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第146話 行方


 巨大ワニ討伐依頼のあった沼地が魔王教団に占拠されているという情報を聞いて私達、冒険者ギルドは総出で駆け付ける用意をする。

 

 魔王教団は国とギルドが協力して退けると決められているので話を聞けばすぐに向かう必要があった。

 私達がハーベストに居た時もルエリア全体ではこんな風に魔王教団の動向を知ればすぐにそこへ向かって討伐していたという。

 ギルマスが緊急で今いる冒険者の人達を集める。


「今いるのはAランク2名Bランクが10名……Cランク以下が25名か」


 いつ魔王教団が現れるのか分からないため、今ギルドに常駐している人達しか集められない。

 今回は朝早い時間ということもあってまだ冒険者が集まっていない。


「それでも向かう必要がある。私はすぐに国に報告して応援を呼ぶ。お前達は誰一人欠けることなく、時間を稼げ!」

「倒しちゃいけないんですか?」

「何があるか分からんからな……2名のAランク冒険者、ラグナとロナに指揮を任せる。誰も殺すなよ」

「はい!マスターの命令とあれば!」


 Aランクの男女の冒険者が指揮を取る。

 Aランクなら腕も立つだろうし、戦闘経験も豊富。だけどあのラグナとかいう男の人のギルドマスターを見る目は特別なものに感じる。


「学生も居るからお前達が守ってやれ」

「マスターのご指示とあればこのラグナ全力で愚かな魔王教団共を滅ぼして見せましょう!!」

「人の話を聞け!小童め……優先順位をはき違えるな!!血を飲み干してやろうか?」

「マスターにならむしろ……!!」

「……とっとと行け!この変態が!!!!!!」


 このギルドには変わり者が多い。

 それもまた自由な冒険者という職業だからだろう。さっきの特別な視線はこれが原因だったみたい。

 

 そんな号令?と共に私達は沼地へ向かうわけなんだけど……そこで同じ学校の冒険者グループに話しかけられる。


「お前らスイレンとかいうBランク冒険者チームだろ?」

「はい……あなた達は――」

「あまり調子に乗るなよ……」

「……何も言っていませんが」

「俺達だってすぐにBランクになってやる!!」


 同じ学校で同じ冒険者をしていてさらにエステリア学校は貴族が多い。

 そのためプライドの高い人達が多くて私達はそれに絡まれたというわけか。


 さっきも言った通りだけど冒険者は変わり者が多い。


「だから相手にしなくていいからね。フーリア」

「は?ムカつくんですけど!」

「まあ私達は試験無しで、しかもハーベスト帝国でBランクに昇格したからね。速度もだけど例外があるからこそ絡まれるんだよ」

「そういうものなの?」

「いい意味でも悪い意味でも目立っているってこと、これは若くして出世した子への嫉妬みたいなものだから……むしろ誇りに思っていいと思うよっ!」

「……そう言う事ね!」


 フーリアはそう聞くとどこか嬉しそうだった。

 こんな風に絡まれて嫌な気持ちになるはずだけど……私の言葉を聞いて静かになってくれるのは嬉しいけど、ちょっとちょろいか……。


 移動の際に妙なのに絡まれてしまったけど予定通り沼地へ着く。

 街から沼地まで距離が近い事からお昼までまだ時間がある。

 細く狭い洞窟の外には見張りと思われる魔王教団の人達が10人くらいいる。


「これをとっとと終わらせて、酒場でパーッと飯だ飯!!」

「ラグナ、油断するなとギルマスが言っていたでしょう?それに洞窟の外に人が居るわよ」

「……みたいだな。体格的にはまだ子供もいるみたいだが」

「関係無いわ。マスターの命令通り時間を稼ぐにしても出入り口は私達が確保しなきゃ!」

「そうだなロナ、後ろの若い奴らは任せた。俺はベテラン共を連れて強そうなのを一気に叩く!」

「雑だけどあなたに新人の子達を任せるのは不安だしそれが一番良いわね。マスターは誰も殺すなと言っていたからそれを忘れずにねラグナ」

「おう!」


 巨体に大斧のアーティファクトを振りかざすラグナと魔法使いのロナを中心に私達は戦闘態勢に入る。

 

 誰も殺すなというのは恐らく、私達の中に死者を出すなという意味も込められているんだろうけど、それ以外にも魔王教団の人達を殺すなという意味もあるみたい。


 ギルマスは魔王教団の事を沢山調べたはず。

 あの中に子供が居るのは私達は知らなかったけど、色々な情報を持っているマスターならそれも分かっていたんじゃないかな?

 

 そんな子供も居る事を察して指示を出したのかもしれない。 

 ちなみにこの距離だと魔王教団の黒いフードを深く被っていて顔は見えない。分かるのは身長くらい、それも目測だから性格じゃないけどおそらく私達と同じ位の年頃かな。


 それが5人と大人5人……まだこちらには気づいていないみたい。

 その隙を逃すまいと冒険者達は雄たけびを上げながら突っ込んでいく。


「行くぞお前ら!!マスターのために魔王教団を根絶やしにするぞおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』


「そしてご褒美に血を吸ってもらうぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」


 そんな意味不明な掛け声と共に洞窟へ攻め入るラグナ達ベテランの男性冒険者達。

 私達は若い冒険者という事でロナという女性冒険者の指示の下、その様子を見守った。


「あの……行かなくていいんですか?」

「ん、まああの馬鹿共なら大丈夫でしょ……それよりここからは危険だから、私の側を離れないように」

「はーい!」


 ショナの元気な返事に女性冒険者は少しだけ笑みをこぼす。

 

 先ほど私達にちょっかいを出して来たエステリア学校の生徒はロナの指示には素直に従う。

 それが一番いいので見守っていると魔王教団の子供が被ったフードを冒険者が破ぶる。


 しかしその顔を見て、私達エステリア学校に通う生徒は驚いた……その顔は、この前の校長先生襲撃の事件で魔王教団に寝返った生徒達だった!!!!


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