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第131話 魔剣パンドラ


 じゃんけんの結果、私はサツキかマツバとは戦わない試合に選ばれた。

 確率二分の一をうまく外した感じだね。

 サツキとマツバと戦うのはショナとユウリで私とフーリアは革新派の魔導騎士(エーテルナイト)が対戦相手になる。


「……もう少しちゃんと決めた方が良かったんじゃ……」

「もう先生に言っちゃったし、取り消せないよ!取り消す気もないしね」

「そ、そうか……気を付けてねルーク……」

「フーリアもね」


 まああの子の剣術は私より遥かに高いから心配しなくても大丈夫かな。

 問題があるとすればやっぱり私だよね……。最悪殺されるのなら魔法を使うつもりでいる。


「まあでも革新派にも保守派と同じ考えの人は居ると聞いたことがあるからその人と当たることを願ってるよ」

「そんな人も居るんですね」

「革新派の考え方は過激過ぎるから、だからついていけないって子や似た思想を持って居てるけどそこまで過激な事はしたくないって人もいるらしい……まあ誰かまでは分からないんだけどな」

「それに当たることを願っています」


 そういう連中が居れくれるのは助かるんだけど、サツキの口ぶりからしても少なそうだ。

 それでも少しだけ希望が見えた。

 自分で言うのもなんだけど私は運がいい方なんだよね。


 前世は安くても宝くじを当てたり、ネットの抽選に何度も当たるくらいには運がいい。

 このじゃんけんですら望み通りの結果になったんだし、ここからもその運が活躍してくれるはず。


 そんな良く分からない自信を持ってグラウンドへ足を踏み入れる。

 フーリアやサツキ達は自分達の事よりも私の事ばかり心配しているようでグラウンド内の指定された場所へ向かうまでの間ずっと後ろから見られていた。

 

 グラウンドは広いので6試合を同時に行う事ができる。

 1年生の次に二年生、そして三年生の順番なので私達は早めに試合が行われる。


 私は決めてられた番号の書かれた所へ向かう。


 さて……私の相手は……。


「お前が俺様の相手か?」

「……は、はい」


 自分の事を俺様と呼び、腕を組んで顎を上げて上から目線……。

 口調や態度から物凄く嫌なタイプな人間って言うのが分かる。


 どうやら私は外れを引いてしまったみたい。

 フーリアもこんなのと戦っていたりするのかなぁ。


「おいお前」

「あ……はい?」


 余計な事を考えていて心ここに有らずとバレたのか相手の反感を買ってしまったみたい。

 気を付けないと……せめて私は安全に負ける事が目的なんだから。

 態度の悪い魔導騎士(エーテルナイト)は黙ってこちらを見ている。


 どうしたんだろう?そんなことを考えていると対戦相手は呆れたように言う。

 

「はぁ……名前は」

「あ……ルーク=バレンタインです」

「ルークだと?」

「は、はい」


 この人は私のことを知ってるのだろうか?


 あ、それか私の先祖様の名前を知っていて気づいたとかかな。

 

「ふん、まあいい……何も知らない者が適当に付けたんだろう」

「……」

「全く……お前ら人間は神である俺様に会ったら最初から名乗れよ」

「……すみません」


 コイツの顔面に炎帝剣をぶち込みたい!!けど我慢よルーク。

 相手は魔導騎士(エーテルナイト)、最初から負けるつもりでここに居る。

 何を隠そう私はフレイヤに敗北した時もフーリアと剣術の授業で対戦するときも相手に気づかれず負けてきた。


 負ける事には自信があるのよ!!


「良いのは顔くらいだな……いや身体も良く見ると……」


 そう言うと目を合わせて話していたのに視線を下へ落としてジロジロみてくる。

 

 うわぁ……だからサラシを巻いて胸を潰していたのに……!!


 最近日を増すごとに胸が成長しているから分かってはいたんだけど……。

 たまに剣を振るう時、何故か足元が見えない事に気づき始めたのがきっかけ。

 なるべく潰しているんだけど、残念ながらそれには限界があった。

 

 前世の記憶があるからこそ男からのそう言った目はめちゃくちゃ嫌だ。


「俺様の名前はデネブ。お前、俺様の女になるなら今日くらいは花を持たせてやってもいいぜ?」

「い、一応剣士の端くれなので負けても勝負はしてみたいです……」

「俺様の側に居ればそんなことしなくていいのに、まあいい。じゃあ叩きのめして教えてやるよ」


 ……さっきまで側に来いという割に暴力で解決するんだ……。

 暴力で支配しようという考えには呆れてしまう。


 フーリアもこんなのと戦ってるのかな……どちらかというと私よりもあの子の方が心配かな。


「じゃあとっととやるか。ちなみに俺の魔法は多重属性(マルチスペル)全ての魔法を使えるし最強の魔剣を持っている!」

「な、なるほど……」


 全ての魔法と言っても属性だろうか……私だって初級なら全属性の魔法を使えるのに本当に傲慢な人ね。

 後、気になるのは魔剣ということ……最強の剣なんて聞いたこと無いから適当を言っているだけだと思うけど。

 

 確実に勝てると思っているからこその余裕……ぶっ倒してやりたいけど、それは出来てもしない。

 大人しく負けよう。


 ただ形式上は戦わないとね……!

 

「炎帝剣!」

「それがお前の剣か。お前が振るうには大きすぎるだろ」


 炎帝剣を持つ私を笑いながら見つめるデネブ。

 サイズは私との身長の約3分の2……正直大きいけど、ちゃんと扱えている。


「じゃあ行くぜ来い魔剣パンドラ!!」


 黒くて禍々しい渦模様が目に見える刀身の魔剣をデネブは鞘から抜き放つ。

 なかなか奇抜なデザインをしている……聖剣や魔剣と言った契約必須の武器は持つものによって見た目を変える。


 私の炎帝剣は日本刀のような見た目をしている。

 それは元が日本人だからだろう。


 だからこそデネブの剣を見てわかる、こいつは相当嫌なタイプの人間だ。

 そんな禍々しい剣を嫌がるどころか愛おしそうな目で見つめる姿を見て若干引く。


「さて……じゃあ分からせてやるよ」

「た、対戦よろしくお願いします……」


 こんなのでも礼儀をみせないといけない事に不満を感じつつ、試合が始まる。

 なるべく、気づかれず無様に負けよう。


 私が負けた後にニヤニヤ笑う所を想像するとムカつくけど!!!!!!!!

 

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