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第136話 古の湖


 ギルドの依頼を受けてエステリアの街を出る!!

 目的は巨大ワニがいる沼地へ、その道中に綺麗な澄んだ自然の空気とその周りを冒険者が走り去っていき、魔物が逃げ惑っている光景を見てふと――。


「久しぶりの冒険者してる気がする」

「ハーベスト帝国でしてたでしょ」

「そうだけど……色々あった上に私はあの魔導騎士(エーテルナイト)に付きまとわれてたんだから!!」

「あーあのデブね」

「デネブだよ」


 この間違えを本人の前でしたらフーリアの首が飛びかねない。

 何度も訂正して教えないといけないのに全く直らない。


「その件ずっとやってるけど、そろそろ沼地に着くよ」

「結構遠いと思ってたけど、近いね」

「そこは元々エステリアの街の一部だったみたいで、昔はそこの湖から水を汲んでいたみたい」

「その湖が沼地に?」

「うん、元々大きい湖で建物も崩壊しているとか……ただ一部残っていると聞いた」


 昔の水を汲むための施設みたいなものか。

 現在は広い土地を確保して井戸を掘ってそこから水を使っている。

 

 さらに魔導士なら水を魔法で生み出せるのでそういった問題はほとんど聞かない。


 だから長い時を経て忘れ去られてしまったのね。

 

 街を出て少し歩くと小さな洞窟が見えてくる。その洞窟へ入り、そのさらに奥へ行くとそこには山に囲まれた臭くてボロボロな家々と沼地が見えてくる。


 空は山に囲まれているけど間から青い空の天井が広がっている。山の間から差し込む光が何とも神秘的だ。


「神様でも下りてきそう」

「こんな汚い沼に落ちたら大変だけどね」

「それもそうか」

 

 ちょうど昼時、太陽が真上に来て眩しい。

 昔ならきっと綺麗な湖に太陽の光が差し込んで幻想的だったんだろうけど……。

 

「ということでここが沼地」

「何というか、酷いね」


 というのも匂いは沼地だから当然と言わんばかりに悪臭が漂っているし、沼地の中には他ににょろにょろとした謎の生き物がいる。

 さらに周りの建物は崩壊していて沼地へ無造作に放り込まれている。


 エステリアは既にレンガの家が多く、今や時代も少しずつ進んでいる。

 が、ここは昔に捨ててしまった事もあってその姿を残している。


「えっと……じゃあ巨大ワニ探す?」

「沼地の中に居るんだよね?」

「そうなるね」

「入りたくないんだけど……」


 ……沼地の中に潜むワニなら中へ潜る方がフリだ。

 どうにかして外へ誘き出せればいいんだよね。

 

 とりあえず使えないであろう有力なプランを提案する。


「ユウリってこの沼の水飲める?」

「何言ってんの!?殺す気!?」

「いやぁ~なんか何でも食べられるみたいだし、もしかしたらと思って」

「……飲めるけど()だ」

「飲めるんだ」


 一応不可能なプランじゃない事に驚いた……。

 食べた物を魔力へ変換する魔体症、身体が吸収する前に魔力へ変えてしまえばお腹を下すことは無い。


「だけど臭いし、多分魔物の排泄物とかあるでしょ!それにこの量は無理!!!!」

「なるほど……じゃあこれは無しで」

「ルークってたまにえぐい事、考えるよね」


 無しとは言ったけど、そこまで分かったら他に使える手段はある。

 巨大ワニくらいならユウリが食べられるんじゃないかな?

 じゃあ最悪そのワニを誘き出して……。

 

「何か嫌な予感がするんだけど?」

「気のせいだよ」


 それをするにもまずはワニを引きずり出さないとね。

 一番可能性があって誰でも思いつく方法は餌を使う事だけど……。

 

「ちなみに餌は?」

「無い、お金が」

「そっちね」

 

 Aランク相当の冒険者なのに、何故か常にお金が無い。

 

 餌で釣る作戦もダメかぁ……。


 じゃあ現地調達か他に何かいい案があればいいんだけど……。

 なかなか広い範囲の沼地……普通の高校のグラウンドくらいはあるだろうか。

 色々な生物が居るけど、餌にはなりそうにないかな。

 

「私の魔法で沼地の水を抜く?」

「そんなことできるの!?」

「炎で蒸発させる」

「いやいや無理でしょ!!」

「ルミナの力を借りたら行けるよ」

「すごっ!?でも大丈夫なのそんなことして」

「捨てられた沼地だしいいんじゃない?ただ1つあるとすれば炎で干からびた後、私も同じように干からびて動けなくなるけどね」

「ダメじゃない」


 沼地の水さえなければ人間が有利に戦える。

 ワニも陸で動ける動物だけど、水の中で戦うと圧倒的に楽だしね。


 ちょっとやってみたかったんだけど仕方ない他にいい案を……。


「それでいきましょう」

「え!?フーリア正気?ルークのこんな案を飲むの?」

「ショナ、これはチャンスだよ」

「何が!?」

「ルークは動けなくて戦えない。巨大ワニは強力で勝てたら私達の自信にも繋がる」

「それはルークが居ても」

「それはダメ!なんか最近ルークだけ強くなってるし、ここで私達も強さを見せるべきだと思うの」

「えぇ……」

「ルークは私達の力を甘く見てる……だからこそ、あの時声を掛けてくれなかった」

「――ッ!!サジタリオン学長に手を借りた時……」

「そう、だから――」


 なんだか話が良くない方向へ向かっている気がする。

 後、別に私は皆を弱いとは思っていない。多分だけど、巨大ワニくらいなら3人でも勝てると思っている。


 死地を乗り越えてきたからこそ皆なら大丈夫だろう。

 問題は魔力を持っている点だけど……。


 って色々考えている間に話が進んでいて聞いていなかった。


「てことでやるわよルーク」

「私、皆の事を弱いとは思ってないからね」

「分かってる!だから見せて上げるわ」


 分かってないなぁ……これ。


 しかし既にもう3人で巨大ワニ討伐をする事で決まったらしい。何とも珍しくユウリでさえやる気だ。

 巨大ワニと言うくらいだし、私達が入ってきた洞窟は人が2人横並びでギリギリ入れる大きさ、最悪そこへ飛び込めば死ぬことは無いだろう。


 リゼルやレオと戦うよりも圧倒的に楽なはず。


「わ、分かった……魔法を撃った後、私は洞窟の中で見守ってるね」

「ええ、まずい時は逃げるから安心して!」

「それなら……お願いするわ」


 もう他の作戦は眼中にないみたいなのでもうやるしかなかった。

 こういう時の子供の子動力と言うのは恐ろしい。


 今回はルミナも力を貸してくれる。

 

 なんであの時、力を貸してくれなかったのか……。


 そんなことを考えながら私は沼地の空に見える太陽を覆う炎を魔法で生み出す。


「じゃあやるよ!超級魔法、炎星弾(えんせいだん)!!」

 

 巨大な炎の玉を湖の上空に出現させる。

 

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