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第137話 風の剣


 今回の依頼は3人にだけに任せることになったのでありったけの魔力を使って私は沼地の水を全て炎で蒸発させた。私が居なくてもやる気十分で今の彼女達なら大丈夫だろう。


 炎の超級魔法が沼に触れると蒸発、直後に凄まじい異臭と淀んだ霧が辺りを舞う。

 少なくなった魔力の残りを使って治癒の炎を使い汚い霧を浄化する。

 そして沼の水は全て消えて沼の中に居る巨大ワニが姿を現す。


 一応私の魔法を受けたはずだけど、ピンピンしている。よく見てみると鱗に水の魔法を使った形跡があった。

 水の魔法で私の炎を相殺したか……さすがに超級魔法と言えど大きな沼の水を蒸発させて水魔法で防御した巨大ワニを倒すことはできなかったか。


 私は水の抜かれた沼の底を覗いた。

 

「思っていたより大きい!!」


 体長は二階建ての一軒家の高さくらいはある。

 さらに魔法を使っていたという事で既に魔物化しているということ。


 野生の動物はある時、何の前触れもなく魔力を有して魔物へと変化を遂げる事がある。

 未だその謎は解明されておらずこの巨大ワニもどうして魔物になったのか分からない。

 

 その時、私は身体に力を入れられなくなった……魔力が切れてもうダメみたい。


「ルークはそこで見ていて」

「う……ん」

「……」

「フーリア?」


 なんだ、フーリアは焼けに私の事を見てくる。

 何故か私の方を見て頬を赤くして喜んでいるように見える。まさか魔力切れで動けない私を見て笑ってる!?


「せっかく珍しいモノが見られたけど、今はそれどころじゃないわね」

「……」

「見ていてね!私だって足手まといじゃないんだから」


 どうやら、あの時置いて行った事をフーリアは想像以上に気にしていたみたいだ。

 それにしても魔力切れで動けない私を見て笑うのはどうかと思うけど……。


 ――

 

 ようやくチャンスが来た!ルーク無しで|フーリア(私)とショナとユウリで強力な魔物を倒す時が!!

 

 いつもルークが居たから何とかなっていたけど、不満が無いわけじゃなかった。


 ルークは他が思っている以上に強い。身体能力は魔導士のくせに素人の剣士よりは高し、魔力量も多くて使える魔法も豊富。

 デリカシーの無い所以外は非の打ち所がない。


 だけど別に嫌いというわけじゃない。

 むしろ今、ルークが動けない姿を見て今なら殴ってでも意識を失わせてその身体を……。おっと、つい変な欲望が……。今は追冴えないと。

 

 ずっと距離を置いていたせいでこういう時に変な欲望が……。

 

「フーリア!手伝ってよ~!!」


 そんなことを考えているとは知らないショナは助けを求めてくる。

 

「分かってるわ!ルーク、一応何も無いと思うけど何かあったら叫んで助けに来るから」

「え……ありがとうございます」

「どうして改まったの?」

「さ、さぁ……」


 まさか私が変な事を考えている事に気づかれた?


 後で確認して考えている事が合っていたら……殴って忘れさせよう。

 私はそう心に決めて巨大ワニと戦っている2人の援護へ向かう。

 だけどショナとユウリの2人だけでもちゃんと戦えてる。


 ショナが雷の剣で翻弄してユウリが地面を操って巨大ワニの足を奪う。

 噛まれたら一撃で殺されてしまうけどショナの速さとユウリの支援魔法があれば噛まれる心配はない。


 問題は決め手に掛ける所かな。

 見ていて雷は巨大ワニの身体を全て覆う程じゃない。全力でやればできるんだろうけどそれをやると今のルークみたいにガス欠になってしまう。


 逆にルークはルミナの力を使ったとはいえ大きな湖を枯らす程の炎を使えるのは規格外なのよね。

 ショナくらいの強さが一般的なBランク冒険者でしょうね。


「私がとどめを差すからショナとユウリも援護よろしく!」

「おっけー!私達の力を見せつけるわよっ!」

「言われなくてもッ!」

 

 私が剣で斬りかかると巨大ワニは胴体を守るように尻尾を使って受け止めてくる。

 鱗が硬いのもあるけど……尻尾はより強固……鱗は紫色のオーラに包まれている。これがもしかして魔法かな……?

 

 いつもはルークの作戦があるからそれに従っているんだけど、今は無いので作戦なんてない。私が思った通りに戦う!!

 

 まずは尻尾を落とす!!


「アスタロト……斬り落とせ!!!!」


 風の勢いを乗せて尻尾を斬り落とそうとした時、巨大ワニの顔が左から近付いてくるのが視界の端から見えた。

 噛まれたら一環の終わりなので尻尾を斬り落とすことを諦めて巨大ワニから離れる。


「ショナ、あの口閉じられない?」

「嚙みつきの攻撃が怖いよね……雷を使って顎を麻痺させて動かなくするね」

「そんなこともできるのね」

「この雷の剣、知っての通り真名を知らないから最大限の力は発揮できないけど……それでもあの巨大ワニの顎を痺れさせる事は出来るから!!」


 それなら顎はショナとユウリに任せて私は尻尾を斬ることに集中する。

 巨大ワニは私が退いた後に間髪入れず向かってくる。

 しかしその追撃の矛先はユウリだった。


 ぽっちゃりしているせいで狙いやすいと考えたのかな。

 だけどそれは間違え……。

 ルークも相当規格外だけど、ユウリは魔体症という特別な体質を持っていて脂肪を魔力に変換できる。


 ルミナありのルークには敵わないけど無しなら一発の魔法の勢いは……他を寄せ付けない!!


大地の槍グランドロック!!」


 一部の地面の形状を巨大な岩盤の槍に変える。

 

 大きな地面の槍が2本作られて巨大ワニの胴体を捉える。

 地面の強度でもワニを貫ける可能性は低い……それはルークの炎を受けて生きているのが何よりの証拠。


 そこでユウリは反対方向にもう一本の矢を魔法で作り出し、二本の槍で巨大ワニをサンドする。巨大ワニは一時的に動きを封じられた。

 地面の槍に捉えられて身動きの取れない巨大ワニへ向かってショナが空中から舞い落ちる。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォンッ!!

 

 巨大ワニの頭の上にとまるで雷が落ちたような轟音が響く。

 するとショナの剣はワニの頭に突き刺さって雷が常時頭に流れる。当然顎にもね。

 巨大ワニの大きさから剣が脳まで貫くことはないけど、それでも目的は巨大ワニを痺れさせて動けなくする事。


 そしてその隙に私が……!!


「いっけぇ!!魔剣アスタロト!!!!」


 風を纏わせた剣が巨大ワニの尻尾を捉えて――瞬間、巨大ワニの尻尾は宙を舞った。

 私達3人でも十分かそれ以上に戦えた!!


 見たルーク!これが私達の力なんだからっ!

 そんなまさに勝ちを確信した時だった。


 空から一筋の光が縦細く現れて巨大ワニの胴体をあっさり真っ二つにした。

 ショナかと一瞬考えたけどそれはない。何故なら雷じゃなくてこれは……。


「魔剣の力!?」

 

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