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第171話 帝国へ


 合宿があるのは2か月後の冬休みからでエステリア学校の冬休みは今年だけ少し遅くなった。


 理由は魔王教団襲撃で2ヶ月程休学になったから。

 まるでそれを取り返すかのように勉学、実技の授業があり、とてもその合間に鍛錬を積む時間が無かった。

 

 おかげでギルドの依頼をこなすこともできず、Aランク試験についてもまだその話が上がってこない。

 学校が忙しすぎてそれどころじゃなかった。

 やっている事はいつも通りなのに、スパルタになっている気がする。

 

 またいつ来るかもわからない魔王教団と戦う事があった時にこの前のようにならないためだろうか。

 サジタリオンがそう言う方針に持って行ったのか、学校側も大変なんだろう。


 そんな2ヶ月という長いような短い期間を終えてようやく2月に突入した。


 冬休み前、体育館に全生徒が集められる。サジタリオン学長が休みの注意事項などを伝えてくれるみたい。体育館はどこよりも厳重になっていて防御魔法に覆われている。

 

 そういえばこの前のようにオリオンが挨拶の邪魔することは無かった。

 それもそうだろう。イブの時にサツキを相手にしてボコボコにされたのに、ここで大きな態度を取れる人間はなかなかいない。

 

 オリオンでもそこまで肝は据わっていなかったというわけだ。

 サツキに負けてからは何故かオリオンは大人しくなっていて、全くと言っていいくらい近づいてこなくなった。

 

 同級生の革新派の魔導騎士(エーテルナイト)も同様に何も無いんだけど、それはそれでずっと不気味だった。

 何を考えて居るのかと不安に陥りながらもここまで何事も無く来られたので無駄な心配だったけどね。

 

 ちなみにサジタリオン学長とはあの後も良く話すんだけど、ただの一度もオリオンからの謝罪を貰っていないと聞いた。

 

 冬休み前の挨拶が終わって冬休みに突入する。

 体育館の外へ出ていつもの6人で1年生最後の学食を共にする。次来るときは2年生だ。

 

「アイツ……約束したくせに」


 私を取り合う試合を行い、その副産物としてサツキが勝ったらオリオンがサジタリオンに最初の挨拶を妨害したことを謝るようにと条件を付けた。


 それがお守れていない事に腹が立っている様子でご飯をバクバクと口に頬張っているサツキ。

 しかしそんなサツキをフーリアはまるでゴミでも見るかのように睨みつける。

 

「そんなのはどうでもいいのよ!なんでいつも……い・つ・も!!アンタが居るのよ!!!!」

「え……もう仲間じゃないのか!?それにほら、前の試合で……」


 サツキは何か言いたいのかモジモジしている。

 パーティメンバーだと認めてほしいのだろうか?


 残念ながらそれを決めるのはリーダーのショナだ。私にその権限はない。

 そんなショナは両手を前に出して手のひらを合わせると同時に頭を下げる。


「ごめんっ!スイレンはこの4人で完成してるので!」

「あ、あぁ……まあそれじゃなくて……」

「あれ?スイレンに入りたいんじゃないの?」

「……そう言うのもありだったのか」

「いや、無いから!半年前に女性冒険者チームの特別授業があって言ってたんだよ。パーティに異性が入ると面倒な事になるって」

「え……あぁ……」


 サツキもそれには思う所があるんだろう。

 男女の問題はつきものだし、前世の記憶があるのなら異性との関係が大変な事も知っているはず。前世のサツキの年齢にもよるか。


「チ、チームじゃなくても仲間だろ?それか友達とか……」

「ま、まあ私はそう思ってるよ?」


 なんか……サツキって結構面倒くさい人?


 女々しいというか……。確かに仲間ではあるんだけど、まだ関わって半年も経っていない。

 それにショナ達と違って同じ部屋で寝ているわけでもないのでまだそこまで親密な関係になったとは思えないんだけどね。

 

 そんな同じ話をしている状況に我慢できなくなったマツバが話を変える。


「というか、これからどうする?」

「これからって?」

「いや、合宿の話……一体どこでやるんだよ」

「あーそれは学食の後に校長室へ来るようにってサジタリオン学長が言ってたよ」

「おお~なんか特別な気がする」

「適当だね~そう言うとこユウリにそっくりっ!」

 

 ショナは約一年の間、率先して対話をしてくれる。受付、ギルマスなど様々な人達と話をして対話がより上手くなった。

 これも私達がショナに対話をお願いしている賜物……か。

 

 マツバがどこかユウリに似ているから慣れているだけか。

 おそらく4月まで帰ってこないから1年生最後の食堂を終えて、片付ける。

 

 帰省する人が多いのか食堂にはあまり人が居らず、並ぶこと無く食べた後の食器を片付けて、その足で学長の部屋へ向かう。

 

「よし、じゃあみんな食べたなら行こー!!」

 

 いつでも元気なショナは食堂でもそんな大きな声を上げる。

 

 恥ずかしいのだけれど……まあいいか……こういう元気なショナを見ていると色々あったことも忘れられる。

 

 食堂を出て、先ほど下校するために通った道を再び歩く。

 

 目的は校長室だ。


 トントントンッ――


 校長室まで誰かに話しかけられることも無かったので、扉をノックしてから部屋に入る。


「入っていいよ」


 サジタリオンの声が聞こえるのと同時に扉を開ける。

 学長室の中にはサジタリオンと見慣れた少女2人が居た。


「あれれ!?2人は……!!」

「お久しぶりですね。スイレンの皆さん」

「リリィさんとユリカちゃん!」


 どうしてこの2人がここに……?まさか強い人ってこの2人が……?


 リリィはまだ戦ったのを見たことが無いので分からないにしてもユリカのようなまだ幼い女の子がおしえるなんてできるのだろうか。

 

「彼女達に来てもらったのはこれから向かうハーベスト帝国の中央都市への馬車を手配してもらうためだね」

「中央都市……結構遠くないですか?」

「僕の魔法で馬を強化する。冬休み含めて3年生の卒業式もあるから4月までは向こうで鍛錬を積むといい。ただ僕はたまにここへ戻ってこなきゃいけないけど……」

「どうしてハーベスト帝国に……?」

「そこに居るからだよ。世界最高クラスの魔法を極めた魔導騎士(エーテルナイト)と剣を極めた魔導騎士(エーテルナイト)がね」


 サジタリオンがそこまで言う人なら期待してしまう。

 

 一体どんな人なんだろう……?


 魔法は私でも十分に極めた方だと自負している。

 

 知識は誰よりも上だ。だけどもしそれ以上の知識を持った人なら……!!

 

 私はハーベスト帝国へ期待で胸を膨らませるのだった。

 ダインスレイブ師匠(せんせい)には少し悪いけど……。

 

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