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第185話 変化


 花を背負った亀を討伐するため、私達は小さな雪山へ入っていく。


 視界は吹雪に覆われ、前進するのがやっとの過酷な道。

 私の獣人の身体を持ってしても苦しいのに他の5人はちゃんと付いて来ている。


 足を雪に捕られて動きにくく、吹雪で視界が見えにくいから崖などに気を付けなくちゃいけない。


 私の場合は逆にそれだけを気を付けていればいい、身体は元々熱いし、丈夫な身体になっているので人間の時よりは遥かにマシだろう。


 一番身体を鍛えているであろうマツバですらこの環境の過酷さを嘆いていた。


「くっ……なんて吹雪だ‼︎」


 そんな魔導騎士(エーテルナイト)でも進むのが大変な道のりだというのに、さらにその前を星のかけらの冒険者たちが行っている。

 あんな荒くれ集団なのによくそんなに進める……。


 ただの吹雪だけなら、どうにかなるんだけど、6人で行動しているから1人でも離れないようにしなくちゃいけない。

 そのため、私たちはゆっくりと移動している。


 一方で向こうは3人のパーティだ。


 1人は最初に花園へ殴りこみに来てサツキを吹き飛ばした男だ。

 そんな男は後から来たAランク冒険者2人の盾になっている。

 

 上下関係というやつだろうか?あんな粗暴な人でも従わないといけないなんて組織というのは大変だ。

 

 それにしてもまるでどこへ向かえばいいのか分かっているみたい。既に地図を広げてもどこに居るのか分からず、前進するしかない。

 すぐに依頼へ行かずに明日まで待ってもらうべきだった……もうそろそろ日が暮れる。


「まずいあいつらペースを上げてる‼︎」


 そんな中、星の欠片の3人はさらにペースを上げて行く。吹雪のせいで視界が悪くてよく見えないんだけど、このままだと見失ってしまう。

 

 しかしかといってこれ以上スピードを上げると遅い人は遭難することになる。


「うっ足が‼︎」

「ユウリ大丈夫?」

「うぅ……私のことはいいから先へ行って‼︎」

「そんなダメだよ‼︎」

「この重い身体じゃなければ……」

「ユウリの身体はふわふわで気持ちいからそれでいいの‼︎」

「えへへ、そうかなぁ〜?」


 切羽詰まった状態ではあるものの、ショナとユウリはいつも通りだ。

 ただ、残念だけど件の魔物と最初に出会うのは諦めた方が良さそうね。


 しかし、いくら人数が少ないからってあんなペースでよく進めるというか……。

 

 命が惜しくないのだろうか、それとも……。


 冒険者だからって命を軽んじている。あのあとからきたAランクの2人はなんだか嫌な感じだ。

 追うのは諦めて私たちは、自分たちのペースを保ちながら進む、そう決めた時だった。


 姿が見えなくなりそうな瞬間、後から来た2人の冒険者の内1人が私の方を睨んだように見えた。

 吹雪を凌ぐためにマントを羽織っているので顔はよく見えない。さらにこの視界の悪さじゃマントがなくてもわからないだろう。

 

 だけどなんだろう、あの人のことを私は知っている。そんな気がした。


 しかし、彼らのペースがあまりにも早くて既に猛吹雪でギリギリ見えていた姿が見えなくなる。


「俺たちはゆっくり安全に行くよ」


 サツキは私達に急がないようにと警告する。そして無理をしないようにと言ってくれている。

 その言葉に甘えてゆっくりと目的地まで進む。


 確か火山の近くだったはず。


 スノードロップの街から見える所にはあるんだけど、いざ歩くととっても遠い。

 さらに吹雪も勢いを増している。

 この依頼を受けた時には既に夕暮れ時で既に日が沈みかけている。


 そんな時間なのに向かったのはこの戦いが早く討伐した方が勝ちという理由から、街で休んでから行ってもいいというルールだったんだけど、星の欠片の人達は御覧の通り我先にと雪山へ入った。

 

 そのせいで追わなければいけなくなった。


 しかしもう視界も体力も限界……。


「今日はここら辺で休むか」

「いやいや、猛吹雪の中だよ?せめて洞窟のあるところへ」

「それには及ばないよ」


 サツキがそういうとその視線はマツバへ向いた。


「はいはい」


 マツバとサツキは目配せで何かを伝え合っているみたい。

 どうやら魔法を使うみたい。マツバもサツキと同じように剣を持っているから剣士なのかと思ったら魔法の方が得意だという。


「吹雪を遮る小屋を雪と氷で形成する!」


 マツバの言う通り雪と氷を使ってカマクラを作る。

 中に入ると吹雪を遮ることはできるものの、狭いし皆は寒そう……。

 

「ううう……風は凌げるけど寒いね」

「仕方ない……」


 ユウリは氷の家の周りに大地を操る魔法で岩の壁を作る。

 これでほぼ完璧に風は凌げるけど、根本的に暖かくなるわけじゃない。


 そんな状況の中、全員の視線が私へ注がれる。

 いや、私というか私の尻尾だ。


「わかったよ。使っていいから」


 尻尾を5人に貸してあげて、今日は早めに就寝する。

 だけどギチギチで隣にフーリアとサツキが居てなんだか落ち着かない。

 

 何故かドキドキする。


 フーリアと久しぶりにこんなに近くに居るからだろうか。それか……。


 そんなことを考えていた時だった。


 尻尾を5本皆に貸して、私は6本ある尻尾の最後の一本を頭に乗せている。

 つまりこれで全ての尻尾を使っているはずなのに……何故か尻尾の付け根から妙な違和感がある……?


「なんだろう……これ」


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