第135話 討伐依頼
嫌なことは忘れてギルドで依頼を受けるために外へ出る。
学校を出てギルドへ、そして中に入ってようやくあの魔導騎士デネブの視界の外へ出ることが出来た!
「はぁ……ようやく解放された気がする」
「大袈裟よ。寮でも解放されてたでしょ」
「私が頻繁にトイレへ行く日、女子寮の中で知らないはずなのに、今日はお前、トイレに行きまくってるみたいだな?もしかしてあの日か?って学校で聞かれたんだよ?」
「え、きも」
あのショナですら辛辣な言葉が一瞬で出てくる。
あの事に思い出すだけで虫唾が走る!!
なんであのデネブが知っていたのか、それは私を監視するために女生徒を使っているからだと思う。
だから学校内でも寮内でも監視の目がずっと付きまとっていて最悪だった。
ギルド内なら完全に開放された気がして落ち込んでいた気分が少しだけ良くなった。
ちなみに当然のごとく、その場に居合わしたフーリアはそんなことを聞かれている私を見てデネブへ斬り掛かろうとしてた。いち早く察知していなければ何度も危なかくてそれもまた疲労の1つだったり……。
「どうしてアレはそこまで付きまとって来るんだろう」
「アレって……まあクズな魔導騎士はだいたいそんな感じだよ」
「見てきた人の言葉は強いね」
ショナはあまり人を蔑むような言葉を使わない、だからこそ彼女がそれを言葉にすると説得力がある。
ショナとはまた違った境遇だけど似たような経験をした理解者が出来てしまった。
あの行動を異常と考えるよりは魔導騎士なら当然と考えるべきか……。
「まあでも分からないことはないんだよね」
「ショナ……正気?」
「トイレの話じゃなくて!ほら最近のルークは2つのものが成長してきて女性的な魅力が増してるし」
そんなことを言われても……成長なんてどうしようもない。
「わかる」
「それに元々、顔はいいし」
「凄くわかる」
「……なんでフーリアが同意してるか分からないんだけど」
「えあ!?だからその……そういうことよ!!」
胸が大きくて顔もよればモテるというのは分かるけど、自分がそれに当てはまると言われてもあまりしっくりこない。自分を可愛いとは思えない。
鏡を毎朝見ているから慣れたか、この姿を受け入れているのか。
女神様が前世の私が……いや俺が考える可愛い女の子を具現化したみたいだけどね。
あの時変な事を考えるんじゃなかった……。
ギルド内でそんなくだらない話をしているとギルマスが話掛けてくる。
「ん、お前達来ていたのか」
「ギルマス!先日はありがとうございます!!」
「気にするな大切な仲間のためだ。それよりお前達学校は?」
「今日は休日ですよー」
「そうか、休養も大事だが勉学を励むことは忘れるな。学校なんて経験は贅沢者しか出来ないし、その時間はとても貴重だ」
「はーい!」
って小学生くらいの見た目の子に諭されてもなぁ。
前世の学生の頃、早く大人になりたいと思っていたのにいざそうなったらあの頃に戻りたいってなるんだ。
それをわかっているからこそ、今を大切にしたい。
なのにトラブルに次ぐトラブル!唯一の安寧の地はもはやこのギルドしかなかった。
「そういえばお前達に頼みたいことがあった」
「はぁ……さらば安寧の地」
「どうしたルーク」
「いえ!なんでもないです……」
ギルマスのお願いなんて安寧とは程遠いだろうからね。
それでも彼女には恩があるのでなるべくお願いは聞かないと割に合わない。
「まあいい、そこの依頼を張っている看板の中にあるが沼地に住む巨大ワニの討伐を頼みたい」
「聞いた感じ危ないような……あ、でも内容は普通?危なそうですが、普通の討伐依頼ですね」
「特殊な依頼とは逆になんなのか」
「魔導騎士や魔王教団を倒せとか」
「そんなことはさせないさ、と言っても全く無関係では無い」
その2つに無関係じゃないって言うのは少し引っかかる。
それに関わってスイレンの皆が傷つくのなら依頼は断るべきだ。
ただの巨大ワニ討伐ならいいけどそれ以上はダメ。
「と言ってもお前たちがハーベストへ行っている間に魔王教団を倒すために国とギルドが協力しているのは知っているな?」
「ルエリアで魔王教撲滅の作戦ですね」
「そうそれ、まだ終わっていなくて派遣された上級冒険者達がまだ帰っていないんだ。おそらく王国軍と一緒にまだ戦っている」
「ご苦労様です!!」
「ん、ありがとうショナ。そのせいで難しい依頼を受けられる冒険者がいないんだ」
なるほど……確かに魔王教団のせいで巨大ワニ討伐依頼が残っていると考えると無関係ではない。
だけどほとんど関係ないわね。
ショナ達もそれならと行きたい気持ちが伝わってくる。
こういうのを決めるのも一任されているから私が判断しないとね。
依頼書を見る限り普通の依頼だ。
ただ一つ気になるのは『巨大ワニは魔法を使う可能性大』という項目。
「魔物化してるんですか?」
「可能性の話だがな」
この世界の動物は魔物になる。普通の動物は魔力を持たないが、何らかの理由で魔力を持ち、人間にとって害だと判断されれば魔物として認定される。
ギルマスが馬をヴァンパイアホースへ変えたけど、あれもまた魔物化の一種だ。
「それで中級冒険者には向かわせていないんですね」
「魔物になると難易度がぐっと増す」
「私達は上級じゃないですよ?」
「マスタージャスミンから話は聞いた。お前達の実力はAランク相当!つまりルエリアで言う上級よ」
「なるほど……」
いつの間にかそこまでの評価を……だけどそれってルミナありきだよね?
そう考えるとちょっと不安ね。
「まあお前達の力を見せてくれ、もし出来たら上級冒険者としてみとめよう」
「本当!?」
そんな言葉にいち早く反応したのはフーリアだった。
迷っている私の方へ彼女は期待の眼差しを向けている。
うん、すごーく行きたそうな目だ。超可愛い。
内容を聞く限り面倒事じゃなくてただの討伐だしいっか!
結局私達はその巨大ワニ討伐依頼を受けることになった。
場所はエステリア近くの沼地!!




