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第190話 亀の聖獣


 私の炎をアシストしてリリィータートルを攻撃したのは……ジャスミンの街で私達の邪魔をしてきたレオだった!!


「どうしてあなたがここに……!!」

「魔王教団の幹部に後もう少しで慣れたというのに……ガキのお前らに負けたから……!」

「どういうこと?」


 魔王教団幹部のマレフィックやネプチューンに相当する実力は彼にはないはずだ。

 

 私と炎でいい勝負するのがいい例だ。

 子供に同じ属性魔法を使っていい勝負をしているくらいじゃおそらく無理だろう。

 

 それだけマレフィックと私達には差がある。


 それじゃあどうやって幹部になるか、考えるとレオが居た研究所の事を思い出す。

 

「まさかあの薬……?」


 この男は薬の研究施設に居た。


 私達を悩ませているのが元々この世界に居る一般人を魔導騎士(エーテルナイト)のような力に目覚めさせる薬。

 

 しかしそれは魔導士なら剣士の人格をその人に出現させ、剣士なら魔導士の人格を出現させる恐ろしいものだ。


 それで精神が壊れておかしくなったり、身体への負担が強すぎで死んでしまう者も居る。そんなものを作った施設を守っていたのがこのレオだ。と言ってもほとんど放棄された施設だったんだけど……。


「お前らは勝ったつもりだろうが、魔導騎士(エーテルナイト)化の薬は着々と完成しつつあるんだぜ?」

「よく口が周るみたいだけど、私とあなたの合わせ技じゃあの亀は死なないよ」

「俺達の相性じゃダメみたいだな……残念だ」

「うげっ……当たり前!!絶対に相性が良いなんてことは無いから!!」

「そこまで嫌がられると逆に興味が湧いてくるな」

「キモイ、あの亀に殺されて死ねっ!」

「口が悪いのもいいな。お前そんな性格だったのか?」


 コイツの目、吹雪の中で私の事を睨んでいた時と一緒。

 

 あの時……私を睨んでいたのはレオだったみたい。

 話を聞く限りあの後、上の人に怒られたんだろう。星の欠片のギルド団員としてスノードロップの街を手に入れるのが目的か。


 それで名誉挽回を狙っていると考えるべきね。

 尚更この亀を殺すわけにはいかなくなった。


 今の私にとっての敵は亀か、それともレオか……。


 そんなことを考えて居た時だった。


「やはり、お前はあの女の言った通りなのだな」

「誰!?」


 どこからともなく不思議な声が火口に響く。

 ふとその声の主がこの亀だと気づく。


「あなた……話せるの……?」

「……」

「それなら私達の話を……」

「黙れ!!」


 亀は私の紡ぐ言葉を遮る。

 まるでこっちの話を信じるつもりが無いみたいだ。

 

 あの女が変な事を吹き込んだと言っていたし、きっとそのせいだろう。どうにかして弁明しないと!!


「あぁ、さすが俺のパートナーだ。このレオ様の炎と相性がいい」

「ちょ……!!」


 レオは私を見て不敵に笑う。

 

 コイツまさか私の炎に合わせて攻撃したのはあの亀と私達を敵対させるため!?


 そして亀の聖獣はその言葉にまんまと騙されてしまう。

 

「愚か者が!」

「本当にちがっ!?」

「それに先ほどの炎……我らと同じ聖獣の……やはり魔法を奪うというのは本当か!!」

「それは私が元々……っ!!」


 元々使えた魔法……だけどサジタリオンの話を聞いて自分がバレンタインなのか分からなくなってきている。

 「不死鳥の炎」を使えるようになった理由……それは未だに分からない。


「やはり貴様はここで一度死ね!」

「ちょ……っ!?」


 亀は私の言葉なんて見向きもしない。

 それどころか巨大な爪を使って薙ぎ払いに来る。避けたものの地面はまるで紙のように斬れて抉れる。

 

 こんなの食らったら獣人になっているこの身体でも死ぬ!!


 その攻撃だけならまだいいんだけど、ことごとく私への攻撃の手を緩めない。

 避けるのでやっとなんだけど、その間にレオ達、星の欠片が応戦する。

 

 が、レオ達の攻撃は一切効いていない。

 亀の硬さがどれほどのものなのかが分かる。しかしずっと受け続けるとどうなるかは分からない。ダメージというのは少なくとも蓄積して行くもの。

 

 同じ個所をずっと受け続けると肉は柔らかくなる。


 亀と言っても甲羅のような硬いものを背負っているわけじゃない。

 純粋に鱗だけで全ての攻撃を受けきっているみたい、あれに攻撃を通すのには骨が折れそうだ。


 すぐにあの攻撃でリリィータートルが倒れるとは思えないね。

 

「ルーク!一旦下がって!!」


 ショナの指示……。


 何故か私への攻撃が集中しているから、このまま避け続けていれば皆への被害は無くなる。

 だけどそれだと亀がいずれレオ達に殺される。


 仕方なく私はショナ達の所まで下がった。


 こうなったらどうやって死なせずに倒すか、それを皆で考えるべきか。


「ルーク……その名にあるまじき愚か者よ」

「……どういう意味?」

「貴様はこんなことをするために不死鳥と妖狐と顎鰐(がくがく)の力を使うか」

「この力の事を知っているの!?」

「ワシもその聖獣の一体。本来ならお主に力を与えるのが役目……」

「それなら……」

「だが!魔導の王を蘇らせようと考えて居るのなら話は別……魔王教団に落ちた愚かな主よ。再び死んでやり直せ!!」

「話を聞いて!!」

「問答無用!!」


 亀は背中に背負った花に膨大な魔力を放ち始めた――。

 

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