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第191話 聖獣の力


 少しくらい人の話を聞いてくれてもいいのに、この聖獣は私の言葉に耳を傾けようとしない。

 

 完全にあのネプチューン(おんな)に騙されている。もちろん言葉だけならまだマシだったんだろう。そこへレオの支援があったことで聖獣からしたら、あの女が言っている事が本当に見えてもおかしくない。


 そのせいで完全に敵視されている。


「愚かな主よ。往生際が悪いぞ!!」


 しかし他にも攻撃している奴らがいるのにずっと私の事ばかり狙ってくるし!!

 

 これじゃあずっとみんなの側に居られない。作戦を考えて伝える役目をずっと担ってきたけど、こうなったら私以外がやるべきね。


「皆、私は離れた所でアイツの攻撃を避け続けるからその間に倒して!」

「倒すって……そんなことをしたら魔王教団の思う壺……」

「倒すと言っても殺すんじゃなくて無力化するの!そのための指示をユウリに任せたいんだけど」

「私!?」


 離れて戦う私では指示が遅くなる。

 そこで魔力が切れて戦いに参加しできないユウリに任せる事を考えた。

 

 私がこの1年で見てきたけど、この中で私を含めて一番冷静なユウリだから任せられる。そんな安直な理由。


 だけど何かやってくれそうなそんな期待ができる。


「わ、私が……?」

「ユウリ!ルークからの指示だよ!!大丈夫、ユウリならできるよ!!!!」

「うぅ……ルークがアイツの気を引いてくれてるもんね。や、やってみる!」


 スイレンとおまけの魔導騎士(エーテルナイト)2人はユウリの指示の下、リリィータートルを倒すための作戦を考えている。

 

 その間、私は――


 亀の爪が迫ってきたら避け、ブレスが来たら避け、花に魔力を溜めた大技を避け……ずっと攻撃を回避し続けていた。


 こちらからの反撃は一切しない。

 

「貴様!それでも我らが主の器か!!」

「私は聖獣(あなた)の敵じゃない!!できれば攻撃をしたくないの!!!!」

「そんな言葉では我の心は花のように揺れぬ!!」

「背中の花は揺れてるのにぃ~!!」

「……」


 攻撃を回避しつつもそんな冗談を言う余裕が私にはあった。

 

 一撃一撃をまともに食らえば死ぬ、けれどそれは一撃も受けなければいいだけの話。木を抜くと危険だけど、抜かなければ今のこの身体なら容易に避けられる。

 

 反応速度も上がってもはや別人のような力を引き出せているから避けるのは多分余裕……。


 この戦いに勝利するためには問題が2つある。


 1つはどうやって倒すか。

 

 星の欠片の冒険者が居るから彼らが弱った亀を殺しに行く可能性がある。だから倒し方も考えなきゃいけない。


 そして2つ目は聖獣のスタミナ。

 大自然の魔力を扱える聖獣には魔力が無限に供給される。

 

 魔力は削れないものの、聖獣という生き物である以上、肉体的スタミナの限界はある。

 ようはそのスタミナがあるのなら、それが切れるまで戦い続ける。


 そうすれば弱らせずに無力化できる。

 ただこれには私のスタミナが限界に達しないのが条件……。

 

 体力には自信が無いんだよね。私の戦い方は短期決戦型の高火力攻撃を最初から与え続けるもの。


 単純明快だし、この戦い方は自分に合っている。

 だからこうした避け続けるのは苦手だったりして……。


 さて、そろそろ皆が良い作戦を考えて実行してくれていると良いんだけど、まだ動かないね。

 

 ちなみに星の欠片の2人は私が避けている間に横からずっと攻撃している。やたら攻撃している割には全然効いていない。

 

 これ、スタミナ切れるまで粘るのは無理そうだ。


 そんな時だった。私以外のスイレンと魔導騎士(エーテルナイト)の2人が一斉に亀へ突撃していく。

 

 どんな作戦を立ててくれるのかと期待していたのにまさかの全員総動員で亀を抑えるつもり!?

 

 こんな強力な攻撃を何度もしてくる敵を相手に突撃するなんて自殺行為にもほどがある!!


 私は亀の注意を全力でこっちへ向ける事を考える。


「焔火ッ!!」


 ここまで攻撃してこなかったけど、仕方がない。

 皆を危険な目には合わせられないからね。

 

 しかし、ただの炎の魔法ではびくりともしない。


「こんなもの……効かぬ!!」


 聖獣はそう言うとその巨体を利用してこちらにタックルしてくる。

 避けたけど聖獣はマグマにダイブして、その溶岩が避けた先の私の方へ飛んでくる。

 

 大きさは私の半分くらい。だけど凄まじい勢いで飛んできたので受け止めるのがやっと。溶岩の熱には耐えられるけど、服が少し燃えてしまう。


「くっ!!」

「諦めて楽になれ」

「そう言うわけにはいかない……っ!!」


 私は無我夢中でその溶岩を持ち上げながらそれを聖獣にぶつけた。

 すると聖獣はあまりにも速い溶岩の投擲を受けて揺らぐ。


「うぐっ!?これは聖獣……顎鰐の力!!」


 顎鰐……?


 確かに私の身体に流れてきたけど、そうかちゃんと力を受け継いでいるんだ!!

 これならまだやれるかもしれない!!

 

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