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第207話 試験当日の朝


 試験当日の日。


 今までにないほどの快適な眠りから覚める。

 

 ふかふかふわふわのベッド、虫を寄せ付けない蚊帳、エアコンや加湿器などない世界だというのに快適な温度。おそらく魔法で温度を一定保たれるようにしている。


 部屋に充満してる魔力でそれを感じ取った。

 

 部屋の内装は何故か女の子らしい可愛い雰囲気でそれもまた落ち着く1つの要因になっている。


 部屋を決めた際、あの場には確か……執事の人が居たんだけど、まさかのレインと話している間に部屋の内装を変えていたとは。


 しかも、それぞれの部屋には給仕が付いている。


「ルーク様。おはようございます」

「お、おはようございます。そのとても快適な部屋で……あ、ありがとうございます」


 いいお部屋に泊めてもらうとお礼を言わないとなんだか申し訳の無い気持ちになる。

 

 さらに言えばここは本来王族が使う別荘であり、タダで泊まっているんだよね。


 魔導騎士エーテルナイトであるサジタリオンだからこそ、用意できたんだろう。

 この国ではルエリアほど信仰されているわけじゃないけど、力は皇帝を超えてる。


 そんなことを考えながら、言ってもないのに開けられたカーテンの外を眺めているとメイドの人が応える。

 

「いえ、皆様の希望に答えるのがメイドの役目。この屋敷の執事は見ただけでその人が何を望んでいるのか見極められる程の目を持っておられます」

「まさかこの部屋は」

「はい、ルーク様が願う理想の部屋を用意したつもりです。あまり気に入られませんでしたか?」


 中身は男なんだけど、まさかこんな可愛らしい部屋を望んでいたとは、自分でも知らなかった。

 

 しかし嫌では無い……むしろ確かに精神的に落ち着く……。

 

 それを見ただけで見極められるってこの国の執事すご!!

 

 ルエリアでメイドをしているアナも私が快適に過ごせるよう完璧な時間、完璧なタイミング、完璧な料理を用意してくれていた。


「執事学校の出なら当然です」

「執事すご」

「それより、お食事の準備をしておりますので食堂へ来ていただけますか?他の方達も集まっているはずです」

「あ、すみません」


 アナ以外のメイドには慣れなくてこんな話し方になってしまう。


 やっぱりアナとは違い、話慣れていないせいかぎこちない感じになってしまった。

 

 私は給仕を受ける側なんだからもう少し堂々としなきゃ!!


 それはよくアナに言われていた。貴族だから少しは堂々としてくださいと……。

 

 とりあえず朝食へ向かう。

 

 正直この広い別荘なのでとても一日では部屋を把握出来ない。メイドの人は無表情のまま私の案内をしてくれている。

 

 それは雰囲気が悪いというよりはそういうメイドの人なのだろう。これも私に合わせて用意してくれたのかもしれない。


「ここです」


 そんなことを考えていたら遂に食堂に着いたみたい。

 

 中に入ると案の定広く無駄に長いテーブルを挟んで窓際にショナ、ユウリ、マツバの順番で並んでいる。


「おぉ美味しい!!これタダなの!?」

「だとしても少し遠慮しないと!」

「魔体症なら仕方ないって!!」


 以外にも他の同年代の子達よりはたくさん食べるショナは自重していて、食べ物に目がないユウリは遠慮しない。

 

 そんな様子を見ていたマツバが横から割って入ってくる。


「ユウリは魔体症なんだから仕方ないだろ」

「マツバさん、いつからユウリにそんなに甘くなったんですか?」

「彼女だけでは無いんだが、てかどうして俺だけ未だに敬語?マツバでいいんだが」

「お気遣いありがとうございます。でもユウリのことは私が一番よく分かっているので大丈夫ですマツバさん!!」

「はっきり断られたな」


 これはあれか修羅場ってやつだね。

 

 どうやらユウリを取り合う三角関係が出来ているみたい。


 ショナの場合は友達を取られたくないだけだろうけど、ただマツバのことはさっぱり分からない。

 前に何かあったみたいなことは聞いたけど、それきりだ。


「ルーク遅い」

「ご、ごめん」


 そしてフーリアとサツキは窓際の反対、廊下側に座っていてすぐ近くだ。

 

 二人とも隣同士で仲が悪いようには見えない。


 昨日まで言い争っていたのが嘘のようだ!

 

 何かあったのかな?


 そんなことを考えているとフーリアは私を睨んでーー


「で、どっちの隣に座るのよ」

「え」

「私かこのストーカーか」


 そう言う事か……。

 

 仲良くなったと思ったらむしろ逆、2人が隣に座っている事で私が中央の席を取って2人の隣に座れなくなった。

 

 どちらか片方しか選べない。

 

「あ、あはは。ルークは気にせず座りたい方へ座るといい。フーリアの方でも俺は気にしないから」

「は?本心じゃないくせに……!!」


 こ、こっちもこっちで面倒くさいことになっていた。


 戦いの時はチームワークが完璧なのにどうしてこういう時は仲が悪いのだろう。


 まさか隣に座っていたのは私が中央へ座る選択肢を潰すため?フーリアとサツキが隣同士だから私はどちらかの隣に座らざるを得ない。

 

 それなら第三の選択肢……窓際を選ぶ!!!


「ルーク」


 しかし、私の浅はかな考えはフーリアによって打ち砕かれる。

 

「うぅ」


 結局無難にフーリアの隣を選んだ。

 

 朝から胃にモノを入れておきたかったのにあまり食事が喉を通らなかった。


 地獄の朝食を終えて、ようやく試験会場へ足を踏み入れた私たちは街の大きな中央広場へやってきた。

 

 闘技場とはまた違う。全面が開けているし辺りには建物もある。


「いや、全部空き家?」


 人の気配を感じない、とてつもなく開けた場所に無人の倉庫、ここで一体何が行われるのだろうか?

 

 そんなことを考えていた時だった。約束の時間になると一人の青年が現れる。


「それでは試験をはじめます」


 そう青年が現れた次の瞬間、私たちの目の前には魔法で出来た文字が現れる。

 

 内容を黙読するとこれはテストの問題文のようだ。


 それも魔法が中心、一部剣士のことも書かれていたが、大体は魔法の試験と同じものだ。


「まずは筆記試験からだ」


 どうやら説明も無しで時間になったら有無を言わさせず試験を開始するみたい。


 こんなので焦るような人間ではないわ。こんな問題一瞬で終わらせてやる‼︎

 

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