第181話 ギルドマスターの対面
勝負は私達がこの街へ来てまだ2時間も経っていないのにすぐに行われる。
あの後星の欠片のギルドへ戻って行った星の欠片の男は少ししてまた花園のギルドの扉を強く叩いていた。
当然その男では今の頑丈なギルドの扉を破壊することはできない。それは先程、扉が耐えていたのが証拠だ。
しかし外から嫌な事が聞こえる。
「それでは、シリウス様よろしくお願いします!!」
さっきの男の声が聞こえたかと思ったら、扉を叩く音が止んだ。
誰かに何かをお願いしていたみたいだけど……一体何をするつもりなのか。
私達には到底予想できない、しかしスノードロップは何かを察しているようだった。
「シリウス……か!!」
「ちょ……お姉……マスターどうするの!?」
「また扉を破壊されるのは癪だから……それにこうした方がアイツも乗ってくるだろうし」
「え……ってまさかお姉ちゃん!?」
何かしようとするスノードロップを妹のフローレが止めようとしたが、その当の姉は見向きもせず、扉の方へ向かって跳んでいく。
その時ギルドの外、扉の向こう側からも何やら叫び声が聞こえてくる。
「突き破れ、聖剣星崩し……!!」
扉の向こうから凄まじい力を感じ取る。まさかギルドの扉を壊すつもり!?
星の欠片の冒険者は皆、普通に扉を開ける事ができないのだろうか?呼んでくれたら開けるのに……。
そんなことを考えているとギルドの扉の前へ向かったスノードロップは魔法を展開する。
その速度と規模は圧倒的だった。
「雪鏡」
両手を広げるとスノードロップの前に巨大な雪の鏡が現れる。
雪の鏡はギルドの扉にぺったりと張り付く。
その次の瞬間シリウスの剣が扉の衝突した音が響く。
ドーンッ!!
低い爆発音が響いたかと思ったら次の瞬間、雪鏡が光出す。
「反射しなさい!!」
キィィィィィィイイイインッ!!
爆発音の後にそんな甲高い音が雪の鏡が放たれる。
するとあんなに大きな爆発音は急に全然聞こえなくなる。
その代わり次の瞬間には外から悲鳴が聞こえてくる。
「うわああああああああああああっ!?」
「ぎゃあああああああああああああ!!」
男女含めた沢山の人の声が聞こえる。確か反射したとか言っていたね。
あの凄まじい力を全て反射したらその反対側に居た人達はどうなるのか予想できる。
やったわねこのギルドマスター。
「お姉ちゃん!一般の人を巻き込むつもり!?」
「外には星の欠片の馬鹿しかないから大丈夫よ」
「だとしても……やりすぎ」
「計画をより成功させるためよ~。いいでしょ?」
「まったく……」
シリウスという声からしておそらく女性だけど、彼女の事を知っていて攻撃を反射したのならもうそれは確信犯だろう。
計画というけどそこまで緻密な計画とは思えない。
相手の行動に依存する一手。決まればうまく星の欠片を失墜させられるが、それが決まるかは相手次第という。
事前に話を聞いていたけど、成功する保証はなかった。
「さて、それじゃあお楽しみの外を見てみようか!」
マスタースノードロップがギルドの扉を開いたその瞬間だった。
外から扉を開けたと共に剣閃が見えた。
まさに一瞬の出来事……。
凄まじく濃い殺気を感じたかと思ったら、その次の瞬間……マスタースノードロップの頭と胴体が切り離された!?
「は……?」
その場に居た誰もが驚いていた。
あまりに唐突な人の死……。それもそれはこのギルドのマスターを任される実力者。
ギルドの扉を開くとスノードロップを殺した本人の姿が現れる。
白い髪に白い瞳の美しい女騎士だった。
「面倒な事をしないで、マスタースノードロップ」
「あらら~?ご挨拶ですね。マスターシリウス」
え……?
シリウスの問いに返答したのは落とされたスノードロップの頭だった。
彼女の身体は頭を拾うとそれを両手で抱えたままシリウスと対話する。
とても奇妙な光景だ。
「ギルドの子達を怖がらせてしまうでしょう?」
「お前がその程度で死なないのは分かっていた。それにどうせ避けられたのにあえて避けなかった。違うか雪女」
「さすが、よく私を理解していますね……ふふふ、あなたは私の魔法を一切知らなかったのね?アレの影響で忘れてしまったのかしら?反射されて大切な仲間が外で気を失っているわよ?脳筋女」
「殺す」
明らかに不仲なのが分かる会話。
しかし驚きなのはスノードロップが頭を落とされても死なないという事。そう言えば首が落ちた時に一切血を流さなかった。
後、リリィが言っていたっけ。ハーベスト帝国のギルドマスターは皆亜人だと。
さらにスノードロップは妖魔だと言っていた。
その種族の特殊な力を使ったんだろう。
「まあいい、勝負だ。そこのガキ共を寄こせ」
「何をするのか教えてくれないかしら?」
「お前の駒はそのガキ共しか使わないだろう?お前には不要じゃないか」
「そうは行かないのよ。私の大切なギルドの仲間を危険に晒すわけにはいかないもの」
「危険……?私のギルドがか?」
「だって扉を開けたら即斬りかかってくる野蛮人のギルドでしょ?」
「……」
スノードロップはこれでもかとシリウスを煽る。
「説明は向こうでやる。ついてきたければ来ればいい。最も雪女の貴様が我がギルドへ入ってどんなことを言われるか知らないがな」
「ふふふ、ご忠告どうも……。妖魔を良く知らない無知なモノ共に教えてあげるチャンスが出来たわ」
「ふん」
そんなこんなで私達はギルド星の欠片へ向かうのだった。
ギルド間の距離は目と鼻の先だというのにマスター同士の距離は遥かに遠いみたいね。
私たちはそんなギルドマスターの喧嘩に巻き込まれるのだった。




