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第200話 妖魔の女王


 スノードロップによって凍り付いたスノードロップの街は開放された。

 

 あの後ヴェルダンディは氷の中に閉じ込められたままで、ギルド花園の彼女が昔使っていた個室へ運ばれた。

 

 そしてスノードロップの魔法から解放された人達は氷の中に閉じ込められていたというのに外傷もなく、ピンピンしている。

 

「ちょっとお姉ちゃんっ!?なんで急に禁忌魔法なんて使うかなぁ!?」

「禁忌と言っても私達ギルドマスターは許されてるから」

「それは緻密な魔力操作ができて、人を殺さずに魔法を展開できるからで……」


 そう考えると確かに誰も死んでいない。


 これが一般の魔導士なら処罰を受けるのが禁忌魔法というもの。

 使い方を間違わなければ人を死なせるどころか争いを止める絶対的な力になりうる。


 誰一人として死なせずに氷の中に閉じ込める事ができるスノードロップだからこそ許されているわけだ。

 ちなみに星の欠片の冒険者達も解放されている。


 スノードロップは星の欠片の冒険者達と話し合うみたい。今まで後ろ向きだったのに、彼女は強く出ているのが分かる。

 

 もしかしたら親友が向こうへ行ってしまって精神的に行動できなかったのかも。それか実質親友が人質みたいな状態だったから、何もせずに静観していた。


 スノードロップは出会った時とは違って表情が活き活きとしている……話は案外すぐにつきそうだ。


 そんな様子を見守っていると私の所へフーリア達が寄ってくる。


「ルーク……良く動けたわね……」

「まあ炎の魔導士が凍ってちゃ世話無いしね」

「そんな次元じゃないと思うんだけど……」

「それより皆は怪我とかない?」

「え、ええ……一切。だけど少し寒いかも」

「尻尾使う?」

「……うん」


 フーリアはそっと私の尻尾に触れる。


 暖かいのかさっきまで厳しい表情をしていたのが柔らくなっていく。

 それを見たショナ達も物欲しげな目で訴えてくる。

 尻尾を器用に操ってそれぞれ5人にも尻尾を貸してあげた。


「あれ?尻尾の余りって2本だっけ?」

「今更だけど最初はもっと少なかったよね」


 やっぱりあの時の違和感はこれか……。


 また尻尾が生えてきた。これで7本目……。


 なんだか、尻尾の数が増えるにつれてだんだん魔力や獣のような感覚が鋭くなって行っている気がする。

 確かに嬉しい事なんだけど……なんだろう……少し不安だ。

 

 なんだか自分が自分でなくなっている気がする。

 

 そんなことを考えて居るとスノードロップがこちらを無言でずっと見つめていたのに気づく。

 その周りを見てみると星の欠片の冒険者達は俯いて落ち込んでいる様子だ。

 

 何かあったのか、それは案外簡単な理由だった。


「ヴェルを返せと言われたのだけれど、丁重にお断りしたわ」

「大丈夫なんですか?向こうのギルドマスターですよね?」

「問題ない。魔王教団とのつながりを国に報告すると言ったら黙ってしまってな。最初はなかなか恐ろしい瞳で睨んできたら、また凍らせると言ってやったら何も言わなくなった」


 敵とはいえご愁傷様ね……。

 

 こんな大規模な魔法を見せられて、何も言えなくなるのは当然だ。

 なかなかえぐい手段だけど、これで星の欠片はこの街を去るしかなくなるだろう。

 

 さらに他の街にある星の欠片のギルドも検挙されるはずだ。これでひとまずは魔王教団の名前を耳にすることは無いはずね。


「さて、こちらの用も大体終わったからな。そろそろ君の事について話しておこう」

「わ、私……?なんですか急に……?」


 スノードロップは私に向けてそんなことを言いだす。

 そういえば勝利の報酬として私のこの身体について教えてくれるって言っていたっけ。

 

 勝ったとは言えないモノの、良い終わりへ持って行けたから、その報酬なのだろう。


 しかしそれにしても何かあるのだろうか?

 

 最初の頃は何も知らないみたいな雰囲気を出していたのになんだか深刻な表情でこちらを見ている。


「まずは確証のあることだけ、その力は妖魔の妖狐族のモノですね。人に憑りつき、操ったり力を与えたりします」

「あ、操られるんですか!?」

「普通はそう使うのがメインなのだけれど……あなたはずっとルークさんのままですよね?」

「そうですね……」


 まさかそんな力まであったとは……。


 だけどルミナに乗っ取られている感じはしない。それどころか力を貸してくれている……はず。


「それでこれはまだわからないのだけれど、おそらくあなたに憑いているのは妖魔族の女王。九つの尾を持つ最強の妖狐様よ」

「妖狐……まあそうだとは思ってましたが……」

「妖狐様の尻尾は9つ……なのにあなたはまだ7本しか生えていない」

「確かに……最初は2本でした」

「なるほど……ついに予言の妖狐様が誕生していたのですね」

「予言……?」

「いずれ我ら妖魔族の女王が現れるというのは分かっていたの。おそらく誕生してすぐでまだ成長途中と言った所かしら」


 だから尻尾が2本だったのか。

 でも今じゃもう7本……半年も経っていないのに凄い成長速度だ。もしかして私と会ったからだろうか。


 後2本……も増えるのね。これだけ尻尾があればベッドは要らないね。

 そんな呑気な事を考えて居るとここからスノードロップは深刻な表情を見せる。


「これは確証が無いのだけれど、おそらく9つの尻尾が生えてしまったら、あなたは妖魔族になってしまうかもしれません」

 

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