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第13話 剣士の意味


 クレストとの模擬戦は瞬時に決着がついた。

 私の敗北でこの戦いは終わった。


 聖剣の力をほとんど使わずに剣術だけで戦ったら瞬殺された……。


 

 クレストは自身の聖剣を腰へ戻す。


「君の実力はだいたい分かった。正直……剣士向いていないんじゃない?」

「……」

「あー……やめろと言ってるわけじゃない。ただ……君の剣は純粋すぎる。教科書通り過ぎて読みやすいし、少しでもズラしてやればそれに対応できないだろ?」

「――ッ!!」


 剣士として向いていないというのは私に魔法や剣術を教えてくれたダインスレイブ師匠せんせいも言っていた。


 その時は前世の記憶もあって刀を使ってみたかった。

 だけど日に日に私は本当に剣士でいいのだろうか?と自問自答して悩むことは多々あり、クレストから向いていないと言われて今まで感じていた気持ちが溢れてくる。


 悔しい……せっかく強い聖剣と契約しているのに剣術がこうもあっさり見抜かれたことに……。

 精神はずっと大人なのにまだ幼い身体のせいか目から涙が出てくる。

 

「ちょ……泣かすつもりはなかったんだが」

「うぅ……」


 逆にそんなことを言われると悔しさがさらに溢れてくる。

 

 くそ……どうして……!!こんなみっともない姿を見られたくないのに……!!

 

 身体が言う事を聞かない……これは身体がまだ成長しきっていないからだろうか。自分はもう大人だと思っていた。

 前世の記憶があるから……でもどうやら自分でも気づかない内にはルークと言う一人の人間になっていたのかもしれない。


「やべ……あーでも君の剣は凄いよ!聖剣との契約は才能が必要だから……?」

「き、気を使わなくても大丈夫です……わ、分かってはいたので……」

「あれ……そうなのか?というか……」

「な、何ですか?」

「いや、結構冷静な子だと思っていたら悔しくて泣くような所もあって……大人っぽいのに子供っぽいというか、不思議な奴だな」

「え……」


 これも転生という本来はありえない自称が起こした結果なのかもしれない。

 涙を拭いながら背を向けて離れていくクレストを見送る。

 

「悔しさで泣ける奴は伸びしろがある。またな」


 そう言って去って行く……。

 授業も終わり、寮へ戻る……汗を流すためにお風呂へ入りたい。しかし大浴場を使えるんだけど、なんせ色々刺激が強いんだよね。

 

 もちろん嫌では無いんだが、何というか後ろめたい気持ちが勝ってしまう。

 しかし変な汗を掻いてしまったし、ベタベタで流さないと気持ち悪い……か。

 仕方ないよね……これは人間がただ自分の身体を洗う行為……生理現象に似たものだ。


 決して女生徒の裸を見たいわけじゃない!!!!


 そんなことを考えながら寮へ戻る際中――

 

「クレスト王子!アレは一体どういうことですか!?」

「アレって……君の事を弱いと言ったこと?」


 寮へ帰る途中にある木の陰にフーリアとクレストが会話しているのが見えた。

 何を話しているのか知らないけど……こんな隠れてする話の内容は聞かれたくないはず……。

 

 2人の会話に入る気にはなれなかったので魔法で周りの音を遮断する。

 そうすることで万が一フーリアがえげつない事を言っても誰にも聞かれない。

 これでも魔導士の家系だから魔法は人並み以上に使える。

 

 魔導士でもいいんだけど、もう剣士としてこの学校へ入学したわけだからこのままでいくしかない。魔法と剣は一緒に使えないというのがこの世界の理だから。

 それを唯一使える魔導騎士(エーテルナイト)という存在は神のように崇められている。


 が、それはその血筋だけのはずだから、どこからともなく魔導騎士(エーテルナイト)を名乗る一般人は異端者とみたされる。

 なのでもう魔導士は名乗れない。

 

 それにまだ刀を諦めていない。


「違います!あの子を……ルークを泣かせたことです!!」

「えぇ……」

「えっ……」


 まさかの話の内容だった。ある意味他に聞かれたくないので魔法で音を外に出さないようにして正解だった……。

 とりあえず続きを聞こう。


「君はあの子と仲良いの?」

「……」

「正直君たち2人を見てそうは思えない。君が一方的に嫌っているように見えるから」

「……」

「さすがに何も応えてくれないと分からないんだが……どうして俺は呼び止められたのか本題に入ってくれないか?」


 俺は忙しいんだ……と小声で呟きながらフーリアの言葉を待つ。


「ルークを泣かせるのは私です」

「めちゃくちゃ仲悪いな」

「仲の良い悪いの問題じゃない。あなたには分からないでしょうけど」

「君は彼女が嫌いなの?」

「……そ、そんなことはない……けど。でも私はあの子を超えないといけない……あの子より強くなくてはならないの」

「どうして?」

「王子なら知っているのでは?」

「……家か、確か君は――」

「だから今後もし授業で戦うことがあるのなら、まずは私とお願いします」

「強くなりたいのか?」

「……そうですね」


 フーリアは私に勝つことに固執している。剣術なら向こうの方が遥かに上なのに……まだ聖剣を持っていないだけでいずれ手に入れたら私は絶対に勝てなくなるだろう。

 

 しかしクレストは家の事を話していた……フーリアは両親を失って親戚の人に引き取られた。

 

 その時に何かあったの……?

 

 フーリアの性格が変わったのにも原因はそこにありそうだね。

 あの子に何があったのか詳しく聞いてみる……?いや多分避けられるだろうし……。

 うーん……そう悩んでいた時だった。


「何してるんだ」

「え……ってクレスト王子!?」


 考え事をしていたせいでクレストの存在に気づけなかった。

 

 やばい!盗み聞きしていることがバレれば本格的にフーリアに嫌われる!!

 

 そんなことを考えながら周囲を見回す……がそこにフーリアの姿はなかった。


「フーリアなら部屋に戻ったよ」

「え……じゃあ」

「君が盗み聞きしているのはバレなかったな」

「そ、そうですか……」


 私は胸を撫で下ろす。

 しかし安心した私をクレストは否定するように手を振る。

 

「いやいや盗み聞きなんて、はしたない事をしてただで済むと?これはアレだね実家に報告しようか」

「えっ……」

「ただ……1つ話を聞いてくれるならチャラにしてやってもいい」

「……なんですか?」

「そう警戒するなよ。話を聞くとは文字通りだよ。ある少女のお話を……両親を失い、家を失いそうになっている哀れな子のね」

「まさかそれって……」

「ああ、フーリアの事だ」

 

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