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第133話 見せしめの試合

 

 学校が再開していきなり面倒な人に目を付けられてしまった。

 魔導騎士(エーテルナイト)の自己紹介という……まさに力を見せびらかす催しは私とデネブの試合とユウリ対マツバの試合以外は全敗だった。


 さすがと言うかクレストやフレイヤでも歯が立たない辺りは魔導騎士(エーテルナイト)という存在は別格と考えていいのかもしれない。

 だけど一番気になるのはフーリアの戦った相手だ。


 私の時みたいに何か言われていなければいいんだけど……。

 もしそうなっていたらあの子はどんな恐ろしい顔で出てくるのか。そんなことを想像して話すのを躊躇ったけど、聞かないと眠れそうにない。

 

 全試合終了後、負けたフーリアは怒っているかと思ったらそこまで不機嫌ではなかった。


「フーリア、相手はどうだった?」

「ん、相手のライブラって女子だったんだけど、魔導騎士(エーテルナイト)にしてはまともだったわよ」

「あれ?そうなの?」


 ここに居るサツキとマツバ以外はデネブみたいな人達しか居ないと思っていただけに意外だった。

 そっかフーリアはまともな人と戦えたんだ……。

 

「良かったぁ」


 心からの安堵だった。

 しかしそれを口にした瞬間、フーリアとは対照的に不機嫌なクレストとフレイヤの2人が怒りを露わにする。


「良くねぇよ……なんだよアイツ……俺さ権力を振りかざすのは好きじゃないがこれでも王族だぞ?」

「私だって誇り高いエルフなのに酷い事ばかり言われましたわ!!」


「「魔導騎士(エーテルナイト)め!!」」


 どうやらクレストとフレイヤは外れを引いたらしい。

 私と同じような事があったのかそれともそれ以上なのか、彼らの言い分だけでは想像しかできない。


「ルークも最悪な奴と当たったんだろ?」

「ですね……」

「なのに勝てるなんて凄いなお前」

「運が良かったというか……凄い舐められていたので」

「なるほど隙を突けたわけか……逆に何故か俺はずっと警戒されていた気がする」


 クレストとフレイヤの実力は魔導騎士(エーテルナイト)のような特異体質無しならトップクラスだからね。

 警戒したくなるのも無理はない。ましてや力を見せびらかすために行われた試合ともなれば絶対に負けたくなったはず……特に王族となると神には勝てないと力を行使するだろう。


 そうそれを分かっていたからこそ私だって負ける気で挑んだのだった。

 首元に剣を突き付けるまでの間に私の動きを捉えて攻撃してきて私はその攻撃を受ける。

 

 そして負ける算段だったのに!!

 一番最初に全力をみせてその後、負ければ手を抜いていると思われないはずだった。

 しかしデネブはそれに反応出来なかったのだ。

 

「まあ何か言われても俺達が居るから相談してくれ」


 そこへ魔導騎士(エーテルナイト)の人格者サツキが入ってくる。

 

「サツキ……ありがとうございます。ショナと戦ったんですよね?どうでした?」

「強かった。俺は魔法で水を操る事で水神剣の性質をフルで利用しているからそれがなければいい勝負をしていたはずだ」

「おお~」


 ハーベストでの戦いはショナを相当成長させたみたい。

 負けたショナもそんなことを言われて少し照れていた。


「ただ……意外だったのはユウリさんにマツバが負けた事だな」

「あー」


 サツキが気になってそのことをマツバに聞こうとした時、負けた本人は明後日の方向を見つめながら話を逸らそうとしていた。


 何か……あったのかな?


 ユウリを見てみると勝って喜んでいるというよりは恥ずかしさで顔を赤くしているように見える。


 本当に何があったの!?


 教える気はないみたいなので話はそこで終わり、教室へ戻ろうとしたその時――


「おい、お前……調子に乗るなよ」


 そこへちょうどサツキとマツバ以外の魔導騎士(エーテルナイト)様御一考がやってきた。

 話を聞いていないふりはまずい……か、声を掛けてきたのは私に負けたデネブだ。

 

「わ、私……ですか?」

「そうだ。偶然勝っただけだお前なんか……」

「デネブ、負け惜しみかい?」

「黙れアンドロメダ、俺が用のあるのはこの女だ」


 アンドロメダ……確かクレストが相手をした魔導騎士(エーテルナイト)

 紺色の長い髪に整った顔立ち、男性というよりは女性的な美形の男子生徒。


「そうか、まあ俺は勝ったけどな!しかもそこの王子に……デネブお前は……辺境の貴族それも女に負けたんじゃないか」

「ちっ……」


 なんだがついでに私も馬鹿にされた気がするんだけど……。

 なるほど、顔は良くても性格は本当に終わっているみたいだ。

 ただしクレストに勝ったという事は結構強いはず。


 是非とも関わり合いにはなりたくない。


「君はルークだったね。覚えておくよブスならともかく、君なら覚える価値はありそうだ」

「あ、ありがとうございます……」

「ふん」

 

 コイツまさか私の事をただの女としか見ていないのかな?

 嫌な連中に集中的に目を付けられてしまったのは最悪だけど、明日からは普通の授業だから大人しくして居れば忘れてくれないかな。


 そんな事を考えながら私達は険悪な空気の中、教室へ戻るのだった。

 今日は午前までだったので授業は終わって午後からは自由時間。


 寮の外へ出て遊びに行きたいところだけど今日は大人しくすることを選ぶ。

 そんな私をしり目にフーリアは剣を強く握りしめて部屋を出て行こうとする。


「フーリアどうしたの?稽古?」

「いいえ、あのデブとかいう奴を殺しに行くわ」

「デブじゃなくてデネブね。ダメだよさすがに」

「だけどあいつ……!!」


 同じ女性として許せない気持ちは凄く分かるけど、言われているのは前世では男の私。

 気にはするけどそこまで深くは考えない。それよりもまずはフーリアを止めないと!!

 

 力ずくでデブ……デネブを殺しに行こうとするフーリアを止める。

 

 やがて観念して諦めてくれたものの、午後の授業は無かったというのにやたら疲れる一日だった。

 

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