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第128話 出生の記憶


 エステリアの街へ戻った後、まだ学校が始まるまで2日程余裕があったのでハーベスト帝国で実績を積んできたこともあり、ギルドで依頼を受けようと顔を出した。

 ヴァンパイアホースを貸してくれたお礼も言いたかったしね。


 しかし――。

 

「ギルマスは今日、居ないのかな?」

「今の所……見えないね」

「じゃあもう……帰る?」


 ギルマスにお礼を伝える事は出来なかったモノのせっかく来たのなら依頼を受けたい。

 だが、ユウリは最後にそんな一言を加える。

 

「寮でもいいけど、ずっと大人しくしてられないのよ!」

「それには同感ね」

 

 というのもショナは私がどこかへ逃げないようにずっと手を掴んでくるし、フーリアは私から一度も目を逸らさない。


 寝る時は個人の寝室があるのに昨晩はずっとくっついてきた。

 私は確かに今は女だけど、薄い記憶の中に男性だった頃の記憶だってある。だから色々と大変だから放してほしいんだけど……。

 

 後、2人の胸……ショナの小さいモノとフーリアの……あれは胸いや鋤骨?が当たっている。

 正直両方とも痛い。

 

「さすがにもう置いて行ったりしないってば……」

「ダメッ!ルークはこのパーティに必要なの!!」

「ショナ、抱き着かないで……恥ずかしい」

「私達は凄い冒険者になる。そのためにはルークの力は必要不可欠なのよっ!」


 だからってずっと抱き着かれていてもまともに依頼を受けられないんだけど……これじゃあ色々誤解を生む。

 部屋に居ても良かったんだけどそれこそ人目を気にせずさまざまな角度から抱き着いてくる。


 それよりは外へ出て抱き着かれないようにと考えていたんだけど、結局この有様である。

 

「お前達、遠目で見ているとルークを取り合ってるように見えるぞ」


 そんな話をしている間にギルマスがやってきた。

 

「ギルマス!昨日は馬を貸していただいてありがとうございます!!」

「良いのよ……それよりルーク、話があるのだけれど」

「な、なんですか?」

「ギルドの奥の方で」


 どうやら私達スイレンに話というよりは私に話があるみたい。

 話を聞くのは良いんだけど今の状態の私をフーリア達が1人にしてくれるとは思えない。


 早速話を聞いてショナの私の手を握る力が強くなる。

 ちなみにこの子は剣士なので超痛い。


「ルークを1人にはできません!!」

「いや、話をするから1人で……」

「ダメです!!」

「……愛されているな」


 嬉しいし照れくさいけどこれからの事を考えるとすごく大変そうだ。

 ギルマスは私とだけ話をしたかったみたいだけど、仕方が無いという事でフーリア達も聞いていいと言ってくれた。

 ギルドの奥の部屋に入ってギルマスの話を聞く。


「まずはバレンタインの街はどうだった?」


 昨日の事なのでまだここまで話は来ていない。

 ヴァンパイアホースを貸してくれたのもあるし、何があったのか説明するべきだろう。

 今更だけどフーリア達にも細かい事は説明していないので何があったのか事細かに説明した。


「アーミアさんが元ホワイト家の当主と入れ替わったんですか?」

「正確には身体を乗っ取られた……ですかね」

「ふむぅ……?」

「後、一番危険なのが神秘剣です」

「ホワイトの宝剣を取られたか……」


 まだそのことはフーリアに言ってなかったので驚かれると思ったんだけど、意外にも彼女は冷静に話を聞いていた。

 なんだか考えこんでいるみたい。


 気になったので何を考えているのかフーリアへ訪ねる。

 

「そいつから剣を奪えばいちいちホワイト家当主にならなくても力を示せるじゃない!!」

「なるほど……フーリアの親戚の人に宝剣は隠されていたけど、それが他に渡る事で奪えるチャンスができるのね」

「ええ!元ホワイト当主……そいつを倒せばいい。こっちの方が単純で良いわ」


 取り乱すどころかむしろやる気になった。

 個人的にはあんなのと戦ってほしくないんだけどなぁ。


「大変だったようだが無事に帰って来てくれて良かった」

「ギルマスも……前まで赤ん坊だったのにもう小学せ……6~7歳くらいまで育って成長期が早いですね」

「これは馬に血を分けたから、どうやら血を分けると逆に私は歳を取るらしい」

 

 へぇ……なんだか凄い体質ね。


 口ぶりからして最近気づいたのかな。

 それなら血を与えまくって大人くらいの年齢に戻ればいいのにと思うけど、それをするとどんな生物も吸血鬼化させてしまう。


 ギルマスからしたらあまり望むことじゃないみたい。

 馬の事はあくまで緊急事態だったから、今はギルドの小屋に隠しているという。


「それでここからが本題なんだけど、私はルークの血を飲んで若返り、記憶もみたのよ」

「え……」


 そうだった……この人、血を飲むとその血の持ち主の記憶を辿れるんだった……。


 まさか私の前世の記憶とか知ってるのかな!?


 いや……でもこれはルークという少女の身体から出た血だから私の前世の記憶なんてないのかもしれない。

 じゃあギリギリ女神様の事も分からないか……?


 だけどそのことを考えていたという記憶も辿れるのなら知っていてもおかしくない。

 私一人と話をしたかったのって……記憶を見てしまったから?

 

「貴女が生まれる瞬間の記憶を辿ったのよ」

「凄いですね……」

「そしてそれはすぐにあなたに伝えなくてはいけない超重要な話……」

「まさかそれを今から?」

「ええ」


 だから私と2人きりで話したかったのか……。

 私の出生に何か重要な秘密がある……?さすがに生まれたての記憶は無いんだよね。

 1歳ごろから前世の記憶と人格が芽生えた感じだし。


 その重要な事が今わかる……!!


 ギルマスは一度目を閉じて瞬きを1回して話しだす。

 

「貴女が生まれた時の記憶は……超重要…………という事だけ覚えてるわ」

「……はい?」

「実はヴァンパイアホースに血を分けた時に貴方の記憶を忘れちゃったのよね」

「……」

「すごく重要ですぐにでも話さないとって赤ん坊の姿の時に訴えてたんだけど……」


 あ……そういえばハーベストへ向かう前、私の方へ寄ってくるような仕草をしていた。数ミリの可能性で母性でも感じたのかと思ったけど……それだったの!?


「だから機会があればあなたの出生の話を聞いて起きなさい」

「わかりました」

「後はまあ重要だけどプライベートな話だからまた今度ね」

「は、はい……」


 若干ギルマスは私の事を心配している様子だった。

 皆心配性すぎるんだよね……そんなすぐにトラブルに巻き込まれることなんてないでしょうし……。


 それにすぐに学校が始まる。

 この前は襲撃を受けたけど、この国の魔王教団はほとんど居なくなった。だからもう心配は無いはずだ。

 ひとまずはのんびりとした学生生活を過ごせそう……だよね?


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