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第160話 決闘


 魔導騎士(エーテルナイト)ではない私が魔法と剣を使えていることが3年のオリオンにバレてしまった。

 

 一体どんな文句を付けてくるのかと身構えていたらはそんな私を見てまるで嘲笑う。


「ふんっ、で?お前は魔導騎士(エーテルナイト)なのか?」

「の、呪いで魔法を使ったので……そう言うわけでもないと思いますというか……」

「だが魔法を使った。お前は剣士であるのに」

「……」


 この人はまさか私を魔導騎士(エーテルナイト)にしたいのだろうか。


 魔導騎士(エーテルナイト)の品が落ちるから魔導騎士(エーテルナイト)だけは絶対に名乗るなよ!!って言われると思ったんだけど。

 そう言う感じじゃない……私の事を否定こそしてこない……けど、なんだか嫌な感じだ。

 

「魔法と剣は相性が悪い。かつて魔法の女神と剣の女神が大喧嘩をしたという」

「な、何ですかそれ……?」

魔導騎士(エーテルナイト)に伝わる伝説だ」


 突然何の話をするのかと思いきや……。

 

 魔法と剣を人が両方とも扱えない説明をわざわざしてくれる。

 誰も聞いていないんだけど、間に入ったら首を落とされそうなので黙って聞いておこう。

 

「女神同士の喧嘩の影響でこの世界の人間は魔法か剣、どちらかしか使えなくなった。しかし、たまに魔法と剣を両方使える者が現れる」

魔導騎士(エーテルナイト)様ですか……」

「そう言う事だ。人ではどちらかしか使えないが、我らなら……!!そう、魔法と剣を扱えるのが魔導騎士(エーテルナイト)なら貴様もその1人の仲間入りだ!」

「……」

「嬉しくないのか?この世界の神と称される人間になれるんだぞ」


 そんなことを言われたところで何も嬉しくない。

 魔導騎士(エーテルナイト)への人々の視線は痛いほど知っている。


 神のように信仰する人達は魔導騎士(エーテルナイト)に頭を下げて、人々を虐げる魔導騎士(エーテルナイト)は恐れられる。


 どちらも恐れという感情が前に出ているのは共通していて、そこに居心地の悪さを感じていた。

 サツキが周りの生徒を睨んだ時、一般の子達は恐怖の表情を浮かべるほど。

 

 まるで人ではない何かに恐れているような、それこそ神の怒りを買うまいとしているようだった。


 私を嘲笑する人達の事はムカつくけど……それも人としての供述、なら私の応えはこうだ。

 

「わ、私は人なので」

「それは魔導騎士(エーテルナイト)への侮辱か?」

「わ、私は魔導騎士(エーテルナイト)様のような崇高な血統を持っていないので……!!」

「ふむ、つまりお前は魔導騎士(エーテルナイト)にはなりたくないが、魔導騎士(エーテルナイト)を崇高だと考えていると?」

「そ、そうですね……」


 崇高かどうかは人に寄るけど、少なくとものサジタリオンはそれに値するので嘘ではない。


「ならばお前に魔導騎士(エーテルナイト)の資格があるのか聞いてみればいい」

「聞く?誰にですか?」

「ムーン様……」


 初めて聞く名前だ。


 というかこの素行の悪いオリオンが様付けするような人ってことだよね。

 

 なんだか聞いてはいけない名前のようなそんな気がしてならない。

 その名前を出された瞬間、サツキが大きな声を出して私の前に立つ。

 

「待ってくれ!どうしてここであの方が……オリオン先輩はあの方がどこにいるか知っているのですか?!」

「サツキ、お前に話すことは無いと言っているだろ?」

「ムーン……様の話が出てくるのなら変わってきます!!」


 そしてサツキも敬称を付ける程の人物。


 一体何ものなんだムーンって人は……。

 革新派ならまともな人じゃないんだろうけど。

 できれば関わり合いになりたくない……サツキには相手の挑発に乗らずこの話を終わらせてもらいたいところなんだけど。

 

「そんなに怖いのか?ムーン様が!」

「……少なくとも彼女をムーン様に合わせるつもりはない」

「それは保守派のお前が決める事じゃない」

「だとしてもだ!!」


 いつになくサツキは声を荒げる。

 それだけムーンという人物を恐れているのか。あのサツキが怖がるほどの相手なら私も絶対に会いたくない!!


 ここはサツキに頑張ってもらおう!いいぞもっと言ってやれ!


「だいだいどうしてルークなんだ!」


 何気なくサツキが言ったその言葉……しかしそれに不敵な笑みを浮かべるオリオン……。

 まるで何かを企んでいるように見える。

 

「理由?理由かぁ~そうだなぁ~強いているなら使えそうだからだ」

「使う……?」

「獣人は色々な欲が強いからなぁ~おまけに容姿も良い……だから――」


 その先の言葉をオリオンは紡ぐ前にサツキが刀を取り出してオリオンへ向ける。

 フーリアにも負けずとも劣らない鋭い眼光……。しかしオリオンは怯まない。

 

 それどころかまるでしてやったり顔……挑発みたいね。


「それ以上汚らわしい事を彼女の前で口にするな。殺すぞ」

「それがお前の本性か?挑発した甲斐があった!じゃあその女を賭けて勝負しようぜサツキ」

「は……?」

「俺が勝ったらその女は俺達革新派が貰う」

「彼女を道具みたいに使うつもりはない」


 次は相手の挑発に乗ることなく冷静に対処してくれる。実際賭けの道具なんかにされたくない。

 サツキは私とは逆で前世では女の子だったみたいだし、誰かのモノになるのが嫌なことくらい分かってくれるはず。

 

「それじゃあ、いずれその女の事はムーン様の下へ届くことになるぞ」

「なんだと?」

「聞けばその女は大昔から湖に居るという巨大ワニを吸収したとか、そんな面白い道具をあの方が放置するとは思えないだろ?」

「……なんであのワニが……あれは魔王教団が……」


 魔王教団が狙っていたワニをムーンって人も狙っているという事?


 吐き出せるのなら吐き出したいんだけど、できないんだよね……。

 

 サツキは私を賭けの道具にはしたくないが、今後私の事をムーンに話されたくない、だから迷っている。

 そんなサツキに対してオリオンはダメ押しする。

 

「じゃあお前らが勝ったらムーン様に話さないのとサジタリオンへの謝罪をしてやる」

「なんだと?」

「尊敬するサジタリオンを馬鹿にされて怒ってたのは知ってるぜ?」


 この話はオリオンが持ち掛けてきた事、おそらく狙ってやっている。

 朝礼で邪魔をしたのもサツキを誘き出すためかもしれない。


 そんな挑発に乗って欲しくないんだけど……。

 

「……本当に謝るのか?」

「俺の信仰する神に誓う」

魔導騎士(エーテルナイト)が信仰する……神……わかった。その勝負乗った!!」

 

 サツキは相手の挑発にまんまと乗ってしまった。

 

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