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第162話 魔導騎士の戦い


 これが少女漫画なら女の子の私を同級生の男子生徒と3年の先輩が取り合っているように見えるのだろうか……?

 しかし先輩の方はよく分からない理由で仲間に入れと言ってくる感じでそんな可愛らしいものじゃない。


 私を魔導騎士(エーテルナイト)にして革新派に迎え入れるなんてどう考えても怪しすぎだ。

 私は魔法と剣を使えるけど魔導騎士(エーテルナイト)とは呼ばれていない。


 そもそも他の人達からは魔法を使える理由が呪いだと言っている。

 つまり私は周りからしたら呪われた魔導騎士(エーテルナイト)になる。


 革新派は同じ血を引かない魔導騎士(エーテルナイト)を敵視しているはず。

 それをわざわざ迎え入れる理由が分からないんだよね。呪われているという話なので一緒に居たくないだろうし。

 

 見た目が良いからって言われたけど絶対そんな理由じゃない。


 きっと裏がある……だから様子を見たかったんだけど……。

 

 まさかサツキがあんな挑発に乗るとは思わなかった前世の記憶がある分、精神的に大人だと思ったんだけど……私と同じように身体に精神が引っ張られているのかもしれない。

 

 だけど一応仲間だと思ってくれているんだろう。助けてくれた形にはなったし、それは嬉しい……嬉しいかった。

 

 学校の所有する小さな闘技場の景品みたいな場所に座らされて凄く嫌なんだけどね……。


 少し離れた所を見てみるとフーリア達もサツキとオリオンの戦いを見ている。

 フーリアはずっと私の方を見てムスッと頬を膨らましている。

 

 私の方がその顔をしたいんだけどね?


 試合は既に始まっていて、サツキとオリオンの戦いは均衡していた。

 1年生のサツキと3年生のオリオンの剣の撃ち合いを見てみるが、剣術ではオリオンの方が上。

 年齢の2年の差は埋められないか……。相手もまた鍛錬を怠っていなかったんだろう。


 ただ、ここで剣と剣の相性の差が出てくる。

 サツキは水の剣。そしてオリオンは砂を自在に操る剣みたい。


 砂……ってことは大地の属性か。


 砂は水で固められて動きを封じる事ができるので相手の本来の強さは測れない。

 オリオンも戦いにくそうにしているのがよくわかる。

 剣士同士の戦いにおいて魔導士よりも一層、属性の有無が大事になってくる。魔法は複数の属性を誰でも扱えるのに対して、剣は基本1つの属性しか持ちえないからだ。

 

「お前の剣は水だったかサツキ!!」

「そっちは砂……俺の方が相性は良いわけか」

「だが……剣術は俺の方が上だ!!」

「水神刀を舐めるなよ!!」


 2人とも熱い戦いを繰り広げている。

 

 何というか……私の事、忘れてない……?


 何なんだろうこの胸がムカムカするこの感じは一体……。

 

「これが少女漫画だとしても……ドキドキはしないわね」


 むしろ楽しそうに戦っている二人を見てイライラするくらいだ。

 でもサツキが楽しそうに戦っているのを見るのはなんだか嫌では無いかも……。


 そんなことを考えながら戦いを観戦しているとどこからか嫌な視線を感じる。

 あの時の奴隷少女の……ではなく、フーリアだった。


 まるで私の考えている事を理解しているかのような恐ろしい形相で睨んでいる。

 ここから一般の閲覧席までどれだけ離れているか……顔や表情は絶対に分からない距離なのに……。


 獣人の目でようやく見えるくらいなのにどうして、こういう事を考えた時に睨みつけてくるんだろうか。


 話を戻すけどこの戦いは確かに均衡している。

 サツキは剣の力を使って、オリオンは砂が使い物にならないから剣術だけで戦うしかない。


 それで拮抗しているのだから一件するとオリオンの方が有利に見える。

 剣の精霊の力を使い果した途端にサツキは負けが確定する。

 しかし、あの水神刀の力をサツキはまだ全然使っていない。


 ただ水で反撃するだけ。


 水を剣から放出して砂に被せて無力化したり、相手の足を奪って隙を作ったりする程度。

 本来は水を剣に纏わせてチェンソーのように振動させることで凄まじい切れ味を持たせることができる。

 それを使っていない辺りまだ余力がある。


 砂の剣だけなら何とかなりそうだけど……相手は魔導騎士(エーテルナイト)じゃないだ。


 ……今まで生徒は魔導騎士(エーテルナイト)が居なかったから、魔法と剣の両立なんてできない。


 その時、オリオンが不敵に笑う姿が見えた。


 とてつもなく嫌な予感がして私は咄嗟に叫ぶ――


「サツキ!!」

 

 しかしそれよりも先にオリオンは魔法を使う。

 オリオンの剣から放出される砂をサツキが水で固めようとした時、その水を氷の魔法無力化する。


「――ッ!?」

「俺の砂は……触れると毒に侵されるぞ?」


 さらにその砂を使える剣はただ、砂を操るだけじゃないみたい。

 そりゃそうか……ただの砂の剣で3年の魔導騎士(エーテルナイト)のリーダーを務められるわけがない。

 

 砂なんてそこら中にある。それに毒を付与できるのならその力の脅威は一気に増す。

 

 そして魔法の事を忘れていたであろうサツキはそのまま何もできず……。


 ぴちゃっ――


 まるで水が触れるような音が闘技場に響き渡る。

 

 人の力だけでは聖剣や魔剣の脅威には勝てない。

 そしてオリオンは相手が毒で目を潰されたというのに一切の猶予を与えず――剣を大きく振りかぶった!!

 

 このままじゃサツキが殺される!!!!

 

「サツキィィィィィィィイイイイイイイ!!」

 

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