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第114話 ホワイトの街へ


 アナの話を聞いて分かったのはやっぱりアーミアの様子が普段とどこか違うと言うこと。

 普段とは違う言動をしていて、力を得てご機嫌になっているとも捉えられるけど、剣も使っている事からやっぱりリゼルと同じ感じだろう。


 ただ気になるのが勾玉が光っていたということ……それが力の源なのかな?


 リゼルが薬を服用した時に死ぬと言っていた。

 その副作用を抑えるものなのか。

 どちらにしても私は剣も魔法も使えるアーミアと対峙することになるだろう。


「氷の魔法に氷の剣か」


 そのおかげでアナの傷が瞬時に凍って血が少なく済んだ。それは街で見かけた女性もそうだ。

 不幸中の幸いだったわね……でもそれならどうして多くの人が亡くなったのか。


 後、アーミアが最後に殺してやると言ったのはおそらく父に対してだろう。

 メイドのアナを殺したとなると私を次に殺そうとするが、彼女はおっさんと言っていた。


 ……まあ私の前世を知っていたらそう言っててもおかしくないけど、さすがに無いよね。


「父上は居たの?」

「書斎に……」

「なるほど……」


 街の荒らされ方を見る限り、アーミアに負けたと考えるべきか……。

 

 皆……やられちゃったのかな。


「ありがとうございます。ルークお嬢様」

「……何が?」

「私達の事にそれほどまでに怒ってくれて」


 だから……自分の表情なんて鏡を見ないと分からないってば……。


 なんで私はこんなことで怒ってるの?そんなに自分の事を構ってくれなかった父や関わりの少ない街の人達がこんな目に合わされて……。

 前世の記憶があるからこの世界のほとんどが他人事の用だった。


 ……そう思っていたんだけど。


「ルークさんは優しい方ですね」

「サジタリオン様……」

「君はいい領主になる」

「そんなことは……」


 そもそも受け継ぐ気がさらさらなかった。さっきも言ったけどこの世界の出来事にが他人事にしか思えなかったから。


「そんな私が――」


 人の上に立てるわけがない。

 

 そう言おうとした時だった。日が沈んでから1時間くらい経った頃、怪我人が沢山いるこの家の扉が激しく音を立てる。


「た、助けてくれ!」


 扉を開けたのは一般市民。

 アーミアでなかったのは良かったけど、そのタダらぬ雰囲気に事態はまだ収束していないことを暗示していた。

 

「何があったんですか!?」

「お、俺はホワイトの街の住民です!ま、街にここのお嬢様が現れて……」

「それはいつですか!?」

「1日前……です」


 一日もあれば街がどうなっているのか想像は付く。

 ホワイトの街もバレンタインと同じで領主はこの国でも屈指の実力者だった。だけど私が幼い頃に亡くなって今ではバレンタインの街よりも戦力は劣る。


「そうか……ちなみにそのお嬢様はどうしてホワイトの街を襲ったのか分かりますか?」

「剣……」

「え?」

「ホワイト家の宝剣を狙っていると……」


 それを聞いた瞬間、私の脳裏には当然フーリアの顔が浮かんだ。

 あの子はホワイト家の宝剣を手にするためここまで頑張っていた。それなのにアーミアに盗られる……?


 さっきまででも私の中の感情がぐちゃぐちゃで頑張って整理して冷静でいた。

 だけどもう我慢ができない……フーリアの苦しみながらも頑張っていた事を思い出すと居ても経っても居られなくなる。


「サジタリオン様、馬を貸してください!!」

「なっ……君1人で行くのかい?もう夜で周りが見えないんだよ?」

「そんなの……そんなの関係ない!!」

「ルークさん……」

 

 馬を借りても間に合うかは分からない。だけどバレンタインの街とホワイトの街は近い所にある。

 それこそジャスミンの街からアルストロメリアの街へ移動するよりも近い所に。

 

 軽い怪我を負った一般人の人が1日で辿り着くくらいならの速い馬を使えば1時間も掛からないだろう。


「わかった。行こう!!」

「え……私一人でも大丈夫ですよ?」

「さすがに女の子1人では行かせられないよ。だよねサツキくん」


 なんでサツキに聞いたのかよく分からないんだけど。

 サツキは面倒くさそうに頷く。

 

「まあいいですけど」

「あれ?サツキ様も行くんですか?」


 まだアーミアが居るとすれば戦う事になる。こんな夜遅くに戦うのは……周りが良く見えなくなるし、何よりまだ子供のサツキには危険すぎる。

 

「行くよ!俺だって魔導騎士(エーテルナイト)だ」

「危ないですよ?」

「子ども扱いするなよ?一応同い年だろ」

「あーまあ……」


 見た目は……ね。

 

 だけどまあ来てくれるのならありがたいか。サジタリオンは相当腕に自信があるみたいだし、サツキもそれなりに実力を持った人だろう。

 じゃなきゃバレンタイン領主を倒したアーミアと戦おうなんて思わないはず。

 

 そこへ冷静にマツバが話に入ってくる。

 

「それでは俺はここで待機しています」

「あ?マツバ行かないのか?」

「怪我人を診る必要があるし、魔法で治療して尚且つそのアーミアって奴が実はホワイトの街に居なくて襲ってきたら戦える人が居なくなるじゃん」

「そうだけど……」

「安心してよ。サツキより俺の方が強いから何とかなるだろ」

「……そうかなぁ」


 確かに怪我人を診る人が居てくれるのは助かる。

 アナの事を魔導騎士(エーテルナイト)に任せるのはやや不安が残るけど、信用できる人なら別。

 

 この人達は善人……というのが今の私の判断、ここは中途半端に信じるよりも完全に信じきる。

 それよりも一刻も早くホワイトの街へ行こう!!


 私達は3人でホワイトの街へ向かった。

 

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