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第174話 次の街


 私の事で迷惑を掛けたくなかったんだけど、皆が北の街へ向かっても良いと言ってくれるのならそれに甘えよう。というかこの狐の身体にフーリアはどこか不満を感じているみたいなんだよね。


 言葉にしないけど、やたら耳やしっぽを睨みつけている。

 あのフーリアが耳としっぽなんかに靡くような可愛い感性を持っているとは思えないからね。

 

 本当はいち早く皆を強くしたい、強くなって生き延びる確率を少しでも上げるのが今は優先するべきなんだけど。

 逆にフーリア達は私のこの状態を元に戻すことに躍起になっているので鍛錬をしようにも熱が入らない可能性もある。


 しかしどこへ向かうにしても目的地を変更する以上はどういう所なのか聞いておく必要がある。

 

「ちなみにどんな場所なの?」

「その街はスノードロップって名前の街。冬に行くとそれはもう寒すぎて、私もモコモコの服を着こんでしまうのですが」

「そんなに寒いんだ?」

「まあ私が寒がりなのもありますが、中央都市より少し北の雪山に近い所にあるくらいだと思っていただければ……」


 一番最北端の街って言っていたけど、案外近い、しかも雪山の名前がここで出てくるなんて思わなかった。

 

 しかし雪が積もるような所を想像していたんだけど、寒がりの子がモコモコの服を着るだけで済むのなら案外温かいのでは?


「ハーベスト帝国は花の国とも呼ばれ、それはもうお花が沢山咲いているんです」

「街の名前も花ですしね」

「なのでお花が咲かない所には街が作られないんです」

「どういう拘り……。だから街がある最北端でも中央都市に近いのね」

「はい!ただ、大陸はもっと上まで続いているので最北端は未開地の雪山になっているそうです」

 

 私が発見されたのもそこらへんだろうか。

 まだ人が立ち入ったことのない未開地、ルエリア最強の魔導士2人が死にかけた大陸。

 いずれは私もそこへ行くのだろうか。


 いや、多分行かなきゃいけないんだろう。


「寒いので寒さが苦手な子はお洋服をお貸ししますよ~」

「は~い!借ります借ります!!」

「はいはい~ん~?ショナさんだけですか?」


 私は寒さに耐性があるのでいつも通りの薄着。肌を見せるのはあまり好きじゃないんだけど、これが一番戦闘時に戦いやすい。


 冬だけど、ミニスカートで腕も肌を露出させている。私の場合は寒さを感じず、女の子の細い身体を活かした戦い方をするのでこれが一番いい。


 だけどフーリアとユウリが拒む理由が分からない。


「私は寒さくらい余裕」


 フーリアは寒さには負けないーーという強い意志を持っているみたい……そんなんで冬の寒い地域を生き残れるとは思えないんだけど……。

 ちなみにフーリアは上は薄い服を着ているんだけど、下は長いズボンを履いている。

 こういうピチピチの服は足の長いフーリアだからこそ着こなせるんだろう。

  

 私は寒さを感じづらい身体だけど、周りの行き交う人々を見てみると厚着をしている人が多い。

 比較的温かい気候の国でも冬はやっぱり寒いはず。本当にフーリアはこれで大丈夫なのかな。


 ちなみにユウリはというと……。

 

「私はこの脂肪があるから大丈夫よ!」


 ユウリは大きなお腹を恥じるどころか見せつけてくる。

 自分の大きくて柔らかいお腹に自信を持っているみたい。……実際ショナには沢山褒められていて、大きなお腹に恥ずかしいという気持ちを一切持っていない。


 しかし魔法を使えば痩せる。逆にそういう時はどうするんだろ?


「魔法の使いすぎで痩せるのも大丈夫、手はあるから」


 ユウリには何か秘策があるみたいでその目は話している私じゃなくて、マツバに向いていた。

 どういう意図か分からないけど魔法を使う時が来なければ大丈夫なのかな。

 少なくとも目的は戦いに行くことじゃないし、あまり気にすることではないのかもしれない。


 それに――


「え、なにこれ」

「ショナさんは小さくて可愛いのでこのモコモコの服を!」

「可愛くて暖かそうだけど……」

「きっと似合いますよ!」

「あ、ありがとうございます……」


 リリィの満面の笑みを無下にできず、ショナはピンクのお花の柄が中央にデザインされた可愛い服を受け取った。

 正直子供っぽいんだけど……リリィはそう言うのが趣味なのだろうか。


 リリィが今来ている服も可愛い系なんだよね。


「それではこちらもどうぞ」


 リリィはそう言うと手紙を私の手に置く。

 当然そんなものを渡されて困惑しながらも問いかける。

 

「これは?」

「手紙です。マスタースノードロップへの紹介状です!」

「これをギルドマスターへ渡せばいいのね」

「はい!マスタースノードロップへ渡せばきっとお話を聞いてくれますよ!」

「まさかショナに服を持ってくるついでに?仕事ができる方ですね……」

「私はマスター代理なので!」


 えっへんッ!と胸を張ってそう応えるリリィは彼女の可愛らしさを引き出していた。

 

 仕事のできる美人な若いマスター代理か。

 これならジャスミンの街もしばらくは安泰だ。


 紹介状を貰ったのでありがたく受け取る。


「それじゃあ次の行き先はスノードロップでいいかな?」

「あ、でも急に変えて大丈夫ですかね?」

「いいよ。最優先は君だからね」

「それはどういう……」

「……まああの2人には僕から連絡しておくから」

「あの2人?」

「ハーベスト帝国の最強の魔導士と剣士」


 時間を指定してあるのなら絶対に遅れてしまう。


「時間は僕が何とか言っておくよ。だから安心していいよ」

  

 そこまでして私のためにしてくれるなんて良い人だ。

 これで心置きなく私達はスノードロップの街へ向かう事ができる……!!


 ここから普通に行けば2日程。

 サジタリオンの馬を使えば8時間くらいだという。


「それでも馬車で夜を越すことになるけど、中は快適だから安心して」


 さらに馬車の中も王族よりも上の身分である魔導騎士(エーテルナイト)だからこそ快適だ。

 この人は本当に火の打ちどころがない。後はアーミア戦で子供だからと真剣に戦えず、凍らされなかったら完璧なのに……。


 私達は早いリリィ達とのお別れをして北にあるスノードロップの街へ向かった。

 

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