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第112話 吸血鬼の血


「手を貸すってどういうこと?」

「そのまま の いみ よ」

「……というか、なんで赤ん坊が喋ってるのよ」


 生まれて数十ヶ月くらいの赤ん坊が言葉を発するのは流石におかしい。

 まさかそう言う魔法!?赤ん坊を操る魔法なんてあるのかな。


「フーリア、アレはエステリアのギルドマスターだよ」

「ギルマスってルークの血を飲んで赤ん坊になった?」

「そうそう」

「なるほど、あんな感じだった……か」

「ルークの事以外興味ないのね」

「なんか言った?」

「別に~!」


 聞き捨てならない言葉が聞こえたけど、今は見逃そう。

 それよりギルマスがわざわざ話しかけてきたのには訳があるはず。

 手を貸してやるってことはバレンタインの街へ行けるのかな。


 それなら……。

 

「どうすればいいの?」

「うむ、おまえ たち は うま に のれる か?」


 中身はおばあちゃんなギルドマスターだけど、見た目が子供なのでなんだか話し方がたどたどしい。

 最初に会ったルークもこんな感じだった……ちょっと腹立つけど可愛いと思ってしまう。だけどそんな声で馬に乗れないのかと煽られるのはムカつくッ!!

 

「馬鹿にしないで、私は貴族よ?そんなの引きこもりでも貴族のルークでもできるわ」

「ならいい うま を かすから それに のりなさい」

「でも……」


 馬でバレンタインの街へは時間が掛かる。荷車を置いて馬に乗るのなら2日くらいで着くかもしれないけど、その途中が大変。

 馬車じゃないから食料を持っていけず、テントを張って野宿もできない。


 荷車無しで馬に乗っての移動は速さというメリットがあるけれど、残念ながら2日以上の移動には向かない。


「それなら うま を きょーか すればいーのよ!」

「馬を強化?そんなことができるの?」

「うま を もってきなさい。そして わたち に ちかづけて」


 ギルマスは受付嬢にそう命令すると馬を3頭引いてくる。

 ギルドの裏には街の馬車の待機場以外に馬が置いてあってそれを申請すれば使う事ができる。


 待機場に馬が無くても出すことはできる……けど、どうやって強化するの?

 

 その光景を私達は見守った。

 するとギルマスは待機場の屋根の下へ持ってきた3頭の馬に噛みついた。


「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」

 

 馬の目は赤く充血して、暴れ出す。

 ギルマスと受付嬢は馬から離れてその様子を見守る。

 少しすると大人しくなったんだけど馬の目は赤いままだ。


「強化完了よ」

「おぉ……」


 見た目はほとんど変わらないんだけど、少しだけ筋肉量が増したように見える。もしかして全体的な身体能力が上がった?

 ギルマスってこんなことまでできたのね……。


「ていうか、マスター!なんだか身体が大きくなっていませんか?」

「ん?確かに……私の重さに手が震えているな」


 受付嬢は急に成長したギルマスを腕をプルプル振るわせながら抱きかかえていた。

 下ろしていいぞ。と言われてゆっくりと地面に足を付けさせる。が成長したと言ってもそこまで大きくない。


 2~3歳くらいの白い肌に赤い瞳が神秘的な女児は自分の身体を見て驚いていた。


「これは凄い……血を渡したら逆に老化するみたいね」

「試したこと無かったの?」

「ええ、これは血を分け与えるもので受け取ったら最後……そのものは吸血鬼と化す」

「え……じゃあその馬は?」

「吸血鬼……ヴァンパイアホースと言った所か」

「ルエリアの最北端に居る狂暴な魔物じゃない……」


 ルエリアでは端の方のホワイトの街のさらに奥に居ると聞いたことがある。

 見るのは初めてだけど狂暴で追われたら最後逃げる事は不可能と言われているくらいやばい魔物。


「貴女が作ってたの?」

「違うわよ!!それは大昔に生きていた真祖の吸血鬼が残した奴じゃないかな?私だって吸血鬼になったの最近だし」

「なるほど……真祖の吸血鬼の血じゃないからそこまで速くない?」

「でしょうね。でもエステリアからバレンタインまでの距離を移動するなら十分でしょ」

「これに乗ればバレンタインの街へ着くのね?じゃあさっそく……」

「待ちなさい!」


 馬に乗ろうとした時、ギルマスが私達の前に割って入ってきて手を広げる。


「ヴァンパイアホースは夜しか活動できないからもう少し待って」

「はぁ!?そんなの間に合わないじゃない!!」

「ヴァンパイアホースを甘く見ないで夜の移動なら2時間程度で着くわ」

「早すぎるでよ!?そんなに?」

「……真祖の血を貰った馬なら……」

「……」

「初めて血を分けたんだから仕方ないでしょ!!」


 それじゃあ2時間ていうのは適当か。

 でも細かい数字をわざわざ口にしたのには意味があるはず、もしかしたら本当にそれくらいで着くかもしれない。


 それに物凄く速いのなら普通の馬で2日掛かる距離を移動しているルーク達に追いつくのは簡単かもね。


「まあ向こうも馬を強化してなければいいんだけどね」

「出来るのそんなの?」

「さっきの馬車のオーナーが言っていたでしょ?サジタリオン様って、あの人は保守派の魔導騎士(エーテルナイト)、でもトップクラスだから」

「保守派とかあるのね」

「ええ、でもあなた達が気にするような事じゃない。こういうのは大人の私達に任せなさい」

「……」


 何のことを言っているのかさっぱりだけど、1つ言えるのは子供の見た目の人にそう諭されて不思議な気持ちということ。

 見た目は完全に幼児そのモノ、大人と言われても説得力に欠けるけど……まあ面倒ごとを処理してくれるならいいわ!


 私は少しでもルークと旅がしたいもの。

 その邪魔をしないのならいい。


「夜になってから向かえ!そして必ずルークを救出せよ」

「ここまで協力するのって理由がありますよね?」


 ユウリは確信を持っているみたい。

 ギルマスへ問うその瞳に迷いを感じない。


「魔王教団がアーミアに手を貸したのはルークを狙っているからだと思うわ」

「はぁぁぁぁ!?」

「落ち着けフーリア!日が落ちるまで時間がある……それまでは待て」

「うぐ……」

「あのルミナと言う魔物の狐……特別な力を持っているからそれを狙っていると思われる」

「なんで知ってんのよ」

「なんでって私はルークの記憶を……あれ?」

「どうしたの?」

「さっきまで覚えていたはずなんだけど……忘れちゃった……?」

「何それ」

「馬に血を分けたからかもね」


 本当に扱いが難しい身体ね……。

 それから私達は夜になるのを待ってルークを追う事にした。


 待ってなさいルーク必ず助けるから!!!!!!


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