第120話 勝利への道筋
「神秘剣!?ホワイトの剣でしょ!!」
「そう、そして我はホワイト家。故に扱えて当然」
「違うッ!!それはフーリアのモノだ!!!!」
「フーリア……?知らん名前だな。ホワイト家か?」
「そうよ」
「そうか……それでは、貴様らを殺した後にその娘も殺そう」
「なっ……!?」
「もう我が居るのだから必要あるまい」
こいつ……!!
自分の血を分けた曾孫に当たる娘の事を何とも思っていないのか!!
それにしても死者を生者の身体に宿らせるなんて一体どんな魔法を使ったんだか……。
アーミアを殺さずに止めるにはおそらく、このフロストの人格を消す必要がある。
確か首に下げていた黒い勾玉を潰したことであの人格が表に出てきたんだよね。
原因の物がないんじゃアーミアを解放できない!!
そう思っていたんだけど、アーミアの身体を見てみると首元に勾玉の片割れが1つ残っていた。
白と黒の勾玉を一緒に潰したように見えたんだけど……白いのだけ残っている。
そしてその白い勾玉の中からアーミアの魔力を感じる!!
「サツキ、首元の勾玉を奪い取れますか?」
「……あれか。敵の強さによるが……それで何とかなるのか?」
「確証はないので何とも……だけどそれが一番アーミアを殺さずに助けられる方法だと思います」
「倒せばいいだけなんだがな……仕方ない……やるだけやってみよう」
サツキに無理を言って手伝ってもらう……面倒くさそうにされると思ったんだけど意外にも真剣に戦おうとしてくれている。
あんな義姉を救った所で私には何も無い。
だけど命の重さに対して色々と感じつつあるのもそうだし、彼女からは聞きたいことが山ほどある。
死なせるわけには……いかない!!
「できるものならやってみな!我は最強不滅のホワイトの剣士!!」
フロストは神秘剣を振るう。
風の斬撃が吹き荒れて凍った地面や家々にヒビが入る。
この風……なんだか変……目も開けられないほどの勢いだし、魔力が風に揺られてコントロールが難しくなっている。
「これは……まさか……!!」
「この剣は対魔導士に特化した聖剣!!」
「なっ……!!」
魔法が完全に使えないわけじゃないけど、コントロールをミスると威力を出せないし、逆にやりすぎると暴走して魔力を多く使ってしまう。
あまり魔法には頼れないか……。
「じゃあ俺には関係無い!ワダツミッ!!」
サツキは魔力を乱さる事なんか関係無しにフロストへ果敢に向かって行く。
水神剣と神秘剣が衝突する。水を纏った水神剣は風を纏った神秘剣によって弾かれる。
「――ッ!?」
「どうやら我の剣とお前の剣は相性が良いみたいだ」
「ちっ……!!」
予想外の展開だ。
あれだけ高火力を放てる剣を弾かれる……。水で勢いが上がるからそれを散らされると満足な力を振るえない。なら向こうが剣士であることで弱点を突く。
剣は基本止められている状態では剣士は無防備!!
「炎帝剣!!」
私だってこれでも元剣士。
身体強化の魔法が使えなくてもそれなりに動ける。
サツキに止められているアーミア?の後ろへ周り、炎帝剣を振り下ろす……。
狙いは首元の勾玉の紐!!
剣を勾玉へ向けて放った直後――。
ギィンッと甲高い音が響く。
剣と剣がぶつかる音……私の剣はフロストが元々持っていた氷の剣によって防がれた。
2本の剣を振るうのはあまりいい戦い方じゃない。
右手と左手に剣を持つことで満足に力を入れられないし、そもそも聖剣クラスの武器を使いながら他の武器を扱う事は出来ない。
私も昔一度、やってみたことがあるけど成功しなかった……どうしてこんなことが可能に!?
「この剣はこの娘が契約した。それが今お前の疑問の答えだ!!」
「くっ……!だからってこんなあっさり……」
「小娘相手なら片手で十分……!!」
「うあっ!?」
私の身体は押し負けて後方へ吹き飛ばされる。
氷の壁に背中が衝突して激しい痛みに襲われる。
片手なのに相当なパワー……やっぱり身体強化が無いと少女の力に毛が生えた程度か。
こうなったら無理やり魔法を……。
そんなことを考えていた時、フロストの左腕から氷の剣がするっと落ちた
「ちっ……小娘の腕では少々負担が……」
「今のお前の身体は小娘そのモノだろ!!」
「だが神秘剣を持っている右腕ははっきりとその力を得ている。現にお前を――!!」
「あ?……ぐっ……まだ力が……!!」
左手はまだアーミアの部分が残っていたのか力を入れ過ぎると身体が追い付いてこないみたい。
しかし右腕に力を入れるとサツキを私と同じように吹き飛ばし、氷の壁にぶつける。
左腕はアーミアの腕力だけど、右腕は生きていたころのフロストと同じのモノなのか?
本当にどういう原理なのか……。そもそも魔法に原理なんて求める方がおかしいか。
今わかっているのは神秘剣を持っている手はフロストのモノで氷の剣はアーミアのモノ。神秘剣よりも性能が劣る氷の剣では半分の力も出せないみたい。
二刀流に翻弄されて動揺していたけど、片方の腕が私に劣っている以上人数差を埋めることはできないはず。
このまま2人でたたみ掛ければ勝てる!!
「ちっ……面倒な」
どうやらこういった力を使いこなすのはリゼルの時とは違い難しそうね。
リゼルとの違いは薬を飲むと使用者の死が確定するのに対して、アーミアは死んでいないところか。
その分、強力な力を存分に発揮できない。
それならつけ入る隙はある。
「サツキ、いい方法を思いつきました」
「ほぅ……聞かせてくれ」




