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第159話 傲慢


 今朝はサツキの根回しもあり、この姿について何も言われなかった。

 獣人の姿になっちゃったけどフーリアやサツキ達が居れば何とかなるよね。他力本願なのはよろしくないけど、こればっかりは仕方がない。


 ちなみに今は私の四方を守るように3人が囲ってくれている。

 そこまでしなくても良いんだけど……心配してくれているので無下にもできないでいると、そこへ今や違和感のない声が聞こえてくる。

 

「ルーク、おはよう!」

「サツキ……本当に良く合うね」


 学校へ登校する途中だというのに……というかどんな場合でもずっと居る気がするのは私だけだろうか?

 

 おそらく私の事を心配してくれているんだろうけど、一歩間違えればストーカーだ。


「いや、もうれっきとしたストーカーでしょ」

「ち、違うから!心配してるんだよ!!」

「きもいけど今はあなたの力を借りなきゃ面倒くさい事になるから許すわ」

「きもい……」


 いつも通りサツキとマツバが近くに居てくれるのならより安心だろう。少なくとも貴族が絡んでくることは無い。

 

 そういえば魔王教団の襲撃の際にマツバは居なかったけど……何をしていたんだろう?


 登校の合間にマツバに聞いてみよう。

 

「あ、その時は寝てた」

「え……」

「サツキがルーク達が心配だから見に行こう!!ってストーカーみたいな事を言うから……あの時はまだ魔王教団の話は知らなかったし」

「え……てことは私達が魔王教団の討伐へ向かう前から付けてたの?」

「そうなるな」

「そ、そう……」

 

 こういうめんどくさりな所はユウリそっくりなんだけど、心配しすぎて付いてくるサツキもどうなんだろうか。

 それに突然魔王教団が襲ってくるなんて思いもしないだろう。

 

 私達は誘導されていたと考えている。目の届かないどこかで魔王教団の主力は他の所で何か悪い事をしている可能性がある。

 だから最初はエステリアで何かしているんじゃないかと考えて残っていたマツバも心配だったんだけど、普通に寝てたとはね。


「魔王教団か……」


 未だに悩みの尽きない敵にずっと翻弄されている。

 いい加減こっちが有利な状況を作ってそのまま叩きたいんだけどね。


 そんな話をしていると学校の教室へたどり着く。

 当然の如くこの狐の耳と尻尾を見て奇異な目を向けられているものの、フーリア&サツキバリアがそれを防いでくれる。


 2人とも私の事を笑ったりしている生徒を見つけては睨んで遠ざけてくれた。

 嬉しいけど、今後2人が学校でどんな風に思われるのかが心配になってくるのでほどほどにしてほしい。


 しかしそれも長くは続かなかった。


 今日の授業を全て終えた夕刻の出来事。

 寮へ戻るために6人で集まって一緒に下校する流れになったその時――


「お前がルーク=バレンタインだな?」


 フーリアとサツキの圧をもろともしない男子生徒が話しかけてきた。

 ただし、その表情や声色は話しかけるというような可愛らしいものじゃない。

 

 後ろには取り巻きを何人も連れている。


 そしてこの男子生徒は見覚えがある……。

 サジタリオンが校長になって最初の挨拶を妨害した魔導騎士(エーテルナイト)の3年の男子生徒だ。


 屈強な身体を持つ大男で本当に18歳なのか疑ってしまう程に老けて見える。


 28歳って言われてもおかしくないくらいだ。

 

「な、なんでしょうか……?」

「ルーク!ここは私が!!」


 フーリアが私の前に出て庇おうとしてくれている。

 後ろ姿しか見られないので良く見えないんだけど多分いつも通りの怖い目で睨んでいるんだろう。


 だけど3年の男子生徒は臆すること無く――


「誰だお前?俺はそこの女に話がある」

「そう……でも、ルークは人と話すのが得意じゃないの。要件は私が聞くわ」

「……何度も言わせるな、俺はそこの女に話がある。失せろ」

「――ッ!!」


 あのフーリアが圧で負けた。


 それくらいこの男子生徒の放つオーラは恐ろしいものだったってこと……?

 しかし、フーリアもまだ15の女の子だし、これが普通だよね。

 

 そこへさらに庇うようにサツキが割って入る。


「待ってください。何の御用ですか?オリオン先輩」

「サツキ……お前にも用は無い。神聖な魔導騎士(エーテルナイト)の血を引かず、たまたま魔法と剣を使えるだけの凡人だからな」

「くっ……」


 フーリアもサツキもこれ以上相手にできない程の圧力を放っている。

 ここは人生経験の豊富な私が話を付けないといけないみたいね。というかこの人は私に話があるみたいだからね。


「そ、それで何の話でしょうか?」

「ふむ、先日の魔王教団襲撃の事は知っていると思うが」

「は、はいその場に居ましたので」

「そう、まさにそれだ。聞いた話ではお前は元々人間で呪いを受けてその姿になったと」

「えっあ、そう!……ですね」


 呪い……都合のいい言葉だけど、これにはリスクがある。


 呪いが伝染するとか広められれば私の居場所もおのずと無くなるだろう。

 だけどこの姿を誤魔化すにはこれしか無かった。

 それに私には大切な仲間が居てくれる。何を言われても動じない!!


 そんな風に構えていたら――


「その獣人化をした後、お前は魔法を使ったらしいな?」

「え……?」

「お前の戦いを見た一部の1年が言っていたぞ」


 まさか……ルシアス!!


 ルシアスが私の事をオリオンに話したというの?どれだけ私の事が嫌いなの!


 最悪な事に私が魔法と剣を扱えることが革新派の魔導騎士(エーテルナイト)にバレてしまった!!!!

 

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