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第130話 疑似闘技


 まだそこまで長くない新学長サジタリオン朝の挨拶を遮ったのは今日編入してきた3年生の魔導騎士(エーテルナイト)だった。

 サジタリオンは表情こそいつものように柔らかいんだけど、どこか不安そうだ。

 

「どうしたんですか?オリオンくん……まだ挨拶は終わっていませんよ」

「そんな長ったらしい話はどうでもいい。とっとと俺達の紹介をしろ」

「言われなくてもそのつもりですよ」

「ふん、じゃあ早くしろ。こんな寒い()にずっと居たくない」

「わかりました……」


 庭……一応名門学校のグラウンドなだけに広大な広さで魔法や剣の試合なら一度に6組はできるくらいはある。

 魔法は爆発とかあるけどそれでも隣の試合を巻き込まないくらいの広さはある。

 

 いや、だからこそ庭とわざと口にしたんだろう。

 あれが3年でよかった……少なくとも1年の私達が関わる事は無い。


 その後サジタリオンは挨拶をすぐに終えて魔導騎士(エーテルナイト)の自己紹介へ入る。

 

 自己紹介は大体終わり、分かっていた通り保守派の魔導騎士(エーテルナイト)は星の名前の人は居なくて何人か日本人の名前もあった。

 そして革新派の14人は星の名前……。


 人数が多すぎる。

 しかも自己紹介中は保守派は大人しいのに対して、革新派は全員の態度が大きくて場の空気が悪い。

 

 学校はほぼ半壊して私達が使っていた教室も襲撃の時に消えていた。

 だから一新して綺麗な教室に建て替えられている。


 それにしても2ヶ月で良く学校を立て直せるな。これも魔法のおかげか。

 教室の中には新たに魔導騎士(エーテルナイト)が6人、入った。

 それでも元々100人居た1年生は半数が襲撃で魔王教団へ行ってしまい、60人満たない。


 そのため教室も2つだけに別れている。

 AクラスとBクラスがあってAは比較的優秀な魔導士や剣士の人が居る。

 意外なのは私がAに配属されたという事。

 

「なんでA」

「私達の実力なら当然よルーク。誇りを持ちなさい」

「フーリアはAで良かったの?」

「当然よ」


 私達スイレン4人はAクラスに入った。

 おそらくそのスイレンでの活躍がAクラスへ押し上げたんだろう。

 まだ16の子供にしては珍しく、Bランク冒険者だからね。


 先生が来るまで隣りに居るフーリアと話をしているとそこへ見たことのある気がする男子生徒が話しかけてきた。

 

「それにしても君もAとはさすがだね」

「……誰ですか?」

「……クレスト……この国の王子だが?」

「あー……」


 クレスト王子……そういえばそんな人も居たような……。

 そんなに長い間離れていたわけじゃないけど、すっかり忘れていた。


 そんな私達の会話に横から入ってくるのは美しい金色の髪を持つ女生徒フレイヤだ。

 

「私の事は覚えておりますか?」

「フレイヤさんですね」

「……なんで俺は忘れたんだよ」


 この2人もまた実力を持った生徒というわけでAクラスか。

 当然だけどこのクラスには今回編入してきた魔導騎士(エーテルナイト)が6人居る。当然権力の力だけじゃなく、実力を持っているんだろう。


 おそらくはクレストやフレイヤを超えている。

 珍しい人達と話をしていると教室へ先生が入ってきた。

 

 先生は最初の挨拶を終えてこれからの事を説明してくれる。というのも今日の授業は午前まで、午後からは自由時間。

 また明日から通常の授業が始まるという。


 ただ今日の午前の授業は特殊で新しく編入してきた魔導騎士(エーテルナイト)が実力を示すために一部の生徒を使って疑似闘技大会が行われる。

 6試合を同時に行い、元からいる生徒の中でも強い6人を選抜する。


 サツキはその話を聞いた時、私に近づいて来て小さい事で呟く。


「これはサジタリオン様の命令じゃない……あの人はそんな見せしめるようなことはしないからな」

「じゃあ……」

「革新派が何かしたんだろう」


 片方の意見を信じるべきじゃないのかもしれないけど、朝の挨拶を妨害をしているを見るとありえるね。

 そして意外な事に私達スイレンとクレストとフレイヤが疑似闘技参加者として選ばれる。

 

 私達6人は先生の説明が終わった後、すぐに行われる疑似闘技大会の試合の順番を決めなければならない。

 

「最初は誰が行きますか?」


 フレイヤが率先してスレインの私達とクレストに確認を取る。

 そんな私達の話し合いにサツキが入ってくる。


「君達の中で一番弱いのは誰だ?」

「な……なんでしょうか魔導騎士(エーテルナイト)様」

「サツキでいいよ。俺は朝の挨拶を妨害するような連中とは違う」

「はぁ……」

「それより弱いのは?2人選んでくれ」

「どうして2人?」

「俺とマツバにその子達をぶつけてくれ」

「……」


 それだけ聞くと口には出さなくても弱い者いじめをしたいんじゃないか。

 そう考えるのが妥当か。

 仕方ない……ここは私達とサツキの関係を話してスムーズに進めるしかない。

 バレンタイン襲撃事件は既に王都であるエステリアには広まっている。今更隠す必要も無い。

 

「つまりあなた達はこの方達と協力して敵さんを退けたのですか?」

「はい……なのでこのサツキとマツバは良い人です!」

「ほう……」


 私が2人を呼び捨てしたことでその関係も嘘ではないと伝わってくれればいい。

 フレイヤは少し考えた後、私達スイレンの方を見る。


「私は少なくともスイレンの方々一人一人よりは強いはずです」


 確かに前の試験じゃ私はフレイヤに負けた。

 この学校では剣しか使えないので仕方ないとしても魔法を使えば分からない。

 それでもここで事実は言えないので私はその意見を否定しない。


 何故ならサツキとマツバには私以外の3人の内2人が戦って欲しいから。

 変な奴に目を付けられる可能性を考えるとそっちのほうがいい。

 クレストも自信満々に俺は一番強い!!と言うのでこれでサツキとマツバとの対戦カードは確保することに成功した。


「じゃあフーリア達3人で」

 

「「「いやルークでしょ」」」


 安全な戦いができる2枠の内1つを私にくれるというスイレンの3人。

 どうしてそんなことを言うのか……。

 

「なんで?」

「だって剣士でしょルーク」

「……」


 そっか剣士だと私……クソ弱いんだった。

 スイレンとして活躍できたのは魔導士だったから。

 それを考えて私に枠をくれたわけか。


「そうするべきだ。君の話は聞いた……君の実力じゃぼこぼこにされるだけ……それなら俺と戦おう」

「……」


 その言葉に対してはフーリアは何も言わなかった。

 戦わせることには賛成というわけか……。こういう時だけ協力しないで欲しい。


 確かにそれなら私は安全だけど、それじゃあ残り2人は……!!


 もし万が一の事があったら嫌だから私は引き下がらない。

 せめて私以外の3人の中から2人が選ばれる可能性のある方法を選びたい。


「私だって戦うから大丈夫、万が一の時は……」

「ルーク!わがまま言わないで安全な所に居て」

「それはいや!!」

「はぁ!?」

「……じゃんけんよ……それで決めよう!!」


 実力が伴わないというのなら仕方ない……こうなったら公平性を考えた最終手段を取る。

 最悪私が選ばれるかもしれないけど、皆が安全になる可能性があるなら……。

 私は一世一代の賭けに出る……おそらくこれは生涯一番緊張したじゃんけんだろう。

 

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