表示されていない人が何人もいた。いや、そちらの方が多いくらい。

 

 つまりその人の前にモニターが表示された人が合格ということになる。

 私たちスイレンとサツキ、マツバは全員合格していた。


「え、アレで合っていたの?」

「フーリアは何位だったの?」


 剣士だしそこまで高くないだろうと予想していたんだけど、以外にも37位という成績だった。

 

 勉強はできる方だったけれど、最初は少しだけ不満そうにしていた。だから試験に手が伸びていなかったんだけど、私や他の子達が試験をやっている所を見て急いで回答していた。


 選択問題だったので一瞬で適当に埋めて提出して合っていれば合格する。つまりフーリアは当てずっぽうで正解したということだ。

 

 なんという豪運。


 しかし当然そんな試験に当然納得のいかない生徒もいた。先程のガタイのいいやつだ。


「はぁ?紅蓮様!どういうことだ!?」

「君は不合格だ。この程度の問題も解けないバカに教えることは無い」


 紅蓮……そうか青年は最強の剣士の人だったのか。

 てっきり試験官とばかり思っていた。

 

「あ?内容は確認したがガキなら誰でも分かる問題だったぜ? 」

「でも君は回答しなかった。つまりガキでも解けるような問題を規定までに解かなかった。バカと言ってなにか問題があるのか?」

「あ?どうやら俺の力を見せつけないとダメみたいだな。見ろよこの聖剣の輝きを!!」

「はぁ……」


 紅蓮はため息を付くと腰に差していた剣を鞘ごと持ち上げる。

 

 剣を抜いてこの男子生徒を黙らせるつもりだと思っていたんだけど、彼から殺気を感じない。戦う気がないみたい。

 

 それなのに紅蓮は鞘を持つ手の力を強めて剣の塚を握る。


 抜刀するつもりだ。


 戦う気がないと思っていたんだけど、私の目は間違っていた……?

 

 彼は男子生徒を黙らせるために恐らく圧倒的な剣術を見せつける。しかしまたも私の予想は外れる事になる。


 紅蓮が鞘から剣をスゥーと抜く。本当に数センチほど。

 その時だった!!


 ……吹き飛ばされてしまいそうなほどの暴風が吹き荒れる。


「ーーっ!」


 この獣人の身体でも揺れるほどの風、それを広場全体が襲う。

 

 スカートを履いた女子生徒は、パンツが見えそうになり、男子生徒は吹き飛ばされないようにふんばる。

 

 私もスカートを履いているんだけど見られても大丈夫なパンツを履いているので隠さなくても大丈夫だ!


「ちょ、ルークちゃんと隠して!」

「え?ってちょ!?」


 そこへサツキが右手で目の前を覆い、余った左手で私のスカートを押さえつけた。

 

 それにはさすがの私もパニックになる。


 見られてもいいパンツを見られるのは別にいい。

 

 だけどスカートに触れられるのは凄く恥ずかしいんだけど!!


「ちょ、アンタ何してんのよ!」

「え、は!そうか俺はこの世界では男だった!!」

「何言ってんの訴えるわよ!!」


 そして何故かフーリアが怒っていた。

 

 私たちはなんだかんだ余裕のある態度を見せていたんだけど、周りは恐怖や絶望に近い表情をしている人で溢れている。


 まさかほんの少し剣を抜刀しただけで、これほどとは……これが世界最強の剣士紅蓮の実力!!

 

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