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第179話 差


 ギルドの掃除は比較的に早く終わった。


 ボロボロの家だったから掃き掃除やレンガのひび割れなどを直すのに相当な時間を掛ける事になると思っていた。

 

 しかしほこりなどは魔法で水や風を使えば簡単に流せる。レンガのひび割れに関しては大地の魔法を使えるギルド団員の人達が補強した。


 なかなか繊細な作業なのに完璧にやり遂げるその手腕を見て一番驚いていたのはユウリだ。彼女もまた大地の魔法を使う者として興味があるみたい。

 

 ユウリの魔法は強力だけどすごく派手で魔力の消費も多い。繊細なコントロールは苦手なのが分かる。

 もしここでそれを補う方法を見つけられたら、少し早めの鍛錬になるだろう。今、ユウリはその大地の魔法を使う冒険者に色々と教わっている。


「こんなに早く終わるなんて……私達の力そんなに要らなかったでしょ?」

「私達……?フーリアさんはほとんど何もしていなかったわよ?」

「ルークがやめろって言うからでしょ!!」


 だって、もし物とか壊したら弁償しなきゃいけないし。


 フーリアの言う通りこんなにすぐに終わるのなら私達の力は絶対に要らなかった。

 決してギルド団員の人数も少ないわけじゃない。皆、優秀だ。


 そうなってくると疑問はどうして私達に協力させたのか。


「ん~それは楽だからですよ」

「本当にそれだけ?」

「あはは、察しが良いですね」

「人を見る目はある思ってます」


 と凄く強気に出たんだけど、この狐の耳には細かい音まで拾える。嘘を付く人の心臓の鼓動が少し早くなるとかね。

 だからスノードロップが嘘を付いているのは分かっていた。


「さすがです。しかし協力して頂けるのならこれからすることに従ってください」

「何をするかによります!いい加減に目的を……」

「あら?言っていませんでしたっけ?それは――」


 スノードロップがようやくその作戦を教えてくれるという瞬間だった。


 ドンドンドンドンッ――


 直したギルドの扉が強い力で叩かれている音が聞こえる。

 というか扉を叩いている人は壊そうとしているみたいだけど……全然壊れない。

 私達が魔法などを使って頑丈に壊れにくくしたからだろう。


 ちなみにそれをしたのは主にこのギルドの人達だ。

 

「おい!何をしている!!」


 壊すのを諦めてギルドの扉を普通に開けて入ってくる。

 誰かと思ったら先ほどギルドへ入ってきた荒くれの男だった。今回は連れに女性冒険者が居た。

 

 筋肉質なゴツゴツの身体だけど、胸は豊満で軟からそうな人ばかりだ。


「どうしました?」

「どうもこうもない!どうしてあのオンボロギルドがこんなに掃除されてんだよ!」

「どうしてだと思いますか?」

「ずっと同じ状態だったんだ。お前らにそんな力はないはず。じゃなきゃ、何ヶ月も放置するはずがねぇ!!てことは――」


 星の欠片の男性冒険者は私達の事を睨む。

 その瞬間、スノードロップが不敵な笑みを浮かべたのを私は見逃さなかった。


「お前らだな!!」

「いやいやいや、掃除は皆で……」


 ショナが訂正しようとするが、それを遮るようにスノードロップが割って入る。


「凄いでしょう?ジャスミンの街から遥々来てくださった優秀な冒険者達です」

「ジャスミン……だと?」


 現在、ジャスミンの街の星の欠片のギルドは解体された。

 

 そのことは同じ星の欠片である彼らも分かっているはず……。

 ハーベストを手に入れようとしている組織が一つの街から撤退することになったことに触れるなんて相手の地雷を踏んでいるのと同等だ。


 何を考えて居るのこのギルドマスターは!!


「そう言う事か……自分達じゃ何もできないからと助けを呼んだわけだ!」

「うふふ、花園は仲間想いのギルドなんですよ」


 何が仲間想いだ。


 私達に相手のヘイトを集めて、視線を集めさせているだけじゃないか!!

 

 こんなの仲間でもなんでもない。

 こうなったら言いたいことを言ってやる!!


 そんなことを考えて居た時だった――。

 スノードロップの妹、フローレが私の行動に気づいていち早く止めに入ってくる。


「黙っていて、そしてマスタースノードロップを信じてください」

「……」


 そんなことを言われてもこんな状況にされて黙っていろと……?


 皆、勝手に怒られて困惑している。掃除なんてほとんどここのギルドメンバーがやったんだ。


 すると怒り狂う男性冒険者は再びサツキを睨みつける。

 

「勝手な事を……おい小僧!!」

「な、なんだよ……」


 またもターゲットにされたのはサツキだった。

 先ほど吹き飛ばした相手だから弱いと思っているんだろう。


「俺達と勝負しろ」

「はぁ?訳が分からない」

「俺達が勝てばお前ら6人はこの街から出て行け!!」

「……話にならないな」

「アァ!?聞けないってのか!」

「俺達が勝った場合の話をしてない」

「お前達が勝つことなんて無いんだから要らないだろ!」


 星の欠片の男性冒険者はそう言うと笑い始める。

 それにつられるように女性冒険者達も笑う。

 男性冒険者も女性冒険者も下品な笑い方だ。


 そこへ何とも思っていないような穏やかな様子でスノードロップが訪ねる。


「ところで……その大人な女性冒険者達をどうして連れてきたのですか?」

「お?そりゃ勧誘を断った小娘共に見せつけるためさ」

「見せつける?」

「ああ、星の欠片にはこんないい女が居るってな!!スタイル抜群で胸もお前らなんかより比べ物のならないってな!!」


 そんな理由でカチコミに来たの!?

 

 く、くだらない~~~~!!

 どんだけ暇人なんだよこの人!!


 きっとフーリア達も呆れている。


「は?」

「誰の胸が比べ物のならないって!?」


 と思ったらフーリアとショナは相手の発言に何やら思う事があるみたい。

 それに勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべる星の欠片の男性冒険者……。


「お前らだよ。そのデブはどうでもいい……獣人の女はそこそこあるみたいだが……お前ら二人は……ふっ」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?勝負よ!!」

「お前らぶっ飛ばしてやる!!」


 2人はまんまと彼らの挑発に乗ってしまった。

 

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