第116話 再戦
突然襲ってきたのは毒蛇の魔法を使うアルタイル。
どうしてここに魔王教団のアルタイルが居るの……?いや……それよりもアルタイルは結構強い、サツキでも苦戦するだろう。
「サツキ様!そいつは毒の魔法を使います!!」
「毒……知り合いか?」
「敵です。魔王教団の1人で前に私も襲われました」
「……なるほど、その時はどうしたんだ?」
「……仲間と一緒に撃退しました」
「そうか、それじゃあ……脅威じゃないな」
「え……」
確かにまだ私達も未熟だった頃の話だけど、さすがに単体で押さえられるほど甘くない。
共闘してアルタイルを倒すべきだ。
しかし、サツキはそんな私の考えに反して刀を自分の頭の上へ持ってくる。
そして勢いよくそれを振り下ろす。
「これが海を割る刀!ワダツミ!!」
次の瞬間、刀が振り下ろされた空間から水の斬撃が縦一直線にアルタイルを襲う。
膨大な水の圧力と回転、それに押し出されて焼けた家へぶつかる。
水が触れた事で家の火は鎮火、しかし家の壁にアルタイルの身体と同じ形の穴ができた。
水の斬撃の跡は無い……アルタイルだけを狙った剣術、この人ショナよりも遥かに強い!!
「穴空いたかぁ私……俺は消防士は向いていなさそうだ」
「消防……それよりアルタイルは?」
「家の中だろうな。俺はアイツの身体を真っ2つにするつもりだった。だが、身体は押し返すだけ……頑丈みたいだから多分生きてる」
「凄い威力ですね」
「これでも抑えた。さすがに避難所を壊すわけにはいかないし、とりあえずアルタイルを外へ追いやってからだ」
「手伝います」
「必要ないと言いたいところだけど、人命が掛かってるから君は、避難民を守ることに集中していてくれ」
「分かりました」
これだけの力があるのならアルタイルとタイマンでぶつかっても問題なさそうだ。
問題があるとすればやっぱり避難民の安全、毒魔法なんてこんな場所で使ったら大惨事だ。
一刻も早くこの場から退ける。
私は剣を久しぶりに取り出す。何もない所から赤い刀身の炎の剣が私の手に現れる。
「鞘じゃなくて身体に収納するタイプの剣か……剣、使うんだな」
「……剣士ですので」
「ふーん……」
やっぱりさっき私が防御魔法を使ったことを疑ってるみたい。
忘れて欲しいけど、そうもいかないだろうなぁ……。
この後色々説明しなきゃいけない事を今は頭の片隅に置いておいて、とりあえずアルタイルを退けるための行動をする。
サツキが穴を空けた家の中から魔力を感じる。
「出てきます!!」
「ほう……」
なんだか興味深そうにサツキは私の事を見てくる。
あんまり目を付けられたくないなぁ……。
そんなことを考えていると家の壁がドロドロと溶け始める。
アルタイルの毒は家の壁も溶かせるんだ……。
「毒牙!!」
「来たか」
次は爪に毒を纏わせて強化した魔法。前に見た奴だ。
それを剣で受けようとサツキが構えた時、アルタイルは蛇のような動きでくねくね動くことで剣を避ける。
アルタイルの毒の爪がサツキの顔に触れる。
「くっ……なんだその動きは!……だがッ!!」
「グハッ!?」
毒の爪にやられたサツキだけど、その痛みに耐えながら密着して来たアルタイルの胴体を蹴り上げる。
2人とも苦悶の表情を浮かべ、我慢比べが始まる。
そんな熱い戦いをしている所悪いけど、私も参戦する。
「不死鳥の炎!!」
いつものように味方を巻き込む炎で2人を包み込む。当然私の炎でサツキが治癒されるようにしている。
毒の爪の攻撃を受けていたからその傷と毒を中和する。
それと同時にアルタイルへ炎のダメージを与えた。
「ぐあぁっちぃ!!?」
アルタイルはたまらず炎の中から脱出、そこへさらに上から炎の魔法をぶつけて追撃、避難所から離す。
「サツキ様……大丈夫ですか?」
「毒と痛みが消えていく……助かった」
「どういたしまして……驚かないんですね?」
「お前がどうして魔法を使うのか、それは気になる所だが、少なくともこの魔法は俺を助けてくれた。それに何度も見たし」
「あー……」
そう言えばこの人達の目の前で何度も見せていたっけ。
大体炎に包まれた人達は驚いて私に怒った表情を向けてくるんだけど、意外にも冷静なサツキの反応に驚いた。
「……さてこのまま奴を討伐するか撃退する」
「はい、私も行きます」
「来るなと言っても来る勢いだな……俺の足は引っ張るなよ!!」
私はそれに頷いて応える。
するとサツキは飛んで行ったアルタイルの方へ突進していった。
毒を使うのにお構いなし……いや、私の治癒魔法があるから気にしていないのか?どちらしてもなかなか思い切った戦術だ。
「クソ……お前、来んなよ!俺はルークと戦いたいんだ!!」
「女ばかりを襲って楽しいのか?」
「そうじゃねぇ。アイツは俺の獲物だ」
「そうか、だが諦めてくれ……今は仲間だからな!!」
刀に強化された毒の爪が触れている。
そこから押し出す力はサツキの方が強い。
押し切られ刀が自分の首を狙っていると気付いたアルタイルはギリギリで刀を避ける。
本当に気持ちの悪い動きね……。
そうなってくると刀を振ったサツキに隙ができてしまう。
アルタイルの毒を纏った爪がサツキに触れようとするので次は私が炎の剣を使ってそれを弾く。
そこへサツキが追い打ちを加える。
「甘く見たことを謝罪する。だがこれで終わりだ……ワダツミ!!」
水の刀を横薙ぎに振るう。
刀はアルタイルの胴体に触れ、そこから水が勢いよく溢れ出す。
しかし蛇の鱗は斬撃を多少軽減、さらに鱗は水を弾いて最大限までダメージを抑えている。
「嘘……だろ……!?」
しかしそれでも、圧倒的な勢いとパワーでごり押しした結果。
「くそ……水は得意なんだが……な。てめぇ……馬鹿力すぎだろ……」
「鍛え方が違う。貴様もちゃんと鍛えたらどうだ?そんな白くて細い身体じゃ俺には勝てない」
「次は……殺す……!!」
アルタイルは最後にそう言うと力なく崩れ倒れる。
終わってみればあっさり……だけど私達2人ならもっと簡単に倒せていたと思う。
せっかく鍛えたチームワークも仲間が居ないと無意味か……。
これにあとアーミアも残ってるんだよね。大丈夫かなぁ……。