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第157話 元生徒達


 よく分からない女神様の世界から意識を失って現実世界で目を覚ます。

 

 空を見上げるとちょうどお昼時で太陽が真上まで来ていた。

 あの女神との話をしていたけど時間が流れていないと言っていたはずなのに気づかない間にずっと戦っていたらしい。


 それよりも……身体が妙だ。なんだか世界が鮮明に見えるというか。

 目が良くなった感じで、ここから一番遠くて私達が入ってきた洞窟の方を見てみると大勢いる魔王教団と冒険者の人々の顔が鮮明に分かる。


 そして耳も良くなっていて、戦っている人達の声、巨大ワニが消えて驚いている人達の声。

 それらが鮮明かつ、綺麗に聞こえていた。


「まるで人間じゃないみたい……」


 しかしそんな鮮明な感覚を手に入れたせいでこの戦場の空気はあまりおいしくないのが分かった。

 血の匂いや人々の叫び声、沼の水は抜かれているけど残った残滓。


 目の前には巨大ワニが居たであろう跡が残っていた。

 女神が言うには私の中に吸収されたってことだし、この鮮明な感覚はそのせいだろうか?


「何をしたのルーク?!」

「フーリア……巨大ワニは……?」

「巨大ワニはルークの身体の中に入って行ったけど……大丈夫なの!?」

「それは大丈夫、今の状況は?」

「巨大ワニは倒したけど、まだ魔王教団の残党が残ってるわ」


 逆に言えばもうそれだけ……か。

 もう今は私達冒険者側が圧倒的に有利な状況だし、負けることは無いだろう。

 それよりも巨大ワニが居た場所から空気の流れる音が聞こえる。


 やっぱり他の出口があったみたい。

 あの時の奴隷少女はこの中を通って逃げたか。相当研ぎ澄まされた神経を持ってしてもその出口からは風の音しか聞こえない。


 どこへ行ったのか分からないし、マレフィックと八合う可能性を考えると1人で行くわけにはいかないか。


「わかった。まずはこの場を収めよう!」

「それはいいけど、やりすぎると元生徒の子達が危険だからルミナとの同化を解除したら?」

「あれ?まだなってたんだ?」


 じゃあ世界が鮮明に見えたのもそのせいか……。


 獣の様に研ぎ澄まされた神経はルミナの影響みたいだ。


 巨大ワニを取り込んだことで得られた力だと思った。

 

 とりあえずルミナに離れてもらうようにお願いしないと……。


『ルミナ、力を貸してくれてありがとう……もういいよ』

 

 ……。


 頭の中でルミナにそう問いかけるが返事が無い。


 というかルミナの声が聞こえない。


「ルミナ?」

「どうしたの?」

「あれ……なんか、解けないんだけど」

「はぁ!?」


 ずっとこのまま状態はまずい!!


 耳や尻尾が炎で出来ているから日常生活にも問題が……。

 そう思った瞬間、頭の耳を触ってみると、本来なら無いはずの毛の感覚があった。

 

「あれ……これってまさか……」

「この前のよりも獣っぽくなってるわよ」

「はい!?」


 どうしてそんなことに!これ……直らないのかな!?


 慌てている私を他所に遠くで戦っているショナが呼ぶ声が聞こえる。

 

「ちょっと2人とも~!こっちを手伝ってよ!多分制圧はできるけど、数が多くて大変なんだよ~!!」

「ちっ……ルーク今は魔王教団を捕まえよう。それを解く方法は後で考えるよ」

「舌打ちこわっ……あ、はい……」


 しかし、手加減しないとルミナの力は強すぎるから死なせてしまう。

 そんな気遣いをしながら私達は残った魔王教団を捕まえた。

 そして残念なことにここに居た魔王教団はほぼ全てがエステリア学校の元生徒だった。


 魔王教団を全員縛って身動きが取れない状態にする。

 

 エステリアの元生徒だけあって貴族の子供だから殺せないというのもあるけどやっぱり一番はどうしてこんなことをしたのか聞きだすためだ。

 ちょうどギルマスも居るのでこの場で彼らの話を聞くことにする。


「どうしてこんなことをしたのかね?」

「……」

「ふむぅ……このままエステリアへ持っていっていいモノか……」


 間違えなく捕まるだろうけど、貴族だから何があるか分からない。

 かといってこのまま放置するわけにもいかないのでギルマスは困り果てていた。

 

 そこへ第一王子が介入していった。

 あの人に任せれば貴族の子供でも処分できるだろう。

 

「……ルーク、大丈夫かそれ?」

「サツキ、あなたはあの人に勝てたんですね?」

「あ、あぁ……妙な状態で我を忘れていたからな。視野が狭かったことで活路が生まれた」

「さすがですね」

「それより、その耳と尻尾は?まるで獣人だけど……」

「えっと、それについてはまた後で」

「そうか……」


 こんな所では話せないので魔王教団の人達から話を聞いた後でサツキに相談しないと。

 第一王子の介入もあって貴族相手でも話がスムーズに進んで行く。


「とりあえずお前達を連れて行く」


 そう第一王子が元エステリア学校の生徒に告げた時だった。

 

「待ってください兄上」


 戦っていたのだろう腕から血を流しているクレストが話に入ってくる。

 

「クレスト……?どうしたんだ?」

「いや……その任は俺に任せてくれませんか?」

「この者たちを連れて行くのをか?それがどういう事か分かっているのか?」

「……ならせめて俺も一緒に……」

「ダメだ。この人達の処分は私一人でやる。お前はそれ以上出しゃばるな」

「……はい」


 なんだか仲が悪いみたい……?


 この沼地跡に入る前はクレストを心配していたように見えたけど……。

 権力争いとはまた別ってことか。なかなか厳しい世界に生きてるんだねクレストって。

 

 少しくらいは学校でも優しくしてあげよう。

 そんなことを考えながら私達はエステリアへ戻ったのだった。耳と尻尾に関しては隠しながら周りの人たちにバレないようにする。

 

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