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第141話 不穏な影


 短い休日は線香花火の如く、火の玉が落ちていく瞬間は儚く、そして直ぐに終わりを告げた。

 休日とは思えない程に色々な事があり、疲れなんて取れない。


 しかし、休日はずっと寮の外に居たのでデネブも私の事は忘れて関わらなくなるかもだし……!


 寮を出て学校へ向かい、教室へ――。

 

「おい!ルーク!!今日こそ俺様と戦い、負けて俺様のものになれ」


 という淡い期待を教室へ入った瞬間にその張本人によって裏切られる。

 ここまで5日に渡りなんとか回避し続けていた。

 これ以上避け続けるのは難しい……なぜならもう言い訳が思いつかないから。


 もう一度戦って負ける……?いや、なんか俺のモノになれとか言われそうだしそれは嫌だ!!

 勝ったらそれはまた同じ火種を生むだけ。


 そんなことを考えているとサツキが横から入って助けてくれる。


「デネブ、あまり彼女に関わらないでくれ」

「サツキ……邪魔だ!!お前は魔導騎士(エーテルナイト)だが()魔導騎士(エーテルナイト)では無い!俺様の邪魔をするな」

「……なんだと?」

「自分が1番よく理解しているだろう?革新派は魔導騎士(エーテルナイト)を先祖に持っている。だがお前は――」


 どうして革新派と保守派に分かれているのかその理由がこの一言でわかった気がした。

 革新派は皆が星を由来とした名前と先祖の魔導騎士(エーテルナイト)の血を引いている。

 

 由緒正しい風習、血縁が革新派の原動力になる。


 一方でサツキは転生者、何処の馬の骨かも分からない所から突然現れて魔導騎士(エーテルナイト)を名乗る……正当な血を引いている人達からしたら保守派の転生者は邪魔ものでしかない。


 さらには転生者と言うことでこの世界を知らないし、女神に転生を許されるだけあっていい人ばかりだからか強い態度を取る人が居ない。

 それは一見保守派の雰囲気がいいアットホームなグループだと考えるかもしれない。

 しかし威厳を持った人が居なくてサツキ達のような温厚な人が多いから舐められてしまう。

 

 だからこんなにも性格に違いがあるんだ。

 確かにサツキはあまり強気な性格とは言えない。

 腕に自信のある態度を取っているものの、穏やかで優しい。


 しかし今回はそんなサツキのイメージとは裏腹に彼は威厳を見せてデネブに対峙する。


「そうか、だが保守派が人数の多い革新派に埋もれていない理由もまたデネブは知っているはずだ」

「はぁ!?お前達に何が……」

「神の祝福」

「――ッ!」


 祝福……?


 一体どういうことだろうか、魔導騎士(エーテルナイト)は魔法と剣を本来なら同時に使えないというこの世界の仕組みの枠組みから外れている。それはデネブにだって当てはまる。


 力の差に違いはほとんどない。

 しかしそれは私たちから見た視点、本人達には何かお互いに理解してることがあるのだろうか。


 サツキに言われて勢いが落ちたデネブは諦めて私の下を去って行く。


「ふぅ……まったくあいつは……」

「あ、ありがとうございます」

「あ……あぁ、また何かあれば言ってくれ」

「はい……!」


 サツキが居れば面倒な事に巻き込まれずに済みそうだ!

 今日一日は大人しくしているだろうし、気を緩めても大丈夫だよね。

 朝からデネブに何か言われるからと学校へ行きたくなかったんだけど、案外普通に過ごせそうだ。


 移動授業で廊下を歩く際にデネブとすれ違うがサツキがずっと居たおかげで何も言われずにそのまま通りすぎて行った。


「大丈夫そうだな」

「……まあ今回は近くに居る事を許してあげるわ」

「フーリアは相変わらず厳しいな」

「名前を呼ばないで」

「はい……」

 

 いつも通りの2人の会話を聞き流していると廊下から見える窓、その先の木にボロボロの服を着た少女が立っているのが見えた。

 それはマレフィックが連れていた奴隷に似ている。


 ただフードを深くかぶっていて確証はない。

 しかしその子から見つめられているとなんだか寒気がする。まるで、そう……彼女からは逃げられないと訴えかけられているような……。


 私も彼女から目を離さずにずっと外を見ていると――。


「ルーク、どこを見てるの?」

「え……ああ」


 外への視線を外して声を掛けてきたフーリアの方を見る。

 フーリアも知っているわけだし、一応伝えておいた方が良いだろう。


「あそこにあの時の奴隷の子が……」


 再びそこへ視線を向けて指を差す。

 しかしそこにはあの時の奴隷は居なかった。


「奴隷?居ないじゃない」

「あれー?」


 気のせいだった……?


 いや確かにそこには人が居たはずだ。だってあの奴隷から嫌な気配を感じたのは確かだから。

 何か起こるかもしれないと学校では身構えていたものの、次の週末まで特に何事も無く、休みの日が近づいてきた。

 

 また休みの日なので皆で依頼を受ける……と思っていたんだけど、そこへフーリアが休みの日の前半は無理という。


「珍しいね。ホワイト家として認められるために依頼を受けると思ってた」

「私にも休みの日が必要なの、私は街へ行くから3人で依頼でも受けて来たら?」

「いやぁ~フーリアが居ないなら無しでもいいかな?どう二人とも?」


 ショナに聞かれて私とユウリは即座に頷いた。

 

 どうやらユウリもあまり動きたくないみたいだ。依頼を受けると言われれば行くけど、行かなくていいのなら寮でのんびりしていたい。


「相変わらずね……じゃあ私はフーリアと一緒に街へ――」

「それはやめて、私一人で行くから」

「えぇ……でも……」

「たまには一人にして」

「え……う、うん」


 なんだか空気が悪くなってきた。

 こんなのは最初の頃なら日常茶飯事だったんだけど、最近はフーリアも砕けて来て皆と仲良く話している所を見るようになった。


 だからそんな心配は必要ないと思っていたんだけど……まさか初期の頃に戻っちゃった……?

 ただ、一応幼い頃を知っている私には何かを隠しているように見えた。

 

 それが分からないまま私達は夜遅かったので各々の部屋へ戻り、眠りに付いたのだった。

 

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