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第175話 平穏な旅


 スノードロップの街。


 そこは魔物の数が少なく、比較的気候が穏やかなハーベスト帝国の他の街々と比べて珍しく寒いという。


 多くの魔物と凍えるような寒い天候が一年中続く場所とリリィが言っていた。

 

 もっと北の方から狂暴な魔物が下りてくるので北へ行きすぎないようにとも注意された。

 頭の中でリリィに言われた子を思い出しながら何故かまた最熱した馬車酔いを我慢する。こういう考え事をしていると少しだけ気が紛れる。


 そんな中、ショナ達が突然毛布を取り出して中に包まる。


「うぅ……と、突然寒いぃ~!!」

「確かに温かい気候のハーベスト帝国にしては珍しいな」

「サツキ様も寒いんですね」

「あ、サツキで良いですよショナさん」

「それはどうもどうも……じゃあ私もショナで良いです~」


 2人とも毛布に包まりながらそんな可愛らしい会話をしている。なんだかおじいさんとおばあさんが話しているようなその様子に思わず笑ってしまう。


「あ~ルーク笑った!!あっ……!!!!!」

「うるさいなぁ~ショナの声、大きいのよ!!」

「ごめん、フーリア……でも私はフーリアが驚くあることに気づいてしまったの!」

「……馬鹿馬鹿しい事なら許さないわよ」

「それはね。ルークの尻尾がとっても温かそうという事よ!!」

「は?何そのくだらな――ッ!!」


 聞いた直後につまらなそうな顔をしていたフーリアだが、言葉を返す前に何かに気づいたみたい?

 

 急に考えを180度、変える。


「確かに、これだけ寒いと緊急時の時に剣を抜けなくなるかもしれないわ」

「え……じゃあ毛布使いなよ。余ってるよ?」

「……だけどその尻尾に包まれば私の手も暖かくていざという時に動くわ!」

「なんでリリィさんに防寒着を借りなかったの?」

「…………いいから尻尾貸してよ!」

「手つこっむんでしょ?」

「何?嫌なの?」

「……尻尾ってなんか触られると不安になるんだよね。握られたら多分痛いし」

「あ、安心して優しくするから……ふふ」

「……」


 私が尻尾の毛で暖めてあげる側なのになんか変な方向に話が言ってないかな。

 

 というか毛布はまだ余っているんだからそれを使えばいいものを……。

 しかしフーリアだけじゃなくて、凄くキラキラした目で他の子達も私の尻尾を見ていて正直怖い。

 

 確かに暖かさ保証する。


 何せ私は炎の魔導士なわけでそのせいか昔から体温は他よりも高い。

 これもバレンタインの血筋のせいだろうか……あ、でももうそれは関係ないのか。

 

 だから必然的に私に繋がっているこの尻尾も暖かい。

 

 信頼できない人なら嫌だけど、皆の事は信頼しているし……少しくらいなら貸してあげてもいいか。

 尻尾の数は魔力を高めることで6本まで増やせる。


 出せる尻尾の数はあれから数日経つにつれて増えている。

 この姿になった時は1本だったんだけど、今では6本。そのせいでだんだん日常生活に支障が出ている。獣人用の服を着ているんだけど、尻尾の穴は1つしかなかったので無理やり開けたし……。


 一番大変なのは身体を洗う時……はこの一本のみで大丈夫だけど私には一つ懸念点がある。

 それは毎度綺麗に洗っているのはそのいつも出ている一本ということ、魔力を高めることで増やしたしっぽは果たして臭くないだろうか。

 

 とりあえず5人にそれぞれ尻尾を貸してあげる。


「あ、サツキはこっちのしっぽを使ってください」

「なんで俺だけ指定されてるんだ」


 サツキにはいつも洗っている方を与えた……。

 もしかしたら匂いが酷いかもしれないので、マシだと確定している方を貸しておく。転生する前は男でも今は女の子。


 匂いは女の子並みに気になってしまうんだ。

 それにしてもこの尻尾……何気に凄く伸びるんだよね。余った1つは私が枕代わりに使っている。


「おぉ~暖か……いやむしろ熱いくらい!!」

「これがルークの体温……へへ」

「でもこれに包まりながらご飯を食べるのは流石にダメだよね?」


 ダメに決まっている。

 いくらユウリでもそれは許さない。

 ちゃんと手入れをしているんだから汚されたくないし、こうして暖かいとか気持ちが良いと褒められるのは正直嬉しいけどね!!


 女子の反応は上々……一部凄い私の尻尾の匂いを嗅いでいる子が居るけど……まあいいか。

 サツキとマツバ様子はどんなものだろうか。


「……ふぅ」

「サツキ、気持ちが良いのは分かるがその声はキモイ」

「なんでだよ!!」


 ま、まあ気持ちいいならいいか。


 それにしてもこの尻尾にこんな使い道があったとは思わなかった。

 

 もしかして自由自在に動かしたら戦闘にも使えるのだろうか?


 尻尾に神経を注ぐとショナの優しい力とあまり包容力の無い感覚が伝わる。

 フーリアの方は……なんだか自分の身体の至る所の部分に擦りつけて……やめておこう。

 

 ユウリはおやつを食べられないので汚れないようにうつ伏せになって掛け布団のように使っている。


 なるほど……結構集中すれば尻尾の感覚が鮮明に分かる。

 戦闘で使えそうだ。


「うぷっ」


 そういえば馬車酔いの事を忘れていた……。

 

 私達はそんなことをしながら時間を潰しているとようやくスノードロップの街が見えてくる。

 雪の街というだけあってそこら中が白銀の世界に覆われている。とっても綺麗だけど……人が住むのは大変そうだ。

 私は街の家々の屋根に積もった雪を見てそんなことを考える。


 とりあえず街に付いたので馬車から下りようとした時、尻尾に激痛が走った!!


「いぎぃ!?何々?!」


 咄嗟に振りかえると強い力で私の尻尾をサツキ、フーリア、ショナが抑えていた。


「「「寒い!!」」」


 何を言っているんだこの人達は……。

 最初からその寒い街へ来る予定だったのに、それくらい覚悟していただろうに……。

 尻尾は意外にも長く伸びるだけで限界はある。その限界まで行くとただただ痛いだけだ。


「放して」

 

「「「嫌だ!!」」」


「はぁ……じゃあ掴んでていいから外へ出て」


「「「……」」」


 三人は仕方なく頭を縦に振った。

 

 いや、こっちが仕方のない気持ちでいっぱいだと言ってやりたい!!

 

 そんなこんなで平穏な馬車での旅は一旦、終わったのだった。

 

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