第201話 中央都市へ
「よ、妖魔ですか……」
「嫌なの?このギルドマスターことスノードロップも同じ妖魔族よっ!」
「まあ首を落とされても生きてたので人ではないのは分かってました……」
「私は雪女でね。雪が降っている場所では死ぬことも老いる事も無いのよ」
だから首を落とされても死ななかったのね……。
おそらくそれも雪の街限定だろうけど、それでも凄まじい恩恵だ。
北の街なんて常に雪が降っている。ここでのスノードロップは無敵だろう。
ちなみに妹のフローレは人族なのだとか。
姉と慕っているのは幼い頃より面倒を見てもらっているからで血のつながりはないという。
それにしてはフローレはスノードロップに似ている。
いや、フローレがスノードロップに似せているのかな。
種族は違えど、尊敬して憧れている存在に近づき手たいという気持ちが伝わってくる。
「まさか私も妖魔族になったら死ななくなるんですかね?」
「どうでしょう?妖狐様なら1000年は生きると聞きましたよ?」
「そんなに!?」
そんなに長生きはしたくないなぁ。
だってフーリア達を見送ることになるし……。できれば一緒に年を取って……。
そうじゃないと悲し過ぎる。 想像するだけでも嫌な気持ちに陥ってしまうほどだ。
ルミナには尻尾が9つになる前に離れてもらわないと!!
でも決してルミナのことが嫌いって訳ではない。
「ただ……妖狐様の憑りつく力は強力で……憑りついて力を与えてもらった後、何か異変はありませんでしたか?」
そう言われると顎鰐戦の前に力を使い果たして動けなくなったっけ……でもそれが一体なんだと言うのか。
「おそらく、ルミナ様を外に出せてもその反動が襲い掛かると思います」
「え……」
「激痛か身体の一部が動かなくなるとか……後は力をごっそり持って行かれるとか」
「怖い!!」
まさかこの姿で居る時間が長ければ長いほど解除した後の負担がやばい!?
ルミナには悪いけど、本当に離れて欲しい。
聞いていないんだけど……。
やっぱりみんなと一緒に年を取りたいし……でも最悪二度と動けなくなる可能性もあるのか最悪手遅れかもしれない。
フーリア達も心配そうな顔でこちらを見つめている。まるで遠くへ行ってしまう私を心配しているみたい。
考えすぎかな。
「それでもとりあえずはルミナを離す方法を探します!」
「そう……また何か分かったら連絡するわ。確か帝都にしばらくいるのよね?」
「はい!今から帝都へ向かいます」
「着くのは夜中ね。今日くらい泊って行ってもいいのに」
「だ、大丈夫というか。本当はもう少し早く王都へ着く予定だったので……」
「遅れてしまったわけね……それじゃあこれを持って行くと良いわ」
スノードロップはそう言って手紙を手渡してくれた。
リリィから渡された手紙と同じで花園の紋章とスノードロップの花の模様の可愛らしいスタンプが押されている。
「これは……?」
「それを中央都市ダリアで約束している方に渡してください」
「わかりました!」
「それにはあなた達が遅れてしまった理由も書かれているから、きっと許してもらえるはず」
スノードロップの気遣いに感謝しよう。
サジタリオンが信用しているとはいえ、相手は魔導騎士。遅れてしまった事で何か不愉快にさせてしまうかもしれない。
私達は惜しむ暇も無くその手紙を持って早々にスノードロップの街を離れる。
馬車に戻るとサジタリオンは騒ぎの中でもずっと眠っていたらしい。
「はぁーあ、終わったんだね?」
「はい!すみません遅くなってしまい……」
「構いませんよ。むしろ沢山眠れてよかったです」
「街が凍りつけになりましたけど……その時も……?」
「……え!?そんなことが!?」
どうやら知らなかったみたい。
確かにこの馬車は快適だけど……。
「ごめんね。ずっと寝て無くてね」
「寝ていないんですか!?」
「学校の管理や魔導騎士の風当たりがね」
サジタリオンもずっと忙しかったんだろう。十分に眠れたというが、まだ少し目を擦っていて辛そうだ。
それなのにわざわざ協力してくれているなんて、本当にいい人!
もしかしたら学校から少しだけ離れたいという気持ちもあったのかもしれないけれど。
私達は日がまだ出ている時間に中央都市へ向かう。
スノードロップの街には丸一日、居た事になるんだけど一日とは思えない程濃い時間だった。
聖獣と出会い、学校を襲ったネプチューンと対峙した。
またあの理不尽な強さを見せつけられるのは嫌だ。
そのためには習うべきことを学ぶ。
ようやく、私達の修行が始まる。




