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第166話 固有魔法


 そんな突然の報告に頭が付いて行かない。

 家ですらも関りが少なく、転生してから片手で数える程度しか会話をしてこなかった……とはいえ、最近話して元気な姿を確認できた。


 これからなのに……いや、まだ自分の目で見ていないんだから決めつけるべきじゃない……。

 

 たかが人に伝えられた情報ってだけなんだから!!


「そうか……どうしてそんな情報をお前が知っているんだ?」

「はい!サジタリオン様っていう魔導騎士(エーテルナイト)にこの事をギルドへ伝えるようにと」

「サジタリオン様?あの人は今どこに?」

「バレンタインの街へ向かわれたと」


 サジタリオンの名前を聞いて当然サツキとマツバも驚いていた。

 そんな誰もが男性冒険者に聞きたい事があるだろうこの状況下でギルマスは順番に話を聞いてくれる。


 バラバラに話して混乱するのを防ぐためだ。

 私も早く聞きだしたい欲を抑えて大人しくする。


「サジタリオン様は賢い方だ。まだ何か話していなかったか?」

「はい!この前のバレンタインの街で起きたアーミア嬢の反乱でサジタリオン様は保守派の魔導騎士(エーテルナイト)を何人か置いて守らせていたみたいなんすが……」

「情報はその魔導騎士(エーテルナイト)からか?」

「はい!襲撃に遇い生き延びた人が伝えてくれたみたいっす」

「それでサジタリオン様はそれを聞いて向かわられたと?」

「うっす!」

 

 まさか私達が学校でちょっとしたトラブルに合っている間にそんなことがあっただなんて……。

 ……父上とルーンは大丈夫だろうか?後一応義母も……まだちゃんとこの目で見ていないので生きている前提を持つ。

 

「ふむ……なるほど」

「ギルマス!私もバレンタインの街へ……」

「ちょっとルーク!!一人じゃダメよ!!!!」

「いや……そういうわけじゃなくて……」


 フーリアに先読みされてしまった。

 しかし今回ばかりは1人で行かないと……おそらくそこにはマレフィックが居る。

 

 アレを相手にするのはまだ早い……だけどそれはギルマスによってすぐに否定される。


「そもそも送り届けるのは不可能だ」

「どういうことですか?」

「ヴァンパイアホースが居なくなったのは知っているな?」

「倉庫から出ていて灰になっていたっていう?」

「だからすぐに移動できる手段はない」

「他の馬を……」

「生憎と私が使える馬はないし、最近はどこも馬が不足しているらしい」

「どうしてまたこんな時期に……」

「冬だから……というのもあるだろうが……何か妙な事が起きていると私は思っている」

 

 ヴァンパイアホースはともかく、普通の馬も居ないなんてどう考えてもおかしい。

 誰かが意図的に仕組んだ罠と考えると目的はなんだろう。


 馬を奪う事で移動手段を潰すのが目的だろうか。

 

「もしかしたら魔王教団の仕業だったのかもしれん」

「諦めてサジタリオン様が帰ってくるのを待て、今から行っても3日後にしか着かない。そして争いが事実なら3日ではもう……」

「……」


 指をくわえて待って居るかしないというの……?


 しかし他に手が無い以上はそうするしかない。

 

 今回ばかりはサジタリオンを信じるしかないのかもしれない。あの人なら馬を強化する魔法で1日あれば報復できる。


「しかしここまでバレンタインが狙われるとは奇妙だな」

「バレンタインには何かあるんですかね?」

「……あるにはある」

「なんでしたっけ?」

「聞いた話ではバレンタインには固有魔法 不死鳥の炎(フェニックスフレア)の書物があるとか」

「固有魔法を使えるのはその血筋だけじゃないですか」

「……それを手に入れる方法は?」

「固有魔法を取り出す……みたいな?」

「固有魔法を取り出すのは不可能だし、もっと単純で簡単な方法があるだろう……」


 ギルマスは私の方を見てそんなことを言いだす。

 血が必要ならその血を引いた者との間に子供を作ればいいということか……。

 血筋しか魔法が使えないならその血筋を作ればいい……そんなことは考えた事も無かった。


 だけどそれだと矛盾が生じる。


「それなら父上を生かすのでは?」

「確か子供はまだもう一人居たんだろ?ルーンだったか?」

「どうして義妹の名前を……でもあの子は義理ですよ?」

「それを魔王教団が知っていると?」

「……」


 そう聞かれると知らない可能性の方が高いか。辺境の街の田舎の貴族の情報なんて分からないだろう。

 

 その可能性は十分にあるけど……この話にはどこか引っ掛かりを覚える……何か重要なモノを見逃しているそんな感じ。

 だけどそれが何なのか分からない……。


 それにもしそうだとしたら私が襲われていないのは辻褄が合わない。


「はぁ?!……あいつらまさかルークも狙って?」

「可能性はあるが……今のルークを襲う気にはならないだろう」

「え……?」

「良くも悪くもルミナが居てくれているおかげだな」

「……」


 良くも悪くもというのはこの見た目のせいで私は街の人達から奇異な目で見られている事とそのおかげで襲われていないという意味が含まれているんだろう。獣人はこの国では嫌われているからこそ、周りの目が痛い。


 さらに人から獣人になるなんて聞いたことが無い、サツキは誤魔化すために呪いだと言っていたけど、周りの人達からすればそう見えていてもおかしくない。

 

 それが魔王教団にとっての抑止力になっているのだとしたら……。

 まだ確定した情報ではないけど、私も常時気を付ける必要がある。


 しかしまた嫌な方法で固有魔法を手に入れる事を考えたな。

 そう考えるとまだ父上が死んで居ない可能性も高いはず。

 

 命からがら逃げてきた人の伝えた情報だ。パニックでちゃんとその様子を見ていない可能性だってあるわけだし。


 この目で見ない限り私は信じない!!


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