第126話 不安な真相
最低限の妥協案として私の姿が見える所で話をするように言われた。
私とサツキが2人きりで話している所をフーリアは睨みながら見ている。
フーリアが私を心配している理由は私の予想では2つある。
1つは私に恋人ができる事で先起こされるかもしれないという不安、それはサツキ相手にありえないのと恋愛に興味無いので大丈夫。
問題はおそらく魔導騎士と2人きりで話しているという所か。
フーリアは魔導騎士の悪い部分ばかり見ているから何かされないとか不安なんだろう……。
サツキに分かってもらうために今まで見て聞いてきた魔導騎士の話をする。だいたいフーリアと同じ所を旅していたので彼女の認識と私の認識は同じだろう。
気を悪くするかもしれないけど、私もどうして魔導騎士でこれほど対応が違うのか気になっていた。
「あー……革新派の魔導騎士か」
「革新派とかあるんですね」
「ああ……ついでだしそこから話すか」
もしかして話は革新派の魔導騎士の話……?
気を付けろとか特徴とか教えてくれるのかな?だとしたら結構助かるかも。
できれば関わり合いになりたくないからね。
「革新派の魔導騎士の大体は転生してきた本来の魔導騎士の子孫なんだ」
「……はい?」
「君もそういう事だろ?」
「え?」
「魔法と剣を使えるのは魔導騎士と呼ばれているがその実態は……別の世界で死んだ人が転生したんだ」
「なっ!?」
考えてみれば私だけ転生して来たって言うのもおかしな話か。
何兆人という世界の中、死んだ1人の人間が転生するとしてそれに選ばれるなんてありえない確率だし。
どちらかというと転生者は他に居るという方があり得る。
あれ?だけどサツキは魔導騎士だから……。
「気づいたと思うけど、俺……いやここでは前世の時みたいに……。私の名前は東刹季って言うのよ」
「……もしかして女性でした?」
「そうなる」
「……」
思い返してみればたまに一人称が『私』になっていたような。
という事は私みたいに異性に転生する人も他に居るってことか。
それにしても女性……だったとは思えない程、美少年ね。あの女神様の趣味なのかな?
「で、君は?」
「え……」
「君も転生者だろ?魔法と剣を使えるなら」
「あ……」
そっかだから皆から離れる所で話をしたいわけね。
同じ転生者なら話してもいいかもしれない……けど――。
「私も一応転生者なんだけど……あまり覚えて無くて」
「あーたまにそう言う子は居るから仕方ない」
「そうなんですか?」
私の前世の記憶は20年生きていた割に少ない。
というかそれを辿るために旅をしている所があったんだけど……ハーベストでは何の手掛かりも得られなかった。
まさかこんな所で触れる機会があるとは思わなかったけれど。
「それじゃあ使命も忘れた?」
「使命……なんてあったんですね」
「忘れてた?まあ神様もそれは守らなくてもいいって言ってたし」
「そうなの……?」
「転生者の魂の大体は善人だから。死んだ後、神様に拾って貰った。あの世界じゃないけど、こうしてまた地面に足を付けられているのは幸運だな」
サツキはどこか愛おしそうに地面を見つめている。
じゃあ私もそういう感じなのかな?
っていうか善人の転生者……?
「善人でも転生したら悪の道に行くんですね」
「革新派の魔導騎士は、転生者の子孫だよ」
「あ……そういえばそんなこと……」
「俺達の転生の日って言うのは皆バラバラなんだ。だから子孫が居るくらい前にこの世界へ来た者も居る」
「なるほど……」
転生者は善人でもその子供は転生者というわけじゃない。
じゃあ私の会ってきた悪い魔導騎士はその子孫という事か。
「ちなみに見極め方があって、転生者の子孫の名前は皆、星が由来だ」
「おお!」
「だからサジタリオン様も転生者の子孫だな。あの人は見ての通り良い人だけど」
「なるほど……」
良い人も居るけど、あまり星の名前の魔導騎士には合わない方がいい。
「でもどうして星の名前?」
「子孫は星の名前って決めたのが最初に転生してきた人なんだよ。その人が転生者がどうかすぐわかるようにしたみたい」
「へぇ~」
「ちなみに苗字が無いのは俺の住んでいた国、日本以外にも外国から来る人も居て、ごちゃごちゃになるから、魔導騎士は苗字が消えた。星の名前を付ける時も楽だしな」
まさか名前にそんなパターンがあったなんて……。
ここでこんなに魔導騎士について知ることができたのは大きい、これから冒険者として旅をする時、避ける相手を判断できるからね。
……でも後、気になるのが使命だよね……。
「あ、だけど使命はそこまで必要ないんでしたっけ?」
「そうだな、神様もこの世界を楽しんでくれって言うのが本心みたいだったよ。ちなみに使命は1つ、向こうの世界から転生してきた人を見つけること」
「……それは神様が転生させてる人?」
「いや違う、向こうの世界の悪い女神がとある男性をこの世界へ無理やり転生させたんだ。そいつが悪い事をしたら止めるようにって言われた」
「な、なるほど……」
私は前世の記憶はほとんどないけど男だったのは覚えている。まさか……違うよね……?
「だけどもし、その女神がその人を手に入れるためこの世界へ招き入れたのなら……」
「招き入れたのなら……?」
「その人を守り、その女神を殺すようにって言われた」
あ……そこまで怖い理由とか無かった……。
万が一それが私でもこの人達に殺されることは無いってことだよね!!
だって悪い事なんてしていないし、それにそんなのに目を付けられるなんてありえないよ。
「これで話は全てですか?」
「そうだな」
私は皆と一緒に旅ができればそれでいい……。記憶だって取り戻せたらいいなくらいだし、そのことをサツキに伝えると怒られると思ったんだけど意外にも承認してくれた。
「その代わり手を貸してほしい時はお願いするかもしれない」
「……そうですよね」
「一応あの神様に転生と言う慈悲を貰ったんだ。この世界のために少しくらいは手伝って欲しい。もちろん逆に俺達も君を助ける」
「それなら……」
良い魔導騎士とのパイプができたと考えれば、もし悪い魔導騎士に絡まれても助けてもらえるかもしれない。
話をここまで聞いて最後に私は1つ気になったことがあったのでそれだけ聞いてみる。
「ちなみにその女神の見た目とか無いんですか?」
悪い女神が居るのならその見た目を知っておくことは大事だろう。
もし出会ってしまったら逃げられるようにね。
「あー確か聞いた話だと、出会った者の好きなモノに化ける狐の女神らしい」
「…………………………っ!?」




