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第151話 王子のわがまま


 王子様が駆けつけてきたのと同時に魔王教団が占拠している湖へ突入する。

 狭い洞窟は私達が通った時は2人横並びでギリギリ通れるくらいで大柄な冒険者だと1人しか通れない。


 そのため、ラグナと他の冒険者、そしてラグナのパーティ仲間であるロナが先陣をきる。

 第一王子は最初の組が入って行くのと同時に洞窟へ……。


 しかしそれを兵士の1人が止める。

 

「王子よ。まずは我々兵士が洞窟へ入ります」

「ん、しかし冒険者達が既に入って行った……我々も向かわねば!」

「御身に何かあれば私達の首が飛びます……ここは抑えていただきたいのです」

「そうか……ならば先へ行け!そして一人でも多く倒せ、私もすぐに追う!!」

「はっ!!」


 冒険者達だけに負担を掛けないように自分もすぐに向かおうとするような意識の高い王子様。

 一見、素晴らしい行為だと感じられるんだけど……どこか胡散臭いというか、演技っぽいような感じなんだよね。

 

 そして第一王子直属の軍が洞窟内部へ侵入していく。

 

 この場には私達、新人冒険者が8人、第一王子と側近が4人、魔導騎士(エーテルナイト)のサツキ1人が残っていた。


「さて……そろそろ向かおう!」


 第一王子が側近4人へ指示をした時、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「待ってください!兄上!!」

「……お前はクレスト!?お前はバレンタイン領へ向かうんじゃなかったのか?」

「そのつもりでしたが、直前で魔王教団の襲撃を抑えると聞いて駆けつけてきました」


 それにしては迅速な行動だ。

 バレンタインの街へ何をしに行くのか知らないけど、当初の目的を放ってこんな所まで1人で走ってくるなんて……正直頭がおかしい。


 クレストは第一王子に対して詫びる素振りはおろか、戦いの意思を表明し続ける。

 一見わがままな行動に見えるけど……果たして彼がそんなことを何の意味も無くするだろうか?


 仮にも第4王子……で狡猾な男だ。

 

「クレスト、お前には荷が重い……俺達は魔王教団を国の端から端へ探し出し撲滅した。おそらくこれが最後の魔王教団との戦いになるだろう。つまり戦力が大量に集まっている」

「それでも俺は行きたいんです!!」

「……あまりこういうことを言いたくないが……ここで活躍しても王の名は手に入らないぞ?」


 メフィストはクレストへそんな言葉を投げかける。

 傍から見たら嫌味に聞こえるが……確かにその通りだろう。

 既に民衆の支持がメフィストへ向いているのならここで活躍した所で無意味だ。


「それでも俺は……!!」

「死ぬかもしれないからお前はバレンタイン領へ……」

「それも覚悟しています」

「……どうしても来るつもりか?」

「はい、そのために来ましたから」

「仕方ない……お前達、クレストの護衛に付け」


 クレストの強い意志を受けてメフィストは護衛の一部を託した。

 死なせたくないという想いがあるのならここで止めるべきだけど……。

 クレストが素直にそれに従うとは思えないから目の届く範囲に留めておくつもりか。


「護衛から離れるなよクレスト」

「はい!」

 

 メフィストがそうクレストに告げるとそのまま湖のあった洞窟へ入って行った。

 それを見たフーリアもそれに続く。


「私達も行くよ!これが最後の戦いなら、フロストから宝剣を取り返して王子が居るなら魔王教団ぶっ倒して宝剣の主を認めてもらうんだから!」


 ここに居るのが残りの魔王教団の残党ならアーミアを乗っ取ったフロストもいるはず。

 フーリアの宝剣もここで手に入るかもしれない。


 まさか女神との最終決戦の場で魔王教団と最後の戦いになるとは思わなかった。


「待て!俺達が先へ行く。お前らは最後だ」

「ルシアスだっけ?私達に助けられておいて良く言うわね」

「なんだと……!!辺境の貴族風情が……」


 相変わらず私達の事を良く思っていないみたいだけど、ルシアスはさっきの戦いで怪我をしていた。正直、洞窟へ入って行くのは無理だろう。


 治癒魔法で治せるけど、あえてそれはしないでおこう。

 おそらく外の方が安全だしね。


 それに口ではそんなことを言っているけど、洞窟へ入って行こうとしない。怯えている子達がいるせいだろう。

 

 ルシアス達冒険者チームを置いて遂に洞窟の中へ入っていく。

 中は暗く狭いけど罠などは無い。

 先行していった人達が居るからその心配は無いか。


 しかし外というか湖の方から大きな音が響いている。

 既に戦闘の真っ最中みたいだけどどうなっているのか……。洞窟を抜けると太陽の光で一瞬だけ目が眩む。


 目を閉じて慣れさせてから開けると想像通りの展開が広がっていた。


「結構数が多いわね魔王教団……」

「だけど戦況は拮抗してるみたい」


 数で押されていると思いきや善戦している。

 だけどこの場にはあのマレフィックが居るはず……。


「あれ……?」


 どこにもマレフィックの姿は見えなかった。

 それどころか先ほどまで居たはずの奴隷の少女ハマルもこの場に居ない。


「どうなって……」


 確かに激しい戦闘をしているけど魔王教団の面子にこれと言った記憶にある人が居ない。

 アルタイルは捕まったから居ないとしても、レオやマレフィックの姿すら見えない。


 というかこの戦っている魔王教団の人達にどこか違和感がある。

 

 何というか全体的に年齢が若い……それこそ私達と同じくらいの年齢……まさか!?


「はあああああぁぁぁぁぁぁ……退けっルーク=バレンタイン!!」

「ルーク危ない!!」


 考え事をしていたせいで敵に気づかなかった。

 だけどそこへフーリアが駆けつけてくれて襲って来た魔王教団へ剣を放ち、吹き飛ばす……事なきを得た。


 そして飛ばされた魔王教団の子は気絶して深くかぶっていたフードを下していた。

 最悪な予想は残念ながら当たってしまい、またしてもエステリア学校の生徒が敵として向かって来ている。

 

「何!他所見してんのルーク!」

「わ、分かってるんだけど……ここにマレフィックが居ないのは不自然じゃない?」

「はぁ……?確かに変だけど今は戦ってよ!!」

「う、分かった!!」


 ここに居る魔王教団のほとんどが元エステリア学校の生徒なら早く片を付けて話を聞き出すしかない!!

 

 私はとてつもなく嫌な予感を覚えながら、元エステリア学校の生徒達を止めるために剣を取るのだった。

 

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