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第186話 雪山の魔物


 昨日の尻尾の事はひとまず置いておいて、今朝は夜の吹雪とは打って変わって快晴だ。

 

 相変わらず寒いみたいで、皆は私の尻尾を手放そうとしない。

 寒さを感じづらい身体というのは便利だけど、皆と同じ感覚を共有できないのは少し寂しかったりする。


 実際、私だけ少し違う所に居る。

 ここに居る仲間たちは全員人間なのに私は亜人の姿になってしまった。この耳と尻尾が何よりの証拠だ。ルミナの力を使役して、ここに居る誰よりも強くなった。

 これは恐らく女神に転生させられて、その時に貰った物が原因だろう。


 ならきっとこの力は私にしか使えない。

 一人だけなんだかズルをしている感じだけど、私はこれを皆のためになるように行使する。

 だからこうして尻尾を触られるのが嫌なのに暖まるために貸している。しかし……2本の尻尾がやたら湿っている。


 誰か寝ている間にヨダレを垂らした……?


 炎で蒸発させておこう……。本当はヨダレかどうか確認したかったんだけど、知らない方がいい気がしたので何も見ずにした。

 ちなみに濡れていたのはフーリアとサツキに貸した尻尾だった。


 またすぐに尻尾に抱きつかれてしまったので、同じようにならないことを願いながら、これからどうするのか確認を取る。

  

「はぁ……それで、ここからどうするの?」

「あ、ああ……マツバどうにかできるか?」


 サツキがマツバにそんなことを聞く。


 2人は仲が良いからお互いの能力は大体把握している。だけど私達はマツバの能力を全然知らない。

 思えば関わってきたのはサツキばかりだった。

 いつもストーカーされて、どこにでも出てくるサツキとは違ってマツバはあまり行動力が無いように見える。

 そもそも面倒くさがり屋だからイチイチ動きたくないのかもしれないけどね。


 ショナもユウリに似たマイペースな人って言っていたし。

 

「あの冒険者を辿ればいいんだろ?」

「そんな事できるの?」

「俺は魔力を記憶するのが得意で魔法を発動した者の魔力を追う事ができる。範囲に限界はあるが、俺のサーチの範囲は尋常じゃないんだ。あまり自分では言いたくないけどな」


 普段大人しくて静かな人のその言葉だけでその魔力探知の範囲の広さがどれほどなのか興味が湧く。

 マツバはとても自信に満ち溢れている……おそらく彼の特技なのだろう。まさかサツキと2人揃ってストーカーの才能があるとは思わなかったけど。


 そんなマツバの言葉に違和感を覚えたのかユウリが問う。

 

「あれれ、魔法の発動……?あの人達は魔法なんて使ってました?」

「……ユウリも感じなかったか魔力」

「微弱な……人から発せられる程度のモノしか……でもそれは魔法を発動したわけじゃないですよね?」

「微弱……確かに弱かったがアレは……」


 魔力か……。

 

 確かに微弱な魔力を感じた……確か一人の冒険者がこちらを睨んでいた時だ。だけどそれは魔導士が常に放っている微弱な魔力のような小さなものだった。

 しかし確かに腕に自信のある魔導士なら魔力を完全に消すことができる。


 こんな依頼を受ける魔導士、それもたった3人チーム。

 あの中だとサツキを吹き飛ばした男がB以下でアーティファクトを使う剣士。後の2人がAランク。片方が魔導士で片方が剣士。


 魔導士は私を睨んでいた奴だ。あの人が魔法を使っていたのだろうか。

 

 Aランクの冒険者が自分の魔力を完全に消せないというのは違和感がある。

 魔力を微弱でも発していると魔物に感知される恐れがあるからだ。


 それにあれほどズカズカと歩いて行って問題がないのも引っかかる。


「まあ考えても分からないし、あの微弱な魔力なら追えるぞ」

「近いのか?」

「いや、相当遠い。急ごう、こんなに快晴だから多少急いでも迷子にはならないだろう」

「そうだな足元に気を付けつつ、急ごう!」


 距離はかなり離れているみたい。早く行かないと先に討伐されてしまう!!


 私達は足元に気を付けながら進んで行く。

 

 一面が白銀の世界で自分達がどこへ向かっているのか全然分からない。

 帰りが不安だけど、そこはマツバの力でこの距離からスノードロップの魔力を感知できるのでそれを辿ればいい。

 

 あの人の魔力は常に強力に放たれている状態だからね。穏やかな人だけど、多分ジャスミンよりも強い優秀な魔道士だ。


「そろそろ見えるぞ」


 4時間くらい歩いただろうか……。

 太陽の位置は私達の真上に近づいているモノのその距離はまだある。

 

 10時から9時くらいだろうか。

 起きたのが相当早かったのでおそらくそれくらい、雪山もこの世界では高い場所に位置するから太陽が見えるのも早い。

 

 今は快晴だけど、山の天気は変わりやすい。


 ちょうど魔力の感知できるところに着いたみたいだけど、帰りの事も考えて早く終わらせないとね。

 

 そこは大きな穴の開いた空間だった。

 まるで隕石でも振って来て落ちたかのような、暗い大きなクレーターがある。中は暗すぎて何も見えない。この中じゃないと願いたいんだけど……。


「この中だな」

「おぉ……見えないぞ底が」

「いや……これは多分そこまで深くない」

「どういうことだ?」

「それは魔力が……なっ!!まずい伏せろ!!!!」


 マツバのその怒号を聞いて私達は瞬時に穴を覗いていた頭を引っ込める!

 

 その瞬間、その穴から大量の水……いや、熱湯が空を貫通する。

 

 滝のような勢いの水が横に凄まじい勢いだ!!……こんなのまともに当たったら死ぬ……!!


「一体に何がいるんだ!?」


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