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第113話 アーミア


 時は戻ってルークサイド――


 アナだけでも助ける事ができたんだけど他に屋敷の中で生き残っている人は居なかった。夏休みの日、私の部屋を掃除してくれていて仲良くなったメイドの子もおそらく……。

 

 そんなことを考えながら瓦礫に覆われた街へ戻る。残念だけど悔やんでいる暇すらない……。瓦礫に覆われてしまった街の中でも人が住めるくらいの被害で済んだ家を見つけて怪我人はそこに集まっていた。

 

 20人くらいか……これが生き残りだとするともうバレンタインの街はダメかもしれない。

 ただ引きこもっていたから街への未練はない……そのはずなんだけどいざそんな光景を見て胸が張り裂けそうな気持ちになる。


「お嬢様……そんな顔をしないでください……」

「アナ……目が覚めたの?」


 そんな顔と言われてもこの家の鏡は割れて自分では確認ができない。

 それよりもアナが目を覚ましてくれて少しホッとした。

 怪我の具合は酷いけど、とりあえず心配は無いだろう……。そんな怪我人のアナには申し訳ないんだけど、何があったのか聞かないといけない。


 日が落ちてすっかり夜になってしまった。もうこれ以上移動するのもままならないしね。

 そんなアナの話をサツキ達も興味深々に聞いている。


「1ヶ月ほど奥様が『ルークがエステリアの街に居ないのなら宿のお金は勿体ないと契約を打ち切るように』と言われました」

「それはまあこんな状態だからいいけど……」


 いやまあ良くないんだけどね?

 それでも街の状態を見るとそんなことを言っている場合じゃなかった。

 

「1週間ほど頑張って粘ってみたものの、さすがにこれ以上は無理と判断して宿の契約を終えてしまいました。それは手紙で送ったはずですが……」

「来てなかったわ」

「どういうことですか?」


 私はルエリアへ戻ってきた理由を話した。

 2週間以上前に書かれたであろうアナの手紙を2日程前に受け取ったこと、そしてそれ以前の手紙は一切私の手に届いていない事を……。


 それを聞いたアナは何が何だか分からない様子だった。

 アナが言うには2週間どころか1ヶ月前から手紙を何度も送っていたみたい。だけど何も返事が無くてとりあえず手紙を書きまくって一通だけ何とか届いた感じみたい。


「誰かに妨害されていた……?」

「まさか奥様……?」


 それは分からないけど、だいたいあの人が関わっていそうなんだよね。

 ただ、それだといずれ足が付いて義母がバレンタインを支配するなんてもはや不可能になるはず。


 それに支配する街がもうほとんどない……。

 それじゃあやっぱりあの義母は関係ないのかもしれない。

 

「分からないわね……アナ、何があったの?」

「……屋敷での戦いを私は見ていましたので――」


 ――

 

 3日前~

 

 アーミアは以前とは少し異なる性格をしていたとアナは語ります。


「これが魔法と剣を同時に使う事の出来る力……!!これがあれば我……私は……!!」


 アナの目に映るアーミアは普段との見た目は全く同じでしたが一点、アナの知るアーミアとは異なる部分がありました。

 それは首元に禍々しい白と黒の勾玉を付けていたこと。


 普段から見えないように隠れていたそれは黒い光を放っています。


「アーミア様?」

「あらぁ~アンタは……あの女の召使い……はははははははははははははは!!」

「――ッ!!」


 アナを見つけて狂ったように笑うアーミアを見て、彼女は危険を感じ、その場から離れました。

 何とかルークの部屋まで逃げて扉を閉め、鍵をかけました。

 心臓が高鳴る感覚を気持ち悪いほど感じながらどこかに隠れるかそれとも逃げるかを考える。


 隠れても逃げても生き残れない……そう考えたアナはやむを得ず戦う事を決意しました。

 メイド学校で学んだ剣術の術、アーミアの実力のほどは理解している……。


(この人はルークお嬢様の足元にも及ばない――)


 それなら自分にも勝機はあるとアナは考えました……しかし、ここで争うと今後のメイドとしての活動に支障ができるのは確実です。

 それでもルークが帰ってくれば何とかなるかもしれない。


 そんな淡い期待という名の甘い考えを抱いて、自分の部屋に置いていた暗器を取り出します。

 扉を蹴破る勢いを感じ、アナは剣を構えます。

 

 扉が蹴破られ、アーミアが部屋へ入ってきました。


「ここはルークお嬢様のお部屋です。出て行ってください」

「アンタもでしょ?」

「私はお嬢様のお世話係……部屋の掃除をしにきただけです」

「私から逃げていたように見えるけど?」

「……」


 殺気をむき出しにしてアナを睨みつけていたのはアーミア本人なのだから。そんな目で睨まれたたら誰だって逃げたくなるもの。

 それが自分を雇っている主の娘とあればなおさら。

 しかし、自分の命は惜しい……いざという時は戦う……それが……。


「メイド学校で習った事ですから!!」


 聖剣でも魔剣でもない……しかし、現代の鍛冶師によって生み出された剣をアナは振り下ろします。

 剣からは炎が放出されて勢いを高める。


 アーミアはそれを氷の剣で受け止める。


「何……!?その剣……いやナイフ……!!」

「現代のアーティファクト……ルエリアでは7年ほど前からありますよ」

「そんなの知らないわよッ!!」

「何を言って……あなたの持っている剣は――」

「黙れ!ただの現代の武器が古代からある私の()()に勝てるはずがない!!」

「それは魔剣では……言いかげん勉強してください!!」

 

 アーミアはただひたすらに怒りをぶつけるかの如く剣を振るう。

 その剣は剣術と呼ぶことができない程に不細工。

 しかし、その剣を振るう力と溢れ出す冷気にアナは足を取られる。


「冷気で身体の動きが!?」

「貰った!!」


 そしてアーミアが魔力と剣の力を合わせた一振りを放つ――。

 そこでルークの部屋は氷が天井を貫き破壊され、アナも片腕を失いました。

 戦いの後、生きているかどうかの確認をせずにアーミアは部屋を去って行きました。

 

 きっとアナは死んだと思い込んだんでしょう。

 

「後はあのおっさんを殺すだけ!!」


 そんな言葉が最後に聞こえたのと同時にアナは目を閉じました……。

 アナが知っている事はそこまでした。

 

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