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第197話 賭け


 街に戻ると案の定、勝負の結果が伝わっていた。私達を生かした理由の一番の理由はその承認として話せという事か。


 私達の負けがこれで確定してしまったわけだけど、これには少し疑問を感じる。

 それは最初こそ3人チームで行動していたのにも拘わらず、星の欠片は後でもう一人追加した。


 さらに星の欠片の1人は死亡してしまった。

 サツキはネプチューンという存在を指摘し始める――そこから妥協案を引き出す方針だ。

 

「途中から割って入ってきた奴は魔王教団の幹部、それもエステリア学校を襲ったネプチューンだった」

「それが何か?」

「この勝負が俺達の負けであれば、エステリア学校を襲ったネプチューンと星の欠片が組んでいる……つまり」

「魔王教団と星の欠片は繋がっている。良いわよそれでもね」

「なっ!?」


 あっさりとそれを認めた……?いや、認めたとはまたニュアンスが違うか。

 

 それでも魔王教団の肩を持つような発言、ルエリアとハーベストは隣接した国同士でありながら仲は良好で魔王教団に襲われた際に馬車などの手配をしてくれたという。

 

 だから魔王教団の所業を知っているはず。

 そんな国が魔王教団を放置するとは思えない。


「それはどうだろうか?」

「え……?」

「ハーベスト帝国はルエリアよりも実力主義国家だ。魔法も剣も最高クラスでその両方に長けた方達がこの国には存在する」

「……何が言いたいんだ?」

「私達が魔王教団の息が掛かっていたとしても罰するだろうか?むしろ国の発展のために協力すらしてもらえるかも……」


 シリウスが最後まで言う前にスノードロップがハッキリとその言葉を斬り伏せる。


「それは無いわ」

「どうして?」

「あの皇帝がそんなことに加担するとは思えない」

「それはどうかしらね」

「シリウス、いいえ……ヴェルでも知らない皇帝の素顔でしょ?」

「お前は知っていると?」

「良く知っているわ。あなたとは違ってね」

「……」

 

 2人とも牽制し合っている。

 しかしずっと睨み合っているだけでは埒が明かない。

 

 魔王教団と協力しているのならそもそもこんな勝負は無いようなモノ、しかしその勝負で一人の冒険者が犠牲になった。

 だからシリウスもまた引けないみたい。


「どうしても魔王教団が絡んでいたら気に入らないみたいね?」

「当たり前よ!」

「そうだなぁ~」


 シリウスは何かを考えて居る様子だ。手を前に持ってきて腕を組む。

 

 するとその視線は何故か私に注がれていた。何か嫌な予感がする。


「私は賭けにその子を要求した。それじゃあその子に全てを委ねてみるのはどうかしら?」

「ルークさんに何をさせるつもり?」

「この勝負は第三者の介入によって保留……しかし双方負担は大きかった。このまま何も無しというのは頑張った子達が報われない」

「それはそうだけど……さっきは魔王教団との接点を認めたくせに!」

「あれは冗談、せっかちなおばさんは嫌われるわよ?確かその子は私に炎の魔法を浴びせたいのだとか」

「……そんなことを言っていたわね。私もどういうつもりでそんなことを言いだしたのか知らないけれど」

「その魔法を受けて上げようと思って」

「なんですって!?」

「その魔法に耐えたら私の勝ち。耐えられなかったらあなた達の勝ちでどう?」

「そんなの飲めるわけ無いでしょ!!あなたは仮にも花園フローレの副ギルドマスター……この子に勝ち目はない」

 

 どうやら私がシリウスを倒すために炎の魔法を使うと思っていたのだろう。

 

 実際は治癒のための炎……。

 どうやらそれには気づいていないみたい。


 スノードロップに事前に伝えなかったことで彼女の言葉に信憑性が生まれる。そしてその言葉をシリウスは信じた。

 

 つまり、これは好機!!


「わ、わかりました!!」

「な、ルークさん!?本気ですか?」

「信じてくださいマスタースノードロップ!」

「……なんでそんな……くっ……わ、分かった。頼むから無茶はしないで」


 その言葉は恐らく本心だろう。

 しかしそれは私にではなく、この炎でシリウスが死ぬかもしれないという危惧も入っているはず。

 

 黙って居るのが心苦しいけど、バレて魔法を受けてもらえないとなるとこのチャンスを無駄にしてしまう。


 ここは前世の演技力を発揮する時……!舐めないでよね……こっちは合計で40年生きているんだから!

 

 とりあえず、自信があるように振舞うために顎を突き出して、両手を脇に当てる。

 

「ほぅ……なかなかの自信だな?そんなに魔法に自信があるのか?」

「ま、まあ……」

「それなら見せてみろ!私を気絶させるか行動不能にできなかった場合はお前には星の欠片(ウチ)に来てもらおう」

「え……それってまさか……」

「お前は私の物になる」


 なんとも嫌すぎる条件だ。

 もしミスをしたら私はこの人のモノになってしまう……それだけは避けたいんだけど、なら猶更成功させないといけなくなった。

 

 リリィータートルのおかげで私の魔力、魔法のレベルが少しだけ上がったし、その成果を見せるしかない。

 

「それでは行きます」

「来なさい」


 ここで使うべきは「不死鳥の炎」だ。

 

 倒す必要はない、彼女の中の毒を抜くイメージ。

 この魔法は、女神の力。


 彼女の人格を戻す魔法!!


不死鳥の炎(フェニックスフレア)!!」


 炎がシリウスを包み込む。

 

 スノードロップは当然、心配そうに見つめている。

 シリウスはそれを受け入れ、その魔法を受けた。成功するか凄く不安になるほど彼女は冷静に不敵な笑みを浮かべる。

 

 しかし、シリウスは次の瞬間苦しみだす。


「うぐっ……!この炎は!!」

「ちょっとルークさん、これ大丈夫なの!?」

「もう使っているので明かしますが、これは治癒の炎です。一度魔王教団の薬で人格が変わってしまった人を治したことがあります」


 その瞬間、炎が赤色と緑色の二色に輝きだす。


 これが強化された私の魔法……?

 

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