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第176話 フローレ


 スノードロップの街にあるギルド花園の支部へ向かうために馬車を下りた時、馬の操縦をしてくれていたサジタリオンは疲れている様子だった。

 

「ふぅ……それじゃあ僕は少し休ませてもらうね」

「何時間も馬に魔法を掛けて、手綱も握っていただいて……すみません」

「僕は大人だからそんなことはいいんだよ!それより後は若い子達で頑張ってね。何かあれば大声で叫んでー!」


 サジタリオンはそれだけ言うと豪華な馬車の中へ入っていく。

 夜中辺りには皆、睡眠を取っていたのにサジタリオンは1人でずっと馬の操縦をしてくれていた。速く移動する馬車を揺らさせず、私達に配慮してくれていたんだろう。

 

 ここはゆっくりと身体を休ませて欲しいところだ。

 

 私達はリリィさんから頂いた地図の通りに花園の支部へ向かう!


「てかルーク、よくそんな汚い地図読めるね」

「中学生の時とか字が汚い人のを見る事もあったし」

「……何の話?」

「あぁ……本で読んだ話、それより着くよ」


 あんな清楚で綺麗なリリィの字が汚いのは予想外だったけど、私はそれを解読することができた。

 汚い字にもその人の個性やこだわりがあるのでそこを見つけると案外読めるんだよね。


 そんな汚いミミズのような地図を頼りに花園の支部へあっさり着いたが……そのギルドの様子に私たちは言葉も出なかった。


「何ここ……リリィの字に負けない程、汚い家ね。で?どうしてこんなボロ屋の前で止まってるの?」


 フーリアは周りの事を気にせず、思ったことを口にする悪い癖がある。

 しかしここに居る6人全員がそれを思っているのは確かだろう。

 

 割れたレンガ、それを覆うようにツタが伸びていて手入れされていないのが明らかにわかる。


 屋根の上には花を模した風車のようなモノが見えるんだけど……花を模した風車は壊れていて機能していない。

 そもそも雪が積もっていて動かないように見える。雪掻きすら行き届いていない。


 なんだこの家……。


 私はリリィから貰った地図を確認する。


「出入口があっちで……こうだから……それに花の風車……」


 地図を辿りながら見ていくけどやっぱりここで間違えないんだよね……。

 まさかここ……?そんなわけないよね?


 そんなことを考えていたらおもむろにショナが反対後方を指さしながら叫ぶ!!


「こっちじゃないかな!?」


 ショナが指を差した方向には私達が見ていた建物とは違い、綺麗で大きな整った外観の建物がある。

 花の風車のような特徴はないけど、こっちが花園のギルドだと言われてもおかしくないか。

 

 いや、でも地図を見るとそこも確かにギルドみたいだ。

 しかしギルドはギルドでも……。


「ショナ、看板読んでみて」

「え?冒険者ギルド星の……欠片……………………」

「じゃあこっちのボロい家は?」

「冒険者ギルド花園の支部…………フローレ……………………」


 つまりそういうことらしい。


 どうやら北の街では星の欠片の方がギルドの大きさは勝っている。

 いや大きさだけじゃないのかもしれない。お金とかギルドの人数にも差があるのかもしれない。


 まさかだったけど、ボロ屋が私達の目的地であることに変わりはないみたい。


「何、人のギルドの前で悪口言ってるわけ?」


 そんな絶望していた私達の後ろから女性の声が聞こえてくる。

 振り返るそこには雪のような白い肌の女性が立っていた。ゆらゆらと緩やかに降っている雪と相まってとても綺麗だ。

 

 雪も滴るいい女……。


 そう口にしてしまいそうな程の美人。

 こういう綺麗な人と話したことがほとんどない私……しかし、リリィさんからの手紙を渡されたから見せないとだよね!!

 

「あ、あの……」

「何?」

「て、手紙です……」

「えっ」

「え、えっ?」

「あーラブレターとかやめてよ!私、子供には興味無いんだけど!」


 どうやらリリィからの手紙を渡そうとした私がラブレターを渡しているように見えているらしい。

 

 すごく綺麗な人を相手にしているのでもしかしたら顔が赤かったのかもしれないけどそんなわけがない。


 少し面倒だけど訂正しよう……そう思っていた矢先の事。

 

 フーリアが私の前に立つ!!

 

「はぁ?ルークがアナタにそんな手紙を書くわけないでしょ」

「はい?なんですか初対面なのに!」

「それはこっちのセリフよ!」

「はぁ!?人のギルドの前で悪口を言って……よく言えるわね!!」


 フーリアに負けじとも劣らない言い合いをしている。

 

 私ならあのフーリアのきつい言葉で1週間は手が震えて剣を握れなくなりそうなのに!!


 しかしこのままだと話が進まないどころか帰らされる可能性がある……。どうしようか悩んでいたその時、良いタイミングでギルドの扉が開いた。

 

 人の息遣い……誰かいる!!


「どうしたのフローレ~?あらその方達は?」

「お姉……コホンッ!マスタースノードロップ!この者たちが私達のギルドにケチを付けてくるんです!!」

「ん~?あっ……」


 スノードロップは私の持つ手紙を見て驚いていた。

 しかし直後、冷静になってギルドの中へ入っていく、その扉越しに――


「入っていいですよ」

「ちょ……マスタースノードロップ!!」

「お姉ちゃんでいいのに」

「ひ、人前ではこう呼ぶって決めてるの!」

「そ、ならその人前くらいなら冷静に判断しないとね」

「え?」

「その子の持っている手紙……マスタージャスミンの判が押されていますよ」

「なっ!?ちょっと貸して!!」


 フローレはそう指摘されると私から手紙を強引に盗る。

 何という早業だ。とっても綺麗な女性なのに言動や行動が荒々しい。

 フローレは手紙を確認してそれが本物だと確信する。


「……入りなさい」

「い、いいんですか?」

「その女は気に入らないけど……マスタージャスミンの紹介なら仕方ないわ」


 こうして私達はギルド花園へ足を踏み入れるのだった。

 その際にフーリアとフローレの睨み合いに肝を冷やしながら……。

 

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