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第110話 絶望と希望


 屋敷の中も街と同様で静かだった。

 荒々しい戦火の跡が建物から庭まで……激戦があったことが見て分かる。

 建物の中が静かと言う事は当然、人も全然居ないし建物の中には使用人達の亡骸で満たされていた。


 一面血の海と所々に氷の魔法を使った後が残っていた。

 

「……こんなの人がする事じゃない!!」

「サジタリオン様……」

「あ、あぁ……ごめんねサツキくん。感情的になるのは後、まだ屋敷を最後まで見回っていないんだ。もしかしたら生きている人がいるかもしれない!」

「はい!探しましょう!!」


 ……魔導騎士(エーテルナイト)ってもしかしていい人……?

 

 エキナとショナの話を聞いたからとてつもなく悪いイメージがあったんだけど、その印象が変わるくらい良い人達だ。

 先ほど怪我をしていた女性も安全な所へ移動させて食べ物も恵んでいた。

 そんな悪い側面と良い側面を知っているからこそ、この3人がどんな意志をもってこの戦いを終わらせようとしているのか気になる。

 

「あ、あの……少し良いですか?」

「なんだい?疲れたのなら休んでても……」

「いえ!そうじゃなくて……どうして魔導騎士(エーテルナイト)……様なのに助けてくれるのかなと……」

「僕達には力がある。魔法と剣を両方扱えるこの力は神そのものの力というよりは神様から賜った力だと考えている」

魔導騎士(エーテルナイト)……様は神様と教えられたのですが……」

「……いや、僕達は人間だよ?君のように魔導士の家系のはずなのに剣士が生まれてくるようにたまたま僕達は魔導騎士(エーテルナイト)だった……それだけさ」

「まさか力があるから助けてくれるんですか?」

「それもあるんだけどね。君の姉……アーミアさんが魔王教団と繋がっていると聞いてね」

「魔王教団!?」


 やっぱりまたアレが関わっていたのね。

 リゼルが使っていた薬が原因……?新しい人格を手に入れる事で魔導騎士(エーテルナイト)と同じ力を発揮できる。

 しかしその代償として新たな人格が身体に宿ってしまう。


 それに乗っ取られたと考えるのが妥当か?


「君もエステリア学校の生徒なら知ってると思うけど、校長先生が暗殺されたよね」

「あ……ありましたね……」

「うん、その校長先生は僕の祖父なんだ」

「え!?」

「だから魔王教団と関わりがあると言うアーミアさんに話を聞きたかった。……あ!もちろんバレンタイン領の人達を助けることも入ってるからね!」

「……はい」


 殺された校長先生の孫でアーミアが魔王教団と繋がっている事を知っていたから助けに来てくれたわけか、予想以上に魔王教団という組織がこのルエリアへ侵食してきているのが分かる。

 ちゃんと理由もなく助けると言うのは素晴らしい精神だけど、生憎長く生きているせいでそんな打算も無い考えを信用できなくなっている。

 だからこそ理由があったことに安堵してサジタリオン達を信じられるようになった。


 屋敷の中をくまなく探して生き残りが居ないか探索しているけど、誰も居ない。

 ここにはあの義母とルーンも居たはず、アーミアはまさかその2人も襲ったというの?


 しかし2人の亡骸は今のところ発見できていない……後、調べていない所は……。


「私の部屋……」

「ここは君の部屋なの?」

「……そうですね」

「なるほど……本当にアーミアという人から恨まれているみたいだね」

「……本当に何もしていないんですがね……」

「理不尽な考えを持つ人は多い。自分の納得のいかない結果から目を逸らして誰かのせいにする」


 私が罪悪感を感じている事を察してわざわざこんなことを言ってくれた……?本当にいい人だ。

 さすがに爆発した跡みたいに何もなくなっている私の部屋に誰かいるとは思えない。部屋の中へ入ると天井は無くなっていて太陽が沈み紅の空が私達を迎え入れる。


「誰かー!居ますかー!」


 望み薄だけど叫んで聞いてみる……何も返ってこないだろうと諦めかけていたその時。


「……ク……様」

「この声は!?」


 聞き覚えのある声が聞こえて私はその声の主を探す。

 辺りは瓦礫に覆われていて視界の範囲には誰も見えない。ということは瓦礫の中の可能性が高い。

 私は声の聞こえる下を重点的に掘り起こす。瓦礫を退けて少しするとそこから人が出てくる。


「アナ!!」


 無我夢中で瓦礫を退けてアナの身体を瓦礫の中から掘り起こし、ついでに治癒の魔法も掛ける。

 息は掠れていて弱っているけど……ちゃんと息はある――けどアナの身体を掘り起こした瞬間、私はその光景に絶望した。

 

 アナは右目が潰れていて、左腕を失っていた。


 出血多量で死んでいてもおかしくない……だけど、傷口を見てみると氷の魔法か何かで止血されていた。


「アナ……」

「ルークお嬢様……!助けていただいてありがとうございます……」

「ううん、ごめんなさい。もっと早く来られれば……」

「泣かないでください……私は生きていますから……」

「でも怪我が……」

「あの戦火の中、生きていられただけで幸運です」


 アナはそう言うけど、こんな目に合わしたアーミアを私は許さない。

 怪我をしたアナを一旦、街へ持っていき、先ほど助けた女性と同じ安全な場所へ移動する。

 

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