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第149話 スイレンの魔導士と一匹の獣


 薬を飲んでしまったライカを救うためにずっと戦いを見ていた私とユウリも戦いに参戦する。しかし、どうしてここまであの薬にこだわるのか自分でも良く分からない。

 あんなひどい光景を見てしまったからだろうか……。リゼルの実の娘であるアクアドルの姿を思い出す。


 あの子はそのことを知っているのだろうか……そんなことを考えると胸の奥が苦しくなるのを感じる。

 

 アレは使わせちゃいけない、使ったのならそこから脱する方法を探したい!!


 同じ苦しみはもう、見たくないから……。

 

「行くよユウリ!」

「はーい」


 気だるげな返事とは裏腹にユウリは地面を揺らしてライカの動きを封じる。めんどくさそうにしながらも率先して動いてくれる。

 地面を揺らす魔法にいち早く気づいたフーリアとショナはその場から離れる。

 

 そこへ私は地面を揺らされてバランスを崩したライカへ一直線に向かって行く。


「ルーク!どうするの?」

「やってみたいことがあるの!」


 私の戦闘スタイルは炎を纏った近接戦から純粋な炎の遠距離魔法に剣術。そして炎による癒しの魔法。

 私の炎はあの時に見た歴史から炎の鳥を出したのは悪い女神でそれを食べたのが私のご先祖様。


 そんな女神の鳥の治癒力ならもしかしたら薬を癒せるのかもしれない。

 子供の頃は剣士として生きていくと決めていたんだけど、魔法も使えるならと一番極めた魔法は「不死鳥の炎」だった。


 これでも私はヒーラーなのだ。

 

 それも近距離戦ができて自分を癒せる炎の治癒魔導士!!


 近距離で戦うのならやっぱり炎帝剣を抜かないといけないので距離を詰めながら抜刀する。


不死鳥の炎(フェニックスフレア)!!」

「炎魔法……!?貴様剣士では、いや剣の力……?」


 ライカはグラグラと身体を揺らしながらも地面を魔法で操り目の前に大きな壁を作った。

 炎だと地面を抉るのにも火力も燃料になる魔力も莫大に必要になる。魔導騎士(エーテルナイト)と同じ力を得た事で魔力も剣術も向上している。


「くっ……」


 早く治癒の炎を浴びせたいのにこれじゃ、近づけない……!!

 そんなことを考えていると突然……ライカの土の壁が崩れ始める。


「なにこれ……!?」

「目には目を……ってね!」

 

 同じ大地を操る魔導士同士だからこそ相手の魔法に干渉できるのね。

 だけどいくら同じ属性魔法使いでも相手の魔法のコントロールを奪うにはそれ以上の魔力を消費しないといけない。


 土の壁を作る魔法は簡単だけど魔力を多く消費する。


 ユウリの魔力が尽きるとこの先の戦いがきつくなる……なんせまだ湖のあった洞窟の奥に辿り着けていないのだから。

 

 これは私のわがままなんだ……速攻で片を付ける!!


 炎を纏ってブーストを掛けて勢いを付ける。

 きっとライカはロケットが向かってくるような感覚だろう。

 そんな私をこれ以上近づけまいともう一度、土の魔法で壁を作ろうとするけど、間に合わない。


 ハードル走みたいに出来上がる前の土の魔法の壁を乗り越えてライカの正面までたどり着く。

 

 そして攻撃する……()()をする。


 右手で持つ剣に炎を纏わせて殴る。

 当然そうはさせまいとライカは剣を使って防ぎに来る。

 ライカは剣を自分の頭の上まで持ってきてそれを振り下ろす。


 その瞬間、私は右手の剣を身体にしまう。そして右手を広げて左手に炎を纏わせる。

 そしてライカの振り下ろした剣を左手で捉える。

 

 剣先が左手の皮を捲り血が滴り落ちる……けど気にしない!!


 これだけの近距離なら私の治癒の炎も最大限の力を発揮するはず!!

 広げた右手をライカの胸に押し当てる。

 

「治癒……不死鳥の炎(フェニックスフレア)!!」


 ライカの身体を直接炎で焼く、もちろん治癒の炎で――するとライカに異変が起きる。


「アガァァァァアァアアアアァァアアアアッ!!」


 首を捻りながら空を見上げるように唸る。

 

 しかし苦しんでいるだけで治療できない……!!


 私の服と胸の間からルミナが少しだけひょっこりと顔を出す。

 私の方を見て何かを訴えている。


「力を貸してくれるの?」

「くぅうん!!!!」

「分かった……お願い!!」

 

 狐のような炎の耳と尻尾が身体から生えてくるのを感じる。

 ここでこれを使うのはまずいかもしれないけど……仕方ない!!


 今はこの子を……助けるのが先だ!!


「はぁぁぁぁぁあああああ!!治癒魔法……熱く燃え上がって!!!!!!」


 炎がピンク色に光始めた。

 ライカの口から黒い靄のようなモノが出てくる。もしかしたらこれが薬の影響によるものかもしれない。


 それなら……!!


 私は黒い靄を炎で焼き尽くした。


「うぅぅぅぐっ……」


 ライカはその瞬間まるで力が抜けたようにぐったりと倒れる。

 どうやら薬を消すことができたみたい。


 私の治癒の炎だけじゃ足りなかったけど……ルミナが居れば今後こういうことがあっても治せるかもしれない!!

 

 リゼルの時も早く気づいて治癒の炎を使えば良かったんだけど……あの時は倒すためだけに魔法を使っていたからそれができなかった。


 今回は助けるという明確な目的を持って炎を使ったから何とか治癒することができたのとリゼルほど強くなかったから余裕ができたおかげね。


 ぐったりを倒れるライカをゆっくり寝かせる。


 するとそこへルシアスが近づいて来て、眠っているライカの顔を確認する。

 

「くっ……まさかお前に助けられるとは思わなかった……」

「ルシアスさん?」

「だが感謝はしない……というかあの炎は何だよ……魔法じゃないよな?」

「……炎帝剣の力です」

「ちっ……良い剣を持ちやがって俺もそれくらい強い剣があれば、ライカを救えたんだ!!」

 

 まだ16歳の子供なんだ、それくらい元気で居てくれる方がいい。

 とりあえず洞窟から出てくる援軍を全員倒すことに成功した。敵は皆、生きていて縄で縛られている。


 後、残すは湖だけだ!

 

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