第140話 勇者ルーク
4人の冒険者チームは悪い女神を倒すために共に戦い勝利を収めた。
「冒険者チームハスノハは勇者ルークと共に闇の女神を倒したか……」
「これってバレンタインの勇者ルークの話……?」
「というよりは大昔の世界を賭けた戦いの歴史みたいだ」
そう言えばバレンタインの魔法は先祖の人が不死鳥を食べて使えるようになったって言っていた。
これの事だったんだ……。
いつ頃なのか年も書いてあってこの世界が出来て500年後の話みたい。
「そんな昔からバレンタインの魔法があったのね」
「いや……どんな胃袋してるの……私のご先祖様は」
「だけどバレンタインの名は勇者ルークのだったし、その赤髪の女性がルークの先祖でしょ」
「あーそっか!」
こんな予想外な所にこの世界で起きた一部の大戦の記録が眠っていた。
誰もこれを見つけられなかったのは湖の中に埋まっていて、水の供給が行き届くようになったことで放置されたのが原因か。
しかしどうしてこんな所に歴史を書いた祠があるのか謎だけど……。
「というかマレフィックって秘密があるって言ってたの……これじゃない?」
「「「「あ……」」」」
偶然、巨大ワニがここを住処にしている事で今まで隠れていたから勘違いしたのか。
巨大ワニの討伐の目的は人里へ下りてくる前に退治することと、街の施設を拡大するため。
元々エステリアの水を汲む施設として昔使われていた場所を他の用途で使うために国が依頼してきたものだった。
「この遺跡もそうだけど……今回の依頼の事どうしよ……」
「巨大ワニは取られちゃったから私達が討伐したって言えないし」
「それはとりあえずギルマスに相談しよう」
今回の依頼に結果についてギルマスに相談するため遺跡をこのまま残してその場を後にした。
道中にマレフィックと鉢合わせる事は無く、安全に街に辿り着けたのは幸運だった。
しかしマレフィックが巨大なワニを運んでいるのなら嫌でも目立つんだけどね。
見ていないという事はこの街へは入っていないと考えていい。
「くそ……あのゴミ居ないわね」
「それマレフィックの前で言っちゃダメだからね?さ、切り替えてギルマスに相談しよ」
既にギルドまで戻ってきたので中へ入ってギルマスに今回あったことを話した。
そういえばどさくさに紛れてサツキも付いてきている。
「話は全て理解した。しかしそこの魔導騎士様は?」
「一応居合わせていたので」
「なるほど巨大ワニは倒せたんだね?」
ギルマスは私達に……ではなくサツキに問う。
「ルーク以外の三人で動きを封じ、尻尾を斬り落としていたので、尻尾を斬らずにもっと柔らかいお腹辺りを狙っていれば勝てていたと思います」
「え……尻尾を斬るのって間違いだった……?」
某ハンティングゲームなら素材が手に入るから率先して斬り落とすけど、普通は倒したら尻尾も手に入るわけで……。
そもそもそんな事をしても討伐依頼の魔物や動物の死骸はギルドへ持っていかれる。
だからそんなことはせず柔らかいお腹から抉って内臓でも切り裂いてやればすぐに片付いた。そこまで持っていくのが大変でもショナとユウリが動きを封じたので可能だろう。
それを知ったフーリアは絶望の表情を浮かべ、地面に両手を付いてがっかりしていた。
「あはは……やっぱり作戦はルークが居ないとダメだね~」
「ショナだって気づいてたでしょ」
「私が言ってもフーリアは聞かないもん」
フーリアはやたら私への態度が冷たいのに指示は聞いてるわけだし……。
「お前は逆に炎の魔法で広い沼の水を抜くというのは……ぶっ飛んでいるぞ」
「そうですかね……?」
「さっき話しに聞いたバレンタインの血筋の子もぶっ飛んだことをしていたみたいだしな」
「あはは……そういえば、あの遺跡についてはどうしますか?」
「国の方へ連絡しておく」
「クレスト王子にですか」
「クレスト王子……?ここで言うのも少々アレだが、あの方は既に覇権争いに敗れているから今回の依頼に関係ないぞ」
「えっ……そうなんだ」
なんでも私達がハーベストへ行っている間に魔王教団を退けるために第一王子が軍を率いて討伐した。全てじゃないけどだいたいの魔王教団を倒したことで市民の心を掴むことに成功したという。
この依頼も第一王子が出したものみたい。
学校では特に変わりのない態度だったけど……最初に会った時は覇権争いに参加して王の名を我がモノにしようとしていた気がするけど。
強がっていたのね。
「まあ話を聞く限り巨大ワニは倒せていたという事なので依頼は達成で良いわ」
「本当ですか!?」
「巨大ワニ討伐の真の目的はその先に新たな土地を確保するというモノだから、それは叶ったわけだし」
依頼失敗と言われてもおかしくなかったけど何とかそうはならなかった。
依頼の金額も相当なものだし、私としては満足なんだけど……フーリア達はあまり納得していない様子だった。
盗まれた巨大ワニは一体どこへ行ったのか……しかし何はともあれ依頼達成したのでこれでこの話はこれで終わり!
私達はサツキと別れて寮へ戻った。
気分を変えるために受けた依頼なのにマレフィックという新たな強敵を出会ってしまうという不運に見舞われたものの、悪い事ばかりじゃなくて悪い女神が居る事が分かった。
なんとなくだけどあの歴史は私とは無関係じゃない……そんな気がする。