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第115話 水と毒


 ホワイトの街へは強化された馬を使う事で1時間も掛からずに辿り着いた。

 しかし、遠くの方からホワイトの街が……今は夜で本来なら街が見える距離じゃないんだけど……。


 前の世界みたいに灯りをずっと灯せるような余裕も技術も無い。なんせ魔物に見つかるから……じゃあどうやってこの距離で街と分かったのか……それは至極簡単で空が赤く、煙が上がっているのが理由。

 灯りなんて可愛いモノじゃない……最悪な火の手が街を照らしていた。

 おそらくまだ戦っている最中、どうやらこのタイミングで来たのは正解だったのかもしれない。


「サツキくんとルークさんは怪我人が居ないかの確認をお願い!」

「サジタリオン様は?」

「僕はこの騒ぎを起こしている現況を倒す」

「サジタリオン様なら大丈夫だと思いますが……バレンタイン領主を倒せるほどです。どうか気を付けて」

「……ありがとうサツキくん。君は街の人達の安全とルークさんの事を第一に考えてください」


 そういうとサジタリオンは馬の速度をさらに上げて1人戦火の中へ飛び込んでいった。

 魔導騎士(エーテルナイト)なら大丈夫だろうけど……父上を倒したアーミアの実力は計り知れない。


 絶対に苦戦するわね……。

 私はサジタリオンの背中を目で追う。

 

「私達は行かなくても大丈夫なんですか?」

「サジタリオン様がそうおっしゃっていたんだから、あの人を信じるしかない」

「信頼ですか……」

「ありまえだ。サジタリオン様は俺の憧れであり……師匠だから」


 それならまずは怪我人か……できれば私はホワイト家の宝剣だけでも回収したいんだよね。

 盗るつもりは無い。アレはフーリアが取り返すべきもの。

 だけどそれが他に盗られた場合取り返す人が必要になってくる……それは私がやるんだ!!

 あの子の頑張りをなかったことにしたくない……早く怪我人の様子を確認してサジタリオンの助けに行かないと!!


 街の中は既にパニック状態……人々は何かから逃げるように中央の大きな時計台がある広場から街の端へ向かっている。

 火の手がまだ伸びておらず比較的安全に見える場所には緊急の避難所ができていてそこに怪我人を運んでいるみたい。


「大丈夫か?」

「あなたは?」

魔導騎士(エーテルナイト)のサツキだ」

「おお!魔導騎士(エーテルナイト)様!!」


 ハーベストとは違い、ルエリアでは魔導騎士エーテルナイトを神と称している。

 そのため、こうしてその姿を拝見できると神々しく見えてしまうのかもしれない。それでもサツキは驕ることなく、冷静でいた。


「ルーク。君なら怪我人を治せるよな?」


 人数はここに居る者達20人程度、炎をばらまけばいいだけだしすぐに治せる。それでも私が治せるのは怪我だけ……もし何か襲って来ても逃げらるほどの体力は回復しないだろう。

 それでも治さないよりはましだ。

 

 あまり大きな声を出したくないんだけど……これも早く済ませるためだ!!

 

「私はルーク=バレンタインです。バレンタインの炎魔法でここに居る人達を治療します炎に包まれますが熱くありませんから安心してください!!」

「ルーク様ってバレンタインの正統な血筋の方か!」

「それなら安心ね!」


 こういう期待される場面はなんか恥ずかしいから苦手なんだけど、急に炎の魔法なんて使ったら治癒魔法と分からないから驚いちゃうんだよね。

 だから事前に伝えないといけなかった。


 炎魔法を使って怪我人を炎で包み、治癒を掛ける。

 炎に包まれた人々の怪我はたちまち消えていく。

 これなら出血で死ぬことは無いけどまだ安心できない……私達が入ってきたのは街の南側。

 戦火が最も上がっている場所は街の中央の時計台だからそこから市民たちが離散して逃げているとすれば、東西南北に同じような避難所があるはず。

 

 次は東へ……。


「ルーク様、何とお礼を言ったらいいか……」

「さすがルーク様!正統なバレンタインの跡取りだ!!」


 な、なんだかすごく感謝されてる……。

 

 嬉しいけど慣れていないんだよねこういうの……でも皆、凄い期待の目で見てくる。

 もしかしてこれが貴族の責任というものなのかな……。

 だからこそ無理でも前を向いて平静を装う。市民が一番安心するはずだから。


「すぅ……はぁ……」


 深呼吸をしてからこれからの事を考える。

 とりあえずここは大丈夫みたいだし、次の場所へ向かうべきだ。

 

「サツキ様!次の……」


 「避難所へ行きましょう!」そうサツキに伝えようとした時、どこかから殺意のようなモノを感じた。

 殺意の感じる方向を見てみると魔法がこの避難所を攻撃しようとしている。


 防御魔法……防御魔法……強力で広範囲を覆えるのは……。


 その瞬間私の脳裏にはある魔法が浮かんだ。

 ユリカの使っていた百合の花を模した防御……百合の花の形を魔法で象った真っ白な魔法。


 避難所を覆えるくらいの花を想像して発動する。


「防御魔法……白百合の盾!!」


 百合の花を模した防御魔法が避難所を覆う。

 紫色の毒々しい攻撃魔法は防御魔法に触れて夜空へ軌道を変えた。


 ふぅ……危なかった……それにしてもあの魔法は……毒……?


「……ルーク。君は……剣士だよな?」

「え……?あ……」


 ……しまった!!

 

 攻撃を防ぐのに必死で今は剣士であることを忘れていた……。ハーベスト帝国でずっと魔法しか使っていなかったせいか。

 さすがに炎の剣であんな防御ができるはずない。

 何なら剣すら構えていない状態だ。誤魔化しようがない。どうしようかあたふたしていると突然、サツキが水色の剣……いや刀を抜いた。

 

 わ、私に向けてる!?


「ちょ、ちが……私は……」

「水神刀……ワダツミ!!」


 問答無用で私の方へ向かって走ってきた!?

 反撃したらどうなるか分からないしここはギリギリで避けて説明するか!?


 そんなことを考えていたんだけどサツキは私の横を通りすぎて行った。

 そして後ろを振り返った次の瞬間、ギィンと甲高い音が避難所に響く。剣と剣?がぶつかる音。


「お?なんだお前、俺の毒爪攻撃を防ぐのか」

「これくらいでデカい顔するなよ。それよりお前のその服装……」

「ああ!俺はアルタイル……魔王教団だ!!」

 

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