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第156話 愛の女神


 なんだか頭がポワポワする……。


 ルミナの力を借りて同化した辺りから記憶が無い。あの巨大ワニはどうなったのか……。


 そしてなにより……。


「ここはどこなの?」


 私が今いる場所はまるで雲の上に大自然があるような不思議な空間だった。

 さっきまで湖に居たはずだけど……。女神剣を使った後の疲労も完全に消えている。


 まるで自分が死んでしまったような。

 

 巨大ワニに最後もしかして間に合わずに噛まれた……?

 死んだってこと……?


 そんなことを考えていた時だった。目の前から桃色の髪の美しい女性が現れる。

 その女性はまるで私の考えを読んでいるかのように呟く。

 

「いいえ、生きてますよ?」

「……あなたは誰?」

「この世界の神……の1柱です」

「1柱……?まだ居るってこと?」

「居ますよ~ざっと10柱くらい」

「多いですね」

「あなたの元の世界の神様の多さに比べたら遥かに少ないですよ?」


 そう言えば日本だけでも八百万の神々と言われるほど多いんだっけ?

 

 確かにそれ比べたら10柱は少ない方か……。

 それにしては私の目の前に居る女神は普通に綺麗なお姉さんみたいだけど。


「私はこの世界で言う所の愛を導く女神です」

「愛?という事はあなたが私をこの世界へ転生させた……?」

「いいえ、残念ながらあなたをこの世界へ送り込んだのは私じゃありません」

「え……じゃあ一体……」

「それを答えるにはまず、こちらの説明を聞いてください。先ほど10柱と言いましたが今は9柱の女神しかいません」

「え……」


 10から9柱になったという事はまさか……女神が1人死んだってこと?


 神様って死ぬものなのだろうか。

 その存在すら居るのかどうかわからないような概念的なモノだと思っていたんだけど……。


 いや、それは私をこの世界へ送ってくれた女神様に申し訳ないか。

 

 そんなことを考えて居たまさにその時、女神は私に近づいてきて指を差して強調するように……。


「まさにその女神です」

「え……?」

「あなたをこの世界へ送り込んだのは居なくなった1柱の子なんですよ」

「は……?」


 死んだんじゃなくて消息不明ってこと?


 そんな女神にこの世界に送り込まれたというのならなんだかちょっと怪しく感じる。

 しかしそれはこの女神の言っている事を信じた場合だ。


 片方の意見を鵜呑みにするのは良くない。


「さすがに用心深いですね……まあそれでこそあなたですが」

「私の事を知っているんですか?」

「それはもう……男性の頃から今まで」

「前の世界の事も知っているんですね」

「それも知っています」

「そう……ですよね?」


 なんだか言い方が引っかかるけど男性の頃を知っているという事は前の世界の事もしっているんじゃないかな。

 ていうかやっぱり私は変な転生の仕方をしたんだろう。


「その女神はどうして私を?」

「その理由はもう少し先へ、あなたはさらに知らなければいけない事が沢山あります」

「沢山ってどれくらいですか?」

「世界には神獣と呼ばれる私達神が作り出した……あなたへの贈り物があります」

「え……?」


 それを聞いて思いつくのは当然ルミナの事だ。

 あれは私を転生させた方のつまり私の目の前の女神が言う所の居なくなった女神が転生の力として送ってくれた。


 いや、私はルミナが力と思っていたけど、あの女神はそんなこと一言も言っていなかったっけ。

 あくまで力とだけ。


「ちなみに他にもたくさん居ますよ」

「え……じゃああなたは?」

「私が送ったのは……神獣顎鰐(ガクガク)……あの巨大ワニですよ」

「え……」


 あれってただの魔物じゃなかったの……?


 普通にエステリアの街で魔物認定されて依頼で狩るように言われたんだけど……。


「元々あんなに大きくないんです。あの子は今のルミナと同じサイズでした」

「どういうこと?」

「成長しすぎたという事です。あなたを待つ間ずっとずっと……」

「そんな……私の転生に合わせればいいのに」

「あなたの転生のタイミングは居なくなった女神が決めているのでこちらでは合わせられないんです。だから世界ができた0年から900年の現在まで100年周期で聖獣を送り込んでいました」


 急にそんな壮大な話を聞くことになるとは思わなかった。

 悪い女神から私を守るために900年間聖獣をこの世界へ放っていたなんて……。


「まさかあの巨大ワニって相当前の子ですか?」

「この世界が出来て700年後に送りました」

「す、すみません気づかなくて……」

「まあ仕方ありません。あの時の戦いはあなたが参加していなかった」


 初めて巨大ワニと戦った時、私は魔法を使い過ぎて動けなかった。

 それをフーリア達が戦ってマレフィックがとどめをさした……。


 だからあの巨大ワニと対話する暇すらなかったというわけか。

 

「あれ?とどめ差されてましたよ?」

「女神が作った神獣ですよ?世界が出来た0年から送り込まれた子も生きています」

「……もしかして知ることが沢山あるというのは……」

「巨大ワニ……いいえ顎鰐の力をルミナと一体化した時にあなたは吸収した。そのおかげでこうして話せているんですよ」

「じゃあ今現実世界は……」

「一時的に時間が止まっている状態です。ですがそろそろ動き出します。私の女神としての力は今や薄れています……顎鰐の力が半分しかないからでしょう」

「どういうこと……?」

「続きは顎鰐の下半身を取り返すか、他の神獣を見つけて仲間にするか力を取り込んでください……」


 女神はそう言うとだんだん身体が消えかかっている。

 息が乱れていて苦しそうだ……。

 無理をしてこの場で私と話をしてくれていたみたい。


「さ、最後に……悪い女神、分かりづらいので邪神と呼びます。邪神とどうか……」

「ま、まさか倒せと?」

「出会わないように……あの子が司るのは…………」


 最後にそれだけ言うと美しい愛の女神様は光の粒になって私の中に入ってくる。

 それと同時に意識が現実世界に戻ってきた。

 

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