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第178話 動き出す花園


「サツキ、大丈夫!?」

「あ、あぁ……ありがとう楽になったよ」


 結構派手に吹き飛ばされたはずなんだけど……それにしてはそこまで怪我を負っていない。

 普段のサツキならあんな蹴りくらい避けていたはず、わざと蹴られたのか。そして蹴りがぶつかる瞬間に後ろに跳んで衝撃を抑えた。

 

 そのうえで壁には派手に激突した。だけど当然痛みも最小限に抑えたはず。


「わざとですね?」

「まあな。あそこで避けたら。調子に乗ってるとかケチ付けられて喧嘩になる展開だろ?そんな物語を沢山読んでたし、あっ衝撃を抑えるのもそれで知識を持っていたからだな!」

「ふーん、まあ無事ならいいけど」

「ちょ……もう少し頑張った戦士の事を――」


 しかしその言葉を最後まで言わせる前にフーリアが私をサツキから引き離す。


「もういいでしょ、わざとなら自業自得よ」

「いや、蹴られのはマジだぞ」


 どこへ行っても何があっても相変わらずのこの会話には気が抜けてしまう。

 フーリアも私の尻尾で温まりたいからって無理やりすぎるんだよね。

 

 サツキに治癒の魔法を使う事に夢中でフーリアの側を離れてしまった。

 フーリアは尻尾を再び掴んでモフモフしながらサツキと言い合っている。

 

 そんな2人のいつもの言い合いを他所にショナがスノードロップの側へ寄る。

 

「マスタースノードロップさん!あのクソムカつくムサイ男は何ですか?」

「ショナちゃんだっけ?女の子がそんな言葉を使っちゃダメよ~」

「でもスノードロップさんもババアって呼ばれて怒ってましたよね?」

「……うふふ」

「あっ!!すみませんでした!!」


 雰囲気だけでスノードロップが怒っているのは分かる。

 そしてそんな地雷を簡単に踏んでしまうショナも大概だ。

 

 それにしてもまさか星の欠片にこんないいようにされている状況とは……。ドアの破壊を見るにギルドのレンガが割れているのは恐らく彼らが原因だろう。

 

 よくよく見てればギルドはボロボロなのにスノードロップは身だしなみなど、とても整っている。それどころかこのギルドに居る人達は服などや身体に汚れが無い。

 

 あくまでこのギルドの建物だけボロボロで、それ以外は普通だった。


 身だしなみには気を遣う余裕があるけど、あのようなカチコミが何回もあればギルドを直そうという気も無くなるだろう。

 現に壊されたドアは金具で再び止めずに魔法を使って少し補強する程度。

 

「まあ彼らはそれが目的なのでしょうね」

「というと……?」

「私達のギルドを陥れて失脚させようという魂胆ですね」

「それは嫌ですね。あのギルドにこれから来る依頼を任せるのは心配ですし」

「それだけじゃないのよ」

「え?」


 まだ何かあるのだろうか。

 

 そもそもあんなギルドに任せるのは全てが不安でしかない。この街はどこかジャスミンの街で星の欠片が支配していた地区を思い出させる。

 あそこまで酷くないものの、その片鱗は見える。


 そういえばこの街の領主は花園のそれぞれの支部のギルドマスターだっけ……。

 

 もし、このギルドが失脚することになれば……まさか!!


「彼らは私から領主の座を奪う事を考えているみたいね」

「そういうこと……しかしそんなことをして何の意味が?」

「さぁ?ただ、なーんか妙な事を言っていたのを覚えてるわ」

「妙なこと?」

「魔法の何かの拡大かどうとか」

 

 魔法の拡大……?間に入る何がは分からないけど、ロクなことではないんでしょうね。星の欠片なら魔王教団と繋がっているだろうし……。

 

 どうやら私のこの身体について聞く前にやるべきことがあるみたい。

 魔王教団となれば放置できないしね。


「それで私達はどうすればいいのよ」

「話が早いわね」

「ルークの身体で何が起こっているのかを知るためには必要なんでしょ?」

「それを確実に治せる方法は知らないわよ?」

「それでも何か心当たりがある……違う?」

「まあね」


 心当たりがあるのなら試してみる価値はある。

 なんせ私達はこれ以上どうすればいいのかもわかっていない状態なわけだしね。

 本の一筋の手がかりでも大きな収穫になるだろう。

 

「それで何をすればいんですか?」

「助かるわ!それじゃあまずは……お掃除しましょうー!」

「え?」

「あなた達も手伝いなさい!」


 スノードロップはそんなことを言うとギルド団員を集めてギルドの掃除を始めようとする。

 最初はスノードロップの命令に困惑していたものの、彼女の目を見たギルド団員はたちまち掃除に精を出し始める。


 何かの術……?いやでもそんな風でもない。これはどちらかというと信頼による行動……?


 スノードロップの意図を汲んでその指示に従っているように見える。


「はぁ!?掃除してもまたアイツらが来たら……」

「いいからいいから!」

「なんなのよ」


 フーリアは凄く嫌そうな顔をしている。

 仮にも貴族なので掃除なんてしたくないんだろう。


 フーリアが寝ぼけている時に彼女の部屋を見た事がある。

 部屋を出て顔を洗う時にドアを開けっぱなしにしていて、その時に見えた部屋の中は……まあその……最悪だった。


 現実から目を逸らしたくなるようなお部屋……いや汚部屋だったんだよね……。

 私はそのことを思い出して掃除をしようとするフーリアを制しする。

 

「フーリアは休んでていいから私達に任せて」

「なんでよ!?」


  フーリアは納得していないようだけど、あの部屋を維持ている人にそうじは任せられない。

 フーリア抜きでボロボロのギルドの掃除だ!!

 

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