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第106話 魔導騎士団


 借りていた宿は既に解約済みという事で入ることができなかった。

 せめてアナがどこへ行ったのか聞いたんだけど、それも知らないみたい。ただ、その時の様子を受付の人は語ってくれる。


「あの時のメイドさんは慌てている様子で相当怒っていましたね」

「何か言っていましたか?」

「ええ、ここではあまり言えないような少々汚い事を言っていました」

「な、なるほど……」


 私が勝手に海外へ行ってしまった事で激昂、宿を無理やり解約させてアナをバレンタインの街へ戻した。

 そう考えるのが自然か……!!

 

 どうやら海外へ行ったのは間違えだったのかもしれない……いや仕送りの量は少ないし、ギルドの依頼を全然受けられない状態だったからあのままだと何も食べる事ができずに餓死していた。

 結局、ハーベストへ行って依頼をこなすことは必要だったはず。

 

 やっぱりアナは連れて行くべきだった。

 とりあえず宿を出てギルドへ向かう。久しぶりの街並みを堪能する暇はない。

 駆け足で急いでいると行き交う街の人々の声が耳に入る。


「聞いたか?バレンタインの街でやばい事が起きてるらしいぜ?」

「バレンタインってルエリアでも最高の魔導士が居る所だろ?何があっても大丈夫だろ」

「それが謀反を起こしたのはその娘のアーミア=バレンタインらしい」

「バレンタインが裏切ったってことか!?」

「いや、これは噂なんだが……そのアーミアお嬢様が街を1人の力で半壊させたらしい。領主様は戦ったが負けたってさ」

「マジか……さすが最強の血筋か」


 あの義姉に私と同じ血は流れていない。魔法だって私の方が上だもん。

 その戦いの様子が気になるんだけど……聞く話は戦いの結果ばかり……。逆にここまで結果が同じだと噂だけではない……残念ながら事実と異なる可能性は低そう。

 この話は十中八九本当の事と考えていいだろう。


 アナがバレンタインの街へ戻っているのならその戦いに巻き込まれた可能性だってあるし……うぅ……最悪!!

 

 アナに何かあったら……。

 

 そう考えるだけで不安で押しつぶされそうになる。


 ギルドが見えてきた。皆にこの事を知らせて早くバレンタインの街へ………………。

 ギルドを前にして私は一度立ち止まった……悪い考えが脳裏を過ってしまった。

 皆で街へ行く……その事への不安。

 

 それでいいのかな――。


 多分私がバレンタインの街へ行くと言ったらお人好しな仲間達は付いてくるだろう。

 そうなると危険な戦場へ3人を行かせることになるんじゃ……。

 これはバレンタインである私の問題、それに3人はアナとはそんなに面識があるわけじゃない。

 

 3人がアナを助ける義理はない。


 私はギルドの扉に手を掛けず、そのまま街の外へ向かう。

 ジャスミンの街からアルストロメリアの街まで移動した時の事を思い出して、身体を強化する。


 距離はルエリア王国とジャスミンの街と同じ位ある。とても走っていくには間に合わない!!だからもうこれしか方法は無い……っ!。


「ルミナ……力を貸して」

「くぅうん……」

「どうしたの……ルミナ!!」


 気づいたら私はルミナに怒鳴っていた。

 この子こそ何も関係のない話なのに……焦りが私の心をかき乱している。そのせいで関係のないルミナを傷つけてしまった。

 ルミナは怯えた様子で私の腕の中で丸まっていた。


「あ……ごめんルミ……ん?」


 なんだろうルミナの見た目に少し違和感がある……?

 ルミナの事を観察してその違和感を探ろうとしていた時、馬車の待機場から声がする。


「だから、我々に馬を貸してください」

「いやいやその前にお前さん達は一体誰だ!!」


 揉め事……?だけど今は関係ない。

 

 ルミナにはちゃんと謝罪はする……だけど力を借りなきゃいけないからどうにかして説得しないと!!


 だけどルミナは何故か頑なに私に力を貸してくれない……どうすればいいの!!

 

 そんなことを考えているとまた待機場から声が聞こえる。

 

「我々は魔導騎士団(エーテルきしだん)だ」

「という事はまさか魔導騎士(エーテルナイト)様!?ど、どうしてこんな所に……」

「事情は後で、お金はいくらでも出しますから、馬を私達に譲ってください」

魔導騎士(エーテルナイト)様の頼みでしたら……」

「安心してくれ、馬を無事に返す努力はする。無理だった場合は馬を10頭は買えるくらいのお金を渡そう」

「なんと!?」


 魔導騎士(エーテルナイト)が何やら騒ぎを起こしているみたいだけど……話を聞く限りそこまで酷い事をしていない。

 というか馬車のオーナーに話しかけている長身で茶色い髪の青年は言葉遣いも良くて身だしなみもきっちりしている。


 表情も柔らかく、親しみやすさすら感じてしまう程で見るからにいい人オーラを出している。

 そしてその両脇には水色の短髪の少年と黒の短髪の少年が立っている。

 

 どちらも私達と同じ位の歳に見える。


 馬車のオーナーが酷い目に合わされないのなら気にする必要はない。実際、真ん中に立っている青年は大金をオーナーへ渡している。

 嘘ではないみたいだし、それよりも早く――。


「あ、あの……魔導騎士(エーテルナイト)様……これからどちらへ向かわれるのですか?良ければそこまで乗せていきますよ?」

「いや、馬だけでいいそっちの方が早いからな」

「それじゃあ馬は……」

「3頭でいい。ただし返せるかどうかは分からない」

「それはまあ……お金を頂いたので……しかしどちらへ?」

「今からバレンタインの街で起こっている戦場を止めに行く」

「なっ……!?無茶ですよ!大体馬単体でも2日は……」

「私なら強化出来ますから半日も経たずに着くでしょう」

「えぇ……!?」


 半日で着く……!?

 

 馬を強化して乗るなんて発想は無かった。身体強化なんて自分や仲間に使うモノという認識しかなかったからね……。

 じゃあ私も同じようにやれば……だけど馬を買うお金なんてない。ルミナは縮こまって力を貸してくれるか分からない……。


 くっ……仕方ないここはルーク=バレンタインとしてできる最終手段を使う!!


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